日産の新型自動車運搬船…左舷に煙突がある事情

自動車 ビジネス 企業動向
省エネ型自動車運搬船「シティ・オブ・セントピーターズバーグ」
省エネ型自動車運搬船「シティ・オブ・セントピーターズバーグ」 全 7 枚 拡大写真
世界初の完全な半球形船首をもつ日産専用船の省エネ型自動車運搬船「シティ・オブ・セントピーターズバーグ」。その特徴的な船首に目がいきがちだが、船首の満載喫水線あたりや船尾側の煙突を見てみると、従来の自動車運搬船(PCC)とはやや異なる特徴が見られる。

船尾上方の操舵室(ブリッジ)から喫水線手前あたりまでは丸みをおびているが、喫水線部分は鋭くとがった形状へと変化する。

「半球形の船首とは対照的に、鋭くとがった『アイスナイフ』が設けられている。これは、スカンジナビア半島付近やバルト海やを運航するさいに海面に厚さ1mほど張る氷を割って推進するためのもの」と運航を担当するユーロ・マリン・キャリアーのスタッフが説明する。

さらに、船尾へと目を向けると左舷に煙突がある。PCCでは甲板を広く使うために煙突を右舷(スターボード)側に配置するのが普通だ。ところが、この新型船では左舷(ポートサイド)側に配置されるの特徴だ。

日産専用船・海技室長兼本牧事務所長の藤岡吉宏氏はこの煙突の配置について、「船のディーゼルエンジンは後ろから見て一般的に右回りに回転し、排気ポートを右側に設けるのが普通。煙突を左舷に持っていくとなると、排気管をぐるっと廻さなければならないし、排気抵抗が大きくなる」と語る。

「自動車運搬船の着岸舷は右舷。右舷側に煙突を設けると、排気の煤が岸壁に並ぶクルマに降ってきちゃう。これを避けるように着岸舷からなるべく遠くに配置したいということで左舷側に煙突を付け、同時に排気抵抗を低減させる技術を採用した船も多くなった」(藤岡氏)

また、最近ではエンジンのメンテナンスや燃料のトリートメントによって煤の量を低減させる技術も発達し、煙突が着岸舷(右舷)に設けられる船も登場していると藤岡氏は続ける。

日産専用船がチャーターする「シティ・オブ~」シリーズの船は、この「セントピーターズバーグ」のほか、「シティ・オブ・ロッテルダム」が3月29日に竣工し、「バルセロナ」「サンダーランド」「パリ」「ローマ」「アムステルダム」の7隻で完結する予定だという。

本牧ふ頭付近で、未だかつて見たことのないスタイルの自動車運搬船を見ることができる次のチャンスは、3月だ。

《レスポンス編集部》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. さらなる人馬一体へ!NDロードスター用「リビルトエンジン」発売、価格は65万7800円
  2. 24年ぶり復活、新型ホンダ『プレリュード』ついに発売…価格は617万9800円
  3. 「ミニプリウスになったな」トヨタ『アクア』改良モデルの「ハンマーヘッド」採用にSNSも注目
  4. ポルシェが新型車を予告、『911』シリーズの可能性も
  5. 「そういう時代か…」中国で生きていたホンダの最高級ミニバン『エリシオン』が話題に、「これなら日本でも売れる」の声も
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る