街頭演説で「投票用紙には××と候補者名をお書き下さい」と訴える声を聞いたことはないだろうか。衆議院選挙では「政党名を書いて」というのに、なぜ参議院選挙では、候補者名を訴えるのだろうか。
参院選は「投票2票制」で、1人の有権者が候補者2人に投票することができる。各都道府県の選挙区から立候補した候補者を選ぶ「選挙区」選挙と、政党をバックに立候補した候補者を選ぶ「全国比例」選挙が、同時に実施されているわけだ。
投票所で最初に渡される用紙には「選挙区」の候補者を書く。投票用紙には候補者名を書き、得票数の多い候補者が当選する。こちらは単純でわかりやすい。
次の「全国比例」では投票用紙に、有権者は政党名、候補者名のどちらを書いてもいい。しかし、当選するのは政党ではなく、あくまで立候補者なので、その決定までが複雑なのだ。
集計では最初に、政党別に票をまとめる。候補者名で書かれたものは候補者が所属する政党名と見なして合算する。次に、各政党の総得票数に応じて、当選者数を政党に比例配分する。
最後に、その当選者数に応じて、政党内で得票数の多い候補者から順に当選者を決める。
だから、有権者にとっては、◎◎党の××氏でも××氏が所属する◎◎党でも同じつもりで投票していても、候補者は候補者××と書いて投票してもらわないと、何のために選挙運動をしているかわらからない状態になる。
しかし、それは有権者も同様だ。同じ政党でも各候補者には立場の違いがある。政党名で投票はできても、結局は候補者名を書かなければ、有権者の声は国政には届かない。