【池原照雄の単眼複眼】1歩前進‥‥トヨタの次世代電池開発 

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「全固体電池」のサンプル展示
「全固体電池」のサンプル展示 全 4 枚 拡大写真

「生技開発」を合わせ100人の陣容に

トヨタ自動車がリチウムイオン電池より格段に性能が高い次世代2次電池2タイプの研究開発状況を11月18日に初めて公開した。同社は、2タイプともまだ「1歩前進」という段階と評価する。21世紀型自動車の心臓部となる技術だけに、道のりは長く険しい。

トヨタは2008年6月に「電池研究部」を新設して次世代電池の研究開発に本格着手し、今年1月には「電池生技開発部」も発足させている。電池のコストや品質を決定づけるうえで「生産技術が重要となる」(内山田竹志副社長)からだ。

現在、両部合わせて約100人の陣容になったという。研究開発では東京大学および京都大学、さらに独立行政法人の物質・材料研究機構(NIMS)など社外の研究機関とも連携を密にしている。

今回、開発状況が示されたのは「全固体電池」と金属空気電池の1種である「リチウム空気電池」。出力およびエネルギーの密度を高め、自動車に搭載する際は、現状のリチウムイオン電池と同等の走行距離などを確保しても電池の容積は5分の1程度とするのを開発目標としている。

◆「全固体電池」で粒子抵抗の大幅低減に成功

全固体電池の発電の仕組みはリチウムイオン電池と同じで、現状の同電池で使われる電解液の代わりに固体の電解質を使い、正極、負極を含み、文字通り全てを固体とするものだ。これらの固体の粒子と粒子を接触させた状態でリチウムイオンを流し充放電する。

電解液を使わないため、液漏れによる発火などを防ぐことができるし、電池をコンパクトに作ることも可能となる。課題は固体電解質と正極材の粒子を接触させると化学反応を起こして粒子の抵抗が高まり、充放電に支障を来すことなどが指摘されている。

トヨタはNIMSとの共同研究により、正極粒子をセラミックスコーティングすることで、抵抗値を従来の100分の1に低減した。もっとも、それでもまだ電解液によるリチウムイオン電池に比べ、出力は3分の1程度という。

◆「リチウム空気電池」は充放電を確認

もう一方の金属空気電池は、負極の金属と空気中の酸素を反応させて充放電するもので、金属に亜鉛を用いた亜鉛空気電池は補聴器用に市販されている。ただし、1度だけ放電する1次電池であり、充電ができる2次電池は実用化されていない。

トヨタは負極にリチウムイオン金属を使ったタイプの研究を進めており、電解液の改良によって充放電を確認した。もっとも、こちらもようやく「2次電池としての研究方針が明確になった」(同社研究員)段階だという。

実用化で先行しそうな全固体電池についても、研究員は「10年スパンで取り組まなければならない」と、見ている。内燃機関に匹敵する性能をもつ自動車用電動システムの確立は、それだけの時間軸が必要ということだ。航続距離もコストもエンジン車と競合できるEV(電気自動車)の登場はずっと先になる。

《池原照雄》

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