暑い夏もそろそろ終わり、行楽には最適なシーズンが到来する。酷暑のお盆では遠出を見送り、秋の連休に狙いを定めている人もいるのではないだろうか。高速道路の値下げや無料化で、断然遠出のドライブは計画しやすくなった。でも、いざプランを実行する前に済ませておきたいのが愛車の点検。特に注意すべきなのはタイヤだ。
タイヤのトラブル、高速道路は一般道路の3倍
「JAF安全・安心支援活動」(2009年調べ)によると、応急処置または修理が必要だった箇所で、最も多かったのは、タイヤの不具合(空気圧不足・偏摩耗・ひび割れ)だった。しかも高速道路のタイヤトラブルは一般道路の3倍という。
二次事故の危険性もはらんでいるだけに、タイヤのチェックはおろそかにできない。ただでさえお盆・夏休みのドライブで、タイヤの「賞味期限」は縮まりがち。せっかくの行楽が台無しにならないよう、まずは点検だ。
スリップサインが出ていたら言うまでもなく即交換だが、偏摩耗やひび割れ、長期間(5年以上)の使用も要注意だ。「まだ、なんとかイケそう……」と思う微妙な状態でも、いっそのこと交換した方がいい。そもそもタイヤの安全性能は、基本的に溝が浅くなればなるほど低くなり、その分、本来の性能が発揮できなくなるからだ。
タイヤは年々進化している。新素材、パターンや構造の改良など、“黒いゴムの塊”には、さまざまな工夫と知恵が凝縮されている。「タイヤを交換したら乗り心地がよくなった」「静かになった」といった満足度の向上はよくあること。
行楽シーズンは、何かとたくさん人を乗せる機会が多く、その配慮も含めて、新品タイヤならより安全でより快適なドライブが楽しめるはずだ。
◆トレンドはエコ。低燃費タイヤ拡充へ
タイヤの付加価値は、かつてグリップ性能に重点が置かれていた。やがて静粛性能にも注力されるようになり、近年は「エコ」がトレンドになっている。石油外天然資源比率を高めたり、耐摩耗性を高めたり、中でも履くだけで燃費が良くなる「低燃費タイヤ」は、エコタイヤの代表格だ。
低燃費タイヤは、転がり抵抗を減らして燃費向上を狙うというものだが、グリップ性能や乗り心地と相反するため、かつては、そのあたりの基本性能を確保するのが難しかった。しかし最近は各メーカーの技術競争によって、グリップ性能や乗り心地を十分なレベルにまで引き上げたものが続々登場するまでに。ユーザーの環境意識の高まりを受けて人気商品になりつつある。
◆客観的な格付け、低燃費タイヤ人気を後押し
低燃費タイヤの基準はこれまであいまいだったが、今年1月より「ラベリング制度」が始まったことで明確になったことも、低燃費タイヤの人気を押し上げた要因だろう。
ラベリング制度は、タイヤ業界の自主基準で、転がり抵抗性能(低燃費性)とウェットグリップ性能(安全性)をレベルごとに等級付けしてラベル化したもの。ユーザーに分かりやすく情報提供することで、低燃費タイヤの普及促進を図り、業界全体で二酸化炭素削減に貢献するのが狙いだ。
留意したいのは、ラベリング制度の対象になっていなくても、燃費の向上が期待できるブランドがあること。低燃費タイヤのノウハウは、従来のタイヤ(ハイグレードタイヤ、ミニバン専用タイヤなど)にも広がっており、また、タイヤーメーカーによってはラベリング制度を実施していないだけ、という背景があるからだ。
◆カー用品やタイヤショップでも積極的に売り場を展開
ここ2年ほどで各メーカーの製品が一気に充実してきたことから、タイヤ専門店やカー用品店の売り場では、かつてのグリップ重視のスポーティタイヤを中心とした品揃えから、エコタイヤ製品が多くの面積を占めるほどになっている。
例えばタイヤ&ホイール専門店のフジ・コーポレーションでは、各メーカーの売り場ごとにエコタイヤ専用スペースを設けて製品の特徴について詳しく説明していたり、同サイズのタイヤを複数銘柄並べて持ち比べ・触り比べができるようなコーナーも設けている。
実際に手に取ってみると違うのはトレッドやサイドウォールのデザインだけでなく、ゴムの硬さや重さも大きく異なっていることに気づくはずだ。ブランドやカタログやスペックだけで選ぶのではなく、自分のクルマにはどのようなエコタイヤが最適なのかを店舗スタッフと相談して決めることも大切だ。