【池原照雄の単眼複眼】6万台では足りない トヨタの軽自動車販売

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伊奈功一ダイハツ社長(左)と一丸陽一郎トヨタ副社長(右)
伊奈功一ダイハツ社長(左)と一丸陽一郎トヨタ副社長(右) 全 5 枚 拡大写真
◆顧客との接点づくりを重視

トヨタ自動車が2011年秋に、ダイハツ工業からのOEM(相手先ブランド生産)調達により、軽自動車販売に乗り出すことになった。年間の調達台数は、予定する3車種がそろう12年の段階で年6万台を上限にすることで、ダイハツと合意している。

だが、トヨタの国内販売網からするといかにも少なく、早晩、扱いディーラーは玉不足に直面することになろう。ダイハツとの間で、どう利害調整するか、トヨタにとっては悩ましい軽分野への進出となる。

国内の自動車メーカーで、これまで唯一、自社ブランドの軽をもたなかったトヨタを決断させたのは、系列ディーラーからの強い要請だった。軽は圧倒的な税負担の安さやメーカーによる商品開発努力などにより、国内新車販売の3分の1を占めるようになっている。

販売業界ではもっとも体質の強いトヨタディーラーとはいえ、クルマを初めて購入する層や、複数保有の顧客との接点を確保するには、軽の扱いが避けて通れない課題となっていた。トヨタの一丸陽一郎副社長も「お客様の要望に応え、関係を持ち続けていくため」と、顧客との接点づくりが参入の大きな狙いと説明した。


◆トヨタ販売網はダイハツの脅威になる

一方のダイハツにとって、「当社の生産台数が増え、(トヨタの扱いによって)軽の存在感は増す」(伊奈功一社長)メリットは認めるものの、「ダイハツディーラーにおいて、トヨタ販売網は脅威」(同)と見る。

伊奈社長は提携を発表した9月28日の午前に開いた販売店代表者との会合で、「供給上限6万台」や将来のトヨタ製ハイブリッド車(HV)の投入検討などを説明して、各社の理解を得た。

しかし、供給量の6万台という上限はダイハツの「生産量の1割をめどにした」(同社長)ものだが、180万台だった08年度の軽市場のうちの3%余りと少ない。全国のディーラーが扱うことになるトヨタのカローラ店とネッツ店だけで約2900店に及んでおり、ほかにも軽の販売比率が半数を超える15県ではトヨタ店、トヨペット店も扱うことになる。


◆日産は5モデルで年13万6000台を販売

1店当たりの“割り当て”は、月間1台強にとどまり、タマの確保が容易ならざる事態が想定される。02年にスズキおよび三菱自動車工業からのOEM調達で軽に参入した日産自動車は、扱い車種を5モデルに拡充したこともあって09年度の軽販売は13万6000台(シェア8%)と、日産ディーラーには欠かせない分野に成長した。

トヨタとダイハツは、トヨタディーラーがダイハツの軽を同社の系列店に紹介販売する協力を03年に始めており、年間3万台規模の実績がある。タマ不足は、この協力関係である程度は補えるものの、顧客の接点確保という狙いからすると、トヨタディーラーのメリットは薄い。

恐らく、トヨタのHVなど環境対応車のダイハツへの供給が始まる時点で「6万台」は再検討されることになろう。適正値を求めるのは難しいだろうが、ダイハツの不利益は親会社であるトヨタの不利益―という視点を今後も貫くことだ。少なくとも今回の合意内容は、その視点が根底にある。

《池原照雄》

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