【東京オートサロン11】動くモノへの好奇心や感動は、いつの時代も変わらない…トヨタ GRMN/G's担当 沖野和雄

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GRMNとG'sの企画・開発をとりまとめるスポーツ車両統括部グループ長 沖野和雄氏
GRMNとG'sの企画・開発をとりまとめるスポーツ車両統括部グループ長 沖野和雄氏 全 10 枚 拡大写真

世界最大級のカスタムカーの祭典、東京オートサロンに、トヨタ自動車は毎年、多彩なカスタムカーを出展しており、近年はスポーティな個性をより強く打ち出すようになってきた。

そのイメージを牽引するのが「GAZOO Racing tuned by MN(通称GRMN)」と「G Sports(通称G's)」。ワクワクするクルマづくりを目指す豊田章男社長肝いりのプロジェクトだ。

来年1月開催の東京オートサロン2011にも市販予定車を数多く出展するという。同ショー開催に先駆け、GRMNとG'sの企画・開発をとりまとめるスポーツ車両統括部グループ長、沖野和雄氏に、出展の狙い、カスタムの取り組みを聞いた。   

◆「走りの味」「クルマの楽しさ」を提供したい

──トヨタが東京オートサロンに参加する狙いは。

沖野:全国のクルマ好きが一堂に集まるイベントで、われわれトヨタもクルマが好きなんですよ、という思いを伝えたいからです。以前から「トヨタは面白みにかける」と指摘されていますが、われわれが手がけたカスタムカーを通して、そのようなイメージを返上したい。そしてGRMNとG'sを柱に、「走りの味」「クルマの楽しさ」を提供し、ファン層の底上げにつながればと考えています。   

──クルマ好きといっても、いろいろありますが。

沖野:そうですね、ドライブが好きな方もいれば、内外装を飾り立てるのが好きな方、輸入車が好きな方など、いろいろいます。世代ギャップもある。たとえば私は、いわゆるスーパーカー世代の40代なので、街中で高級スポーツカーに出会うと思わず見入ってしまうのですが、最近の若者は見向きすらしない。彼らが好むのは『ヴェルファイア』や『アルファード』のようなミニバンだったりします。いや、クルマ自体に興味を示さない方のほうが多いのかもしれません。   

──若者のクルマ離れに加え、スポーツカー市場が低迷している中、あえてレーシーなGRMNとG'sを展開する理由は。

沖野:私たちメーカーサイドとしては、魅力的な商品を出してこなかったという反省もあります。だからこそトヨタは、GRMNとG'sという2つのブランドを、これからじっくりと育てて、若者を呼び戻し、国内市場を盛り上げていく考えです。   

◆お客様目線でクルマへの興味・関心を喚起   

──豊田章男氏が社長に就任された事で、変化はありましたか。   

沖野:ええ、大々的に。東京オートサロンに関しては、豊田自身、プライベートで行くほど大好きということもあって、まずしっかり取り組みなさいと。そして会場の雰囲気をこわすことなく、ほかの出展者、来場者の方と同じ目線で一緒に盛り上げなさいと、檄を飛ばされました。モータースポーツの分野に関しては、地域に密着した“草の根”活動に、より力を入れるようになりました。観るだけではなく、気軽に参加できる機会を提供したり、応援し、モータースポーツって、実はこんなに垣根が低いんだよということを伝えていきたいですね。   

──トヨタのカスタムシリーズにはGRMNとG'sのほかに、モデリスタがありますが、それらの棲み分けは。   

沖野:G'sは一般道でも気持よく走れることを重視した、いわば間口の広いコンプリートカー。架装行程の一部インライン化などで生産コストを下げ、お求めやすい価格で提供します。GRMNは走りをもっと突き詰め、サーキット走行を視野に入れた本格派です。どちらも走りに軸足を置いているのに対し、モデリスタは走り専門ではないので、ラグジュアリーに仕上げたりと守備範囲の広さが特徴です。

◆チューンドカーにファッショナブルなイメージを   

──メーカーが取り組むカスタムやチューニングにおいて、何が必要とされているのでしょうか。   

沖野:安全性と信頼性の確保は当然として、GRMNとG'sは、走ったときの上質感を大切にしています。生産ライン上で溶接スポット箇所を補強するなどして、ボディ剛性を高めているのはそのためです。ただ、クルマの基本性能が上がると、もっといろんなことがやりたくなっちゃうんですよね(笑)。「走りの味」と「価格」のバランスを、どこで落とし込むか、という点が難しかったです。   

──第一印象を大きく左右するデザインに関して、GRMNとG'sの特徴は。   

沖野:走りのイメージを打ち出していますが、だからといって昔のような汗臭さは極力排除しています。パーツの後付け感がなく、スマートでクールといった感じ。特にG'sは、一部のマニアだけでなく、女性ユーザーにも、気軽に楽しんでもらえることを意識していますので、スポーツ系のクルマに乗ることがファッショナブルであることをアピールしていきたいですね。   

◆動くモノへの好奇心や感動はいつの時代も変わらない  

──エコカー人気の中、カスタムに対する消費者の興味が薄れつつある気もしますが、沖野さん自身はどうお考えでしょうか。   

沖野:かつてのように派手な盛り上がりこそないですが、新たなファン層は着実に増えています。プリウスが好例です。これまでカスタムにまったく興味を示さなかった方が、プリウスを買って、ふっと気づくんですよ。街中は自分と同じクルマばかりだって。すると、ちょっといじって差別化したくなる。これは知人の話なのですが、それまで一度もいじったことがないのに、プリウスで初めてホイールを変えて喜んでいるんです。たかがホイールと思う方もいるかもしれませんが、彼にとっては冒険だったと思います。エコカーが人気だからといって、カスタム需要が減るわけではないと思いますよ。   

──将来、カスタムはどのような方向に進むか、あるいは進めていきたいとお考えですか。   

沖野:どのような方向に進むか、ですか。う〜ん、難しいですね。それが分かっていたら苦労しませんよ(笑)。ただ、やるべきこととして、はっきり言えるのは、われわれが若者を引き入れて、運転の楽しさを教えてあげることです。若者のクルマ離れが叫ばれていますが、一方で小さな子どもは好きなんですよ、クルマが。ほら、男の子って、ミニカーでよく遊びますよね。動くモノへの好奇心や感動は、いつの時代も変わらないんですよ。なのに、年を重ねていくと、だんだんクルマから遠ざかってしまう。その原因は、われわれ大人にもあるんじゃないのかと思うんです。われわれがちゃんと子どもの頃からクルマへの興味喚起を図るように続けていけば、クルマ好きは増えると思いますよ。   

──出展車両の中で特に注目のクルマ、あるいは見どころを教えてください。   

沖野:出展車両の詳細はまだ言えませんが、前回のラインナップとはがらりと変わりますよ。その多くがコンセプトカー止まりではなく、ちゃんと市販化を見据えているので、期待してください。

《近藤ひでつぐ@DAYS》

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