【ホンダ フィットHV 試乗】ハイブリッドに対する見方が変わる…川上完

試乗記 国産車
フィットHV
フィットHV 全 6 枚 拡大写真

今やホンダの一枚看板(?)となった感のある『フィット』に、ようやくハイブリッド仕様が登場した。例によって、既存のユニットを使い回しするという、ホンダ的な手法で生まれたモデルだ。つまり、初代の『インサイト』で初めて使われた、ホンダ独自のハイブリッド・システムであるホンダIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)を搭載している。

このIMAは、『シビックハイブリッド』から現行のインサイトへと受け継がれている。トヨタ『プリウス』のように、電気モーターが主でガソリン・エンジンを補助としているのではなく、主たるパワーはガソリン・エンジンとし、電気モーターはあくまで補助動力源としているのだ。したがって、電気モーターだけで走ることは事実上出来ない仕組みになっている。

まあ、実際に走らせる時には、そんな違いは大した問題ではない。プリウスが、電気モーターだけでの走行が可能なことをアピールするために、「早朝や深夜の帰宅もご近所の迷惑にならないほど静かに出来ます~」と謳っているのだが、余計な御世話というものだ。

で、フィットHVだが、これが走らせると文句無く楽しい。スタイリングやインテリアのデザインなどは基本的に従来型のフィットと変わらないから、その意味では新鮮さは感じられないのだが、スロットル・ペダルを踏み込んだ途端に、HV特有のスタートダッシュの良さに驚かされることになる。まさしく目からウロコである。

その強烈な加速が、エンジン音がほとんど高まらないで始まるから面白い。ただし、中・高速域ではエンジン音が格段にウルサクなる。特に床下からの騒音はかなりのものだ。遮音材が足りない感じだろうか。フィットの場合、もともとエンジン排気音の音質などは、ステンレス・スチール製の排気系特独特の薄っぺらな感じがあり、決してほめられたものではないのだが、そんなことが気にならない位に、とてもフィットとは思えない素晴らしいスタートダッシュを見せる。ウルサクはあるがこれだけでも、フィットHVの存在価値は有ろうというものである。

また、HV化したことで、室内スペースがほとんど犠牲になっていない点も褒められて良い点だ。最初からHVとしてデザインされた初代のインサイトやプリウスは別として、既存のモデルをHV化したモデルでは、HVでは不可欠となるバッテリーの搭載による室内スペースの減少は大きな問題だが、フィットHVの場合、後席下部など、従来のデッド・スペースにバッテリーを押し込んでいるために、室内スペースはほとんど削られていないのだ。これは完全な電気自動車(EV)では、さらに深刻な問題となるだろう。

ま、それはともかく、新しいフィット・ハイブリッド。これは一度乗って見ることをお勧めする。HVに対する見方が変わることは請け合いである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おススメ度:★★★★★

川上完|モータージャーナリスト
カメラマンを経て自動車評論を始める。特にメーカー・ヒストリーや個々のモデルについての歴史的な記事を得意とする。趣味のミニチュアカー収集は40年以上のキャリアを持つ。集めた台数は不明。5台のクルマと共に新潟県越後湯沢に暮らす。1946年生まれ。

《川上完》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. ホンダ『スーパーEV』世界初公開へ、小型EVで「運転の楽しさ」提案
  3. サブコンが再評価される理由と純正ECU時代の新常識~カスタムHOW TO~
  4. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  5. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  2. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  3. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  4. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  5. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
ランキングをもっと見る