「車のICT活用は“利便・快適”から“環境・エネルギー”へ」…トヨタ自動車 常務役員 友山茂樹

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オープニングキーノート スピーカー トヨタ自動車 常務役員 友山茂樹
オープニングキーノート スピーカー トヨタ自動車 常務役員 友山茂樹 全 18 枚 拡大写真

12月1日から3日まで、幕張メッセで国際自動車通信技術展(ATTT)が開催される。車とITをテーマに、次世代のモータリゼーションと新たなビジネスを創造を目指すATTTは、今回が第2回。前回は東京モーターショーと同時期に開催され、国内外の自動車業界・IT業界関係者から注目された。

このATTTにおいて最新の取り組みを積極的に披露しているのが、トヨタ自動車である。前回のATTTでは広汽トヨタで稼働中の「e-CRB / SLIM」を国内初公開。多くのメディアや来場者の目を惹きつけた。そして今回も、数多くの新発表・国内初展示があるという。

トヨタ自動車はATTTでどのような未来を見せるのか。通信・ITSジャーナリストでATTT企画委員長の神尾寿氏が、ATTTでオープニングキーノート スピーカーを務めるトヨタ自動車 常務役員の友山茂樹氏に聞く。

◆トヨタ「スマートセンター」をトータルで展示

神尾:昨年のATTTでトヨタは、自動車の流通販売や顧客との関係に革新をもたらす「e-CRB / SLIM」を大々的に発表・展示しました。今回のATTTでも、そういった大きな取り組みが発表・展示されるのでしょうか。

友山:ひとつは「スマートセンター」ですね。これはトヨタが進めるスマートグリッド戦略です。

神尾:スマートグリッドというと、これまで電力会社や通信会社が中心となって推進されていますが、それとスマートセンターはどのように異なるのでしょうか。

友山:従来のスマートグリッドは供給者側の視点だったのですが、我々のスマートセンターはユーザーの視点で、家や生活圏全体でのエネルギー効率をどのようにしてよくしていくか、を考えています。その上で、(PHV・EVなど)次世代環境車のユーザーが最大の恩恵を受けるためにはエネルギーの需給はどうあるべきか。そういう視点で進めています。

神尾:今回のスマートセンターではメーカーとしての"車作り"を超えて、トータルでの利用環境へのコミットが特長になっていますね。

友山:それは社会環境の変化もあるのですが、車に求められる価値や社会的ニーズが大きく変わってきています。そのような中で「我々は車の製造販売だけでいいのか」という考えがあります。これまで培ってきたテレマティクスや、トヨタホームのスマートハウス、そして車作りの部分ではプラグインハイブリッドカーなどを有機的につなげて、『コストミニマム』・『CO2ミニマム』の新しいサービスを作っていかなければなりません。スマートセンター構築の背景には、そのような狙いがあります。

神尾:スマートセンターではG-BOOKなど、これまでトヨタが手がけてきたITのサービスやインフラもフル活用されていますね。

友山:そうですね。我々は「ひと・車・家・社会」がつながる世界を考えていますが、そこではICTは必要不可欠なものです。ただ、これまでG-BOOKでやってきたテレマティクスの"つなげる目的"と、(スマートセンターで)これからやっていく"つなげる目的"は明らかに違ってきます。

神尾:といいますと?

友山:これまで車のICT活用の目的というのは、「安心・安全・利便」に重点が置かれていました。しかし、これからは(それらに加えて)「エネルギー・環境」が重要になり、そこで車向けのICTが活用されるようになっていきます。つながること自体は変わらないのですが、その目的が大きく変わってきているわけです。

神尾:今回のATTTでは、それが実際に見られるわけですね。

友山:ええ。しかも我々のスマートセンターは、コンセプト紹介ではなく、実際に六ヶ所村での実証実験使っていたものをそのまま持ち込みます。まだ開発中ではありますが、実機を用いて、トヨタのスマートセンター(スマートグリッド)の姿を見ていただけます。

◆トヨタの「スマートフォン戦略」に注目

神尾:スマートセンター以外に、トヨタの展示・発表での見どころはどのようなものでしょうか。

友山:その他のものとしては、まず「スマートフォン」があります。スマートフォンは最近注目度が高くなっていますが、このスマートフォンがカーライフをどのように変えていくのか。これについて、トヨタの新たな取り組みをお見せしたいと考えています。

神尾:スマートフォンはAppleのiPhoneをはじめ日本でも急速に普及しています。スマートフォンと車の連携は、注目したいテーマですね。

友山:当日は新たな発表も用意しながら、実際に「トヨタのスマートフォン連携・活用」を見て触っていただけるようにします。スマートフォン以外では、トヨタが開発した「駐車場緑化システム」も展示します。これの大きな特長は、太陽光パネルによる発電と、トヨタが開発中の駐車場緑化ベース、そして新開発の芝生などもあわせて、トータルでエコに貢献するというものです。

なぜ、我々がこういったものを開発・展示するかというと、これからのPHV・EV時代は、車の環境性能だけを高めればいいというわけではない。スマートセンターや駐車場緑化ベースなど、トータルでのエネルギー効率やCO2削減を考えなければならない。

神尾:なるほど。個々のプロダクトではなく、トータルのソリューションとして見ることに重要性があるわけですね。

◆トヨタが目指す新たなモータリゼーション

神尾:スマートセンター、スマートフォン連携、そして駐車場の先進化まで、今回の展示は「車」を軸にしながらも、かなり大きなカーライフの変化を指向したものと感じます。これからのカーライフや車社会とは、どのようなものになるのでしょうか。

友山:これからの車にとって大切なのは、「人や社会との親和」だと考えています。そして、これとあわせて重要になるのが、「モビリティとしての多様化」です。このふたつが重要になってくると考えています。

PHVやEVの本格化にともなって、今まさに車の世界は大きく変わろうとしています。ここではICTによる細かな制御やネットワーク化が重要になり、そこから新しいモータリゼーションが生まれるでしょう。

神尾:ATTTは車とITによる「新しいモータリゼーションを起こす場」として企画しています。そこで新たに発表されるトヨタの取り組みについて、注目したいと思います。

《神尾寿》

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