攻める フィットHV と迎え撃つ プリウス…トヨタ・ホンダのHVボトムレンジを比較

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トヨタ プリウス と フィット ハイブリッド
トヨタ プリウス と フィット ハイブリッド 全 21 枚 拡大写真

コンパクトHVの先制パンチ…フィットHV

10月8日、ホンダ『フィット』のマイナーチェンジに合わせて、ハイブリッドモデルが追加された。ホンダ自身はフィットHVについて、あくまでも派生モデルのひとつという位置づけを崩さない。

しかし、フィットHVは販売台数ランキングで独走するトヨタ『プリウス』の牙城を突き崩してベストセラーに返り咲くための切り札であり、さらに言えば、2011年の投入が予想されている次期『ヴィッツ』ベースのHVモデルに対する先制パンチを繰り出し、コンパクトカーセグメントでのハイブリッドの主導権を握るという役も背負わされた戦略的モデルであることは明白だ。

フィットのHVシステム「IMA(Integrated Motor Asist)」は、1.3リットルi-VTECエンジンと組み合わされた薄型DCブラシレスモーターと、PCU(Power Control Unit)およびIMAバッテリーが一体化されたIPU(Integrated Power Unit)とを搭載している点で、『インサイト』との共通性があることは周知の通りだ。モーターやバッテリーもインサイトと同じものを積んでいる。

フィットHVのカタログ燃費はインサイトと同等の30km/リットル(10・15モード)だが、実燃費では空力的なハンデがあるとはいえ、重量においてはインサイトよりも60kg軽量(1130kg)なフィットHVのほうが有利な点も多いと考えられる。

フィットHV最大の特徴はそのパッケージングだろう。インサイトや『CR-Z』と同様、PCUをリアラゲッジルームの荷室下に配置する方式でIMAバッテリーの上にPCUを置く二重構造だが、排気ダクトの配置見直すことでスペース効率を稼ぎ、ベース車同等の荷室高を実現している。リアシートのダイブダウン機構も犠牲にしていない。このあたり、小型軽量なIMAだからこそできる芸当だ。

◆いまなお納車1か月待ち…プリウス

一方、ベストセラーHVであるプリウスはどうか。車格的には、フィットはBセグメント、プリウスはCセグメントに位置しており、価格もベースグレード比でフィットHVが159万円、プリウスは205万円と46万円もの差があるため、並列に比較することに無理があるかも知れない。

しかし、こと“ハイブリッド”という切り口で見る限り、プリウスは依然としてトヨタブランドHVのボトムレンジでもあり、省燃費に対する考えかたはフィットとは好対照で、この両者の比較はなかなか面白い。

プリウスは2代目とキープコンセプトではあるが、品質感とメカニズム両面においてさらに磨きをかけながら、戦略的な価格を実現したことで、ハイブリッド車としては空前のヒットをもたらした。エコカー補助金が切れたいまでも1か月待ちのバックオーダーを抱える人気ぶりは驚くばかりだ。

ホンダがHVの軽量化・シンプル化によって燃費向上を目指しているのに対して、現行プリウス(というよりもトヨタ)の方向性は、機構のさらなる高度化による最高燃費の実現だ。

メカニズムは、先代に搭載されたシリーズ・パラレル方式を採用する「THS(Toyota Hybrid System)II」の進化形。“II”という文字こそ引き継いでいるが、システム全体の90%以上は新開発で、モーターの回転をギヤで減速して力を増幅させるリダクション機構を追加している。エンジンは排気量を1.8リットルに拡大し、とくに高速巡航時の燃費を改善している。

さらに、コンプレッサーの消費動力を25%低減できる冷媒噴射装置(エジェクタ)付の電動カーエアコン搭載や空力面ではCd値0.25を達成するなど、効率化・低消費電力化を徹底。ボディ・排気量の増大やメカニズムの複雑化に伴い、ベースグレード比で50kgの重量増となったが、燃費は3.0km/リットルの向上となる38.5km/リットル(Lグレード)を実現した。

THS IIの高度かつ複雑な機構と制御を持つHVシステムや、品質感の高まった内外装を見れば、205万円からという価格設定はコストパフォーマンスの面で圧倒的だ。また、パッケージング面で見ればサイズを考えればフィットHVの健闘ぶりが光るものの、荷室の奥行きや後部座席の居住性という点で絶対的なサイズに余裕があるプリウスがやはり有利。

2010年末から2011年にかけて、フィットとプリウスとの販売台数争いは一層熾烈になるだろう。2010年代の初めの年に、ベストセラーカー同士の“ガチンコ対決”がハイブリッドという土俵でおこなわれるということは暗示的だ。2011年はPHVやEVも巻き込んだ次世代エコカー主導権争い端緒の年と記憶されることになるはずだ。

《北島友和》

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