【池原照雄の単眼複眼】急変はないマツダ-フォードの関係

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SKYACTIV-G(スカイアクティブジー)エンジン
SKYACTIV-G(スカイアクティブジー)エンジン 全 5 枚 拡大写真
◆現金が欲しいフォードの事情

米フォードモーターは、保有するマツダ株の大半を日本の金融機関などに売却する方針だ。両社の関係は希薄になり、マツダは新たな業界再編の渦中に入ると目されているが、生産や技術面での協力関係が急速に崩れることはない。ただ、マツダに時間的余裕はなく、新たな環境技術群である「SKYコンセプト」の成否に、生き残りがかかってくる。

フォードが現状では11%を保有するマツダ株を追加的に売却するのは、手元資金を積み増したいという同社の一方的な事情による。フォードは今年6月末で、自動車事業での手元資金に対する負債超過額が約50億ドル(4050億円)にのぼっている。7月にはこれを2011年末までに解消し、無借金状態とする財務リストラ策を公表した。

マツダとフォードは10月16日に保有株売却が報道されると、「戦略的提携関係に変化はなく、双方が利益を得られる分野で協力していく」との主旨のコメントを揃って発表した。そうした関係を担保するため、フォードは大半を売却した後も数%は保有する意向だ。


◆現時点の提携ご破算は双方が困る

フォードは08年に「ジャガー」と「ランドローバー」をインドのタタモーターズに売却し、09年には「ボルボ」(乗用車部門)を中国の吉利汽車へ売却することで合意した。マツダ株の売却はその延長線上で捉えられがちだが、シナジー効果が出せなかった、これらの欧州ブランドとマツダはまったく異なる存在だ。

フォードとマツダの資本提携は1979年に始まり、OEM(相手先ブランド生産)供給から米国、タイ、中国での合弁生産に発展、90年代以降は小型車分野でプラットフォーム(車台)を共通化するなど、密接な相互補完を築いてきた。

08年末にフォードが大部分のマツダ株を売却し、実質的な経営支配権を失った後、フォードはタイや中国で自前の生産体制確立に動き、マツダは環境技術でフォードとは距離を置いた戦略を立てるようになった。それでも、現時点での生産や技術協力をご破算にするのは双方にとって困る関係にある。


◆生き残りを賭ける「SKYコンセプト」

フォードが保有する全株を売却するなら話は別だが、わずかでも資本提携を継続するなら今の状況とさほど変わらないだろう。フォードの支配が終わった後、マツダの経営陣や技術者からは解放感と緊張感の両方が伝わってくるようになった。自由は獲得したが、強力な後ろ盾はもうないという思いだ。

生き残りへの大きな関門である環境技術では、来年以降、既存技術で燃費性能を高める「SKYコンセプト」のエンジンやミッションが登場してくる。11年前半にはガソリン車で30km/リットルの性能を実現したコンパクトカー(『デミオ』)を実用化する計画だ。

自前のハイブリッド車や電気自動車の開発では遅れているものの、SKYシリーズが成功すれば、まだ間に合う。要はフォードあるいは他の自動車メーカーに、「その技術が欲しい」と言わしめるようSKYシリーズを完成させ得るかである。

《池原照雄》

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