三菱自動車は3日、『パジェロ』の3.2リットルクリーンディーゼルの排出ガスレベルと出力特性を向上させた2011年モデルを発表した。新型は最新の排ガス規制であるポスト新長期規制をクリアしており、クリーンディーゼル購入補助金を受けることができる。欧州ではユーロ5適合とされているが、スペック的には事実上ユーロ6レベルに達しているものとみられる。
4M41型3.2リットル直4ターボディーゼルは、国内の新長期排出ガス規制をクリアするエンジンとして08年10月にデビューしたものだが、さらに厳しいポスト新長期規制大幅な設計変更を受けた。
ディーゼルの排ガスの中で最も処理しにくいのは窒素酸化物(NOx)。EV・パワートレイン要素研究部の竹村純部長は「エンジンと後処理装置の両方で細かい改良を積み重ねることで規制をクリアした」と開発過程を振り返る。
改良点は多い。まずは圧縮比を17:1から16:1に落としたこと。エンジンにとって理論上最も効率が良い圧縮膨張比は14:1前後。「ディーゼルの場合、15:1程度が最適と考えている」(竹村氏)とのことだが、改良型4M41エンジンはそれに一歩近づいた格好だ。グローバルの同クラスエンジンと比較しても、メルセデス・ベンツの新鋭3リットルV6ターボディーゼルの15.5:1に次ぐレベルだ。
さらに燃焼室の形状見直し、デンソー製コモンレール燃料噴射システムのスペック向上、燃焼制御やEGR制御(排気ガスの一部を燃焼室に還流させて酸素量を減らし、燃焼時のNOxの発生を抑制する)の高精度化など、多数の改良が加えられている。
後処理を受け持つ排気系統側にも大きな改良が加えられている。酸化触媒・DPF+NOxトラップ触媒という排ガス浄化の方式自体は旧型と同じだが、NOxトラップ触媒の性能向上が図られ、さらにNOxトラップ炭化水素(HC。光化学スモッグなどを引き起こす)の捕集機能を持つ酸化触媒を排ガス系統の最後段に追加がされた。
エンジンからのNOx排出の削減と後処理装置の性能向上により、ポスト新長期規制をクリアするクリーン性能を実現させたのである。3リットル級以上のディーゼルについては尿素SCRがユーロ6対応技術のメインストリームといわれる中、NOxトラップ方式で規制をクリアしたこと自体、かなり珍しいケースと言える。