【Windows Embedded Automotive 7】インターネットパワーを車内に取り込む…マイクロソフト OEMエンベデッド本部 松岡正人

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Windows Embedded Automotive 7
Windows Embedded Automotive 7 全 7 枚 拡大写真

マイクロソフトは、新世代の車載情報端末の組込みOS「Windows Embedded Automotive 7」の提供開始を発表した。同製品は、開発者の負担軽減を実現し、採用したメーカーは製品の差別化分野に開発資源を集中できるようになるという。OEMエンベデッド本部の松岡正人シニアマーケティングマネージャーに製品の特徴などを聞いた。

---:Windows Embedded Automotive 7の開発背景を教えて下さい。

松岡:新製品は、日本のカーナビメーカー向けにナビゲーションやUI(ユーザー・インターフェース)機能を重視した「Windows Automotive」と、欧米自動車メーカー向けでメディア接続やハンズフリーなどの機能を重視した「Microsoft Auto」の2つの製品ラインを統合したものです。自動車系OSの開発コードネームは代々サーキットの名称をつけて来たのですが、今回はMotegi(もてぎ)でした。これは「ツインリンク」、つまり2つの技術を合わせるというところからの由来です。

---:日本の多機能カーナビ用として進化してきたのWindows Automotiveと、欧米のテレマティクスプラットフォームとして生まれたMicrosoft Autoが統合されるということですね。

松岡:日本ではカーナビが車載情報端末の中心として高機能化し、海外では外部機器やサービスと連携する際のハブとしての車載器の一機能としてナビゲーションサービスがあると位置づけられています。例えばMicrosoft Autoを採用しているフォードでは「Sync」というサービスの中でTwitter、Facebook、Pandra、、flickr、Bing、linkedinなどのアメリカでメジャーなWebサービスと連携しています。このように車載器の文化醸成の流れが日本と海外では違うのですが、次第に双方の要求がクロスしてきたのです。

---:車載用情報端末を差別化する要素として重要になるのは、どのような技術とみていますか。

松岡:ユーザーに製品の魅力を伝えるトリガーの役割を果たすUIは、差別化のポイントになります。UIのデザインや操作性の向上を重視する傾向は高まっています。それと同時に、自動車メーカーが注目しているのは外部端末と自動車の連携です。スマートフォンやiPodをはじめとする端末と自動車をどうつないでいくかということです。さらには、オンラインサービスとの接続の需要も出てきています。自動車向けのクラウドを利用したサービスもこれからはじまるでしょう。

---:Windows Embedded Automotive 7を採用したメーカーにはどのようなメリットがありますか。

松岡:製品の市場投入に期間を短縮できます。日本でもPND市場が急拡大しましたが、理由の一つに短期で開発できる製品ゆえにユーザーの需要を即座に吸収できているという部分があると思います。現在、インダッシュタイプのナビでは、PNDのような製品の開発スピードにはついていけていませんが、Windows Embedded Automotive 7を採用することでより速い開発サイクルを作り上げることが可能です。例えばデザイナーがUI設計ツールの「Expression Blend」で作成した画面遷移やアニメーションを「Visual Studio」と連携させることで開発者がアプリケーション制作し、Windows Embedded Automotive 7用の「Silver light」形式に出力できます。この画面遷移を変えて欲しいなど開発者側からデザイナーへのリクエストも逆の流れもシームレスです。しかも開発しながらSilver lightを用いてPCでプロトタイプが作成できるのです。デザイナーと開発者のやり取りが同じ基盤上で行き来できるため、開発期間の短縮が実現します。

開発工数の削減のほか、Windows Embedded Automotive 7は一般的なwindowsアプリやwebアプリの開発ツールで構成されているので既存の技術を持っていれば開発に携わることができ、人員を集めることも容易になります。OSの上にドライバーやミドルウェアを搭載した状態から開発がスタートすることになります。このことは、メーカーのリスクを低減することにもつながると考えています。

---:今回、OSのカーネル部分がWindows Embedded compact 7ベースに進化しています。ここのメリットは?

松岡:Windows AutomotiveはWindows CE5のカーネル、最新のMicrosoft AutoはWindows Embedded CE 6でした。主なメリットは利用出来るメモリ空間が32MBから4GBに飛躍的に拡大したり、マルチコアのCPUを利用できたり、よりリッチなハードウェアに対応した部分です。スマートフォンの進化が象徴的ですが、この3〜4年の間に同コストで利用出来るハードウェアのスペックが上がり、いまやPCと変わらぬパワーを持つ組み込み製品を作ることができるようになりました。車載器もチープなハードウェアをやり繰りする商品企画から存分なパワーを利用してどんなユーザー体験を与えるかを考えるような時代になりつつあります。

---:Windows Embedded Automotive 7によって、これまでのWindows Automotive、Microsoft Autoが置き換わるのでしょうか。

松岡:両既存商品の進化系という位置づけですが、既存のWindows Automotive、Microsoft Autoの提供も継続します。Windows 7の登場後もWindows XP SP3などアップデイトが繰り返されるイメージです。

---:スピーディな開発環境と高品位なUIの提供のほかに、Windows Embedded Automotive 7の採用によりカーナビが機能的に進化する部分はどこでしょうか。

松岡:PCがインターネットパワーによって価値を作り出しているように、車載器もカーナビアプリだけでなく、さまざまなインターネットパワーを利用して価値が拡大すると思います。Windows Embedded Automotive 7のインターネットに対する対応は、機器のドライバーやミドルウェアが用意されているなどPC環境と共通性があります。分かりやすい部分で言うと、Windows Automotiveに搭載されているPocket Internet Explorerブラウザーに対してWindows Embedded Compact 7に搭載されるInternet Explorerブラウザーは、最新のWebアプリにも対応するといったことも一例です。今後はPCとスマートフォン、そして車載器でOSレベルでの壁がなくなり、ハードウェアの性能も遜色なくなります。その結果、同じようなインターネットサービスをいつでもどこでも利用できるようになる車載器をこのWindows Embedded Automotive 7ベースで実現することができるのです。

《土屋篤司》

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