この秋カーナビ業界のトピックとしては、富士通テンがついにPNDの『イクリプスLite EP001』をリリースしたことに注目が集まったが、その「Liteシリーズ」のもう一角を占めるのが、2DIN-AVNの『イクリプス AVN110M』だ。
◆大ヒットモデルの後継機
AVN110Mは、2008年に発売されAV一体型ナビゲーションとは異例とも言える25万台の大ヒットを記録した「AVN Lite」シリーズとしては初のフルチェンジモデルとなる。なんと言っても取り付け費込み10万円前後という強力な価格競争力で、初心者ユーザーを中心に取り込んだことが大きい。
AVN110Mでは、先代モデル(AVN119M、一部マイナーチェンジを施してAVN339Mとしてキャリーオーバー)の厳選された機能と分かりやすいインターフェース、そしてリーズナブルな価格という基本コンセプトはそのままに、ハードウェア/ソフトウェア両面でブラッシュアップして、ナビとしての使い勝手をさらに高めている。なおラインナップとして、バックカメラをセットした『AVN110MBC』も同時発売されている。
◆高精細化とLED採用で明るくクッキリした描写
では、従来機より変更された部分を中心に紹介していこう。
まず、一目で分かるのがモニター画面がEGAからWQVGAとなって高精細化されたこと。さらに、デジタルTFTとLEDバックライト採用により、従来機よりもくっきりと鮮やかな画面になった。
地図データはゼンリンからインクリメントPとなり、SDHCカードに収録されるデータサイズは4GBから8GBへと大容量化している。これに伴って、方面案内看板のイラストも表示されるようになった。
従来機では最詳細スケールが50mだったが、AVN110Mでは10mとなった。50m以下のスケールでは一方通行表示もおこなう。他にも3D表示への対応やスマートIC考慮探索など、ナビ機能の進化は数多い。25m以下の詳細市街図は有償となり、ダウンロードによる提供になる。市街図の便利さは1度使うとそのありがたみがわかるもの。有償とはいっても4200円なので、購入後にはぜひ追加したいところだ。
◆ナビ機能を中心にブラッシュアップ
さらにAVN110Mでは、複数目的地設定に対応したこと。従来モデルは設定できる目的地は1か所のみだった。富士通テンの関係者によると「初心者は経由地を含めた複数の目的地を設定しない」というリサーチ結果に基づくものだったというが、初心者はともかく、ナビを使い慣れたユーザーからは経由地設定への対応は要望が多かったという。
そこでAVN110Mでは、最終目的地を含めて5か所を1ルート上で設定できるようにした。友人宅に立ち寄りながら行く場合であるとか、複数の目的地がある場合には最初から設定できるため、何度も操作する必要はなくなった。
コンビニエンスストアやガソリンスタンドもアイコンで表示されるようになった。方面看板も表示されるようになったことで、交差点通過時に迷うこともない。また、町名を表示するフォントは大きく、視認性はとてもよい。
◆オーディオ/ビジュアル面も着実に進化
またFM-VICSは専用チューナーを搭載し、常時受信できるようになっている。これまでは通常のラジオチューナーと兼用していたため、AMやFMを聴取しているときにはVICS情報の受信ができなかった。一見すると地味な部分だが、こうしたところで地道にネガ潰しを行っている。
オーディオ面では簡易的なタイムアライメントやイコライザ設定も可能になっており、別売りのケーブルを購入すればUSBオーディオの再生にも対応した。もちろん、iPodも従来モデル通り再生可能だ。
地デジは従来モデル通りワンセグのみだが、今回のモデルで地図とワンセグの同時表示が可能になっている。
◆初心者はもちろん、代替ユーザーのニーズにも応える
先代のAVN Liteは「初心者でも使えるシンプルなナビ機能を特長としたモデル」だった。今回のAVN110Mもその延長線上にあることは間違いないが、初心者のみならずナビ代替ユーザーやPNDからの上級移行ニーズにも十分応える機能と性能を備えたモデルといえる。
自車位置精度の正確さインテリアとの一体感はAVNならではの長所でもある。PNDの進化ばかりに目がいきがちな昨今だが、低価格AVNの機能の充実ぶりにも注目したい。