【日産 リーフ インタビュー】EVテレマ開発、必要なのはユーザー目線の“実感”

エコカー EV
カーウイングス事業企画主担 小泉雄一氏
カーウイングス事業企画主担 小泉雄一氏 全 18 枚 拡大写真

日産自動車の新世代EV『リーフ』には、カーナビを利用したテレマティクスサービス「カーウイングス」のEV版が装備される。充電スタンドの位置情報や空き情報の取得、遠隔操作による車載インバーターエアコン起動などの機能が追加され、将来はエコランの電力消費率コンテストなどもオンラインでできるようになるという。開発を手がけたカーウイングス事業企画主坦の小泉雄一氏に話を聞いた。

--- 日産はリーフをはじめEV戦略に力を入れています。そのなかで、「日産のEVはテレマティクスが標準装備される」という言葉が印象的でした。

小泉:クルマは単独で存在するものではなく、クルマを利用するユーザーや道路インフラ、さらには社会全体と密接に関わり合う製品です。EV時代になると、それらの関係がエンジン車と大きく変わっていく可能性が高い。テレマティクスの根幹はまさにコミュニケーションですから、その大きな変化にフィットしたものへと進化していくべきだと考えています。

--- EVはバッテリーに蓄えた電力で走り、走行時の排出ガスゼロという特徴がありますが、移動手段であるという機能の部分は従来のクルマと同じです。それでも大きな変化が起きるのでしょうか。

小泉:電化されることによる変化は大きいと思いますよ。まずは排ガスがゼロであることによって、人間の生活に深く入り込んでもよくなること。必要とあらば、屋内まで入ってもいい。これまでクルマは、排ガスが出るため屋外に置いておかなければならないものでした。それに対してEVは、人とクルマの距離をどこまでも詰めることができるんですね。

--- 一方で、遠隔操作の機能も持たせていますね。

小泉:はい。クルマのエネルギー制御のほぼすべてが電化されたことにより、クルマと人が離れていても、通信技術によって両者の関係が保たれるという特性もあります。クルマが目の前になくともクルマの起動や車内装備の操作を行うことができますし、バッテリーの充電状況をはじめ車両情報の取得も簡単です。

このようなEVの特性を最大限生かすには、テレマティクスもそれに合わせて進化させる必要があるというのは自明の理でしょう。そこでわれわれは手始めに、ドライブに出かける前にあらかじめエアコンをかけることができる機能を実装しました。

--- あらかじめエンジンをかけ、エアコンで車内温度を調節するという技術はエンジン車でも時折見かけますが。

小泉:実はガソリン車とEVではドライブ前に空調をかける自由度が大きく違うんです。EVはエンジン車と異なり、ガレージ内でもどこでもエアコンをかけられます。また、充電プラグが接続されていれば、外部電源を使って空調をきかせることができます。エンジン車がアイドリングでエアコンのコンプレッサーを回すよりはるかに効率が高いことは言うまでもありません。

これまでのクルマは、我慢して乗るという要素が多かった。真夏など、サウナのように熱気のこもった車内に乗り込んで大慌てで窓を開けたりすることがよくあるでしょう。それを少しでも防ごうと、サンシェードをつけたり。電化されたEVはそういうストレスを容易に減らすことができるのです。

--- なるほど。エアコン以外でEVならではという機能は。

小泉:現時点ではエアコンのリモートスタートとEVの充電スポットの動的表示だけですが、これからも旧来のクルマの常識を打ち破るような、EVならではという機能をどんどん考案していきたいですね。私はカーウイングスの企画に10年以上かかわってきていますが、EV用テレマティクス作りで強く感じるのは、クルマ屋の発想でサービスを作ってはダメだなということです。本当の意味でのユーザー目線が必要なんですよ。

本来ならば、EVを日常の足として使いながらEVテレマティクスの企画を進めたいところですが、残念ながらまだクルマがなかった。そこで私自身、アメリカのLA4モード燃費で航続距離160km(日本のJC08モードでは200km前後となる見込み)というEVの足の短さは実際にはどう感じるんだろうと、普通の車に16リットルのガソリンしか入れずにカーライフを送ってみたりしました。すると、最初はかなりの不安を覚えるんですが、慣れてくるとだんだん「理想のカーライフはEVと軽自動車かな!?」などと思うようになりました。

そうした実感を持つことが、ユーザーの皆様に喜んでもらえるサービスの着想を得るのに不可欠だと思います。ドライブ情報ばかりでなく、総消費電力、残量の正確な表示や、ユーザー同士でエコを競い合う電費ランキングなども面白いと思っているところです。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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