【インタビュー】シボレー『ボルト』開発者「GMイノベーションの象徴には実用と自由がある」

エコカー EV
ボルトの開発を担当したハイブリッド&電気パワートレーン技術開発チーフエンジニア、パメラ・フレッチャー氏
ボルトの開発を担当したハイブリッド&電気パワートレーン技術開発チーフエンジニア、パメラ・フレッチャー氏 全 12 枚 拡大写真

デトロイトモーターショーで復活を印象づけたGM。その象徴とも言えるのが次世代エコカーのシボレー『ボルト』だ。会場ではワールドプレミアとなった小型車『ソニック』に負けない人気を誇り、展示車両には常に人々に囲まれていた。

GMそしてシボレーにとってボルトが意味するもの、そしてボルトが目指すエコカーの未来について、ボルトのマーケティングディレクターであるアンソニー・ディザル氏、ボルトの開発を担当したハイブリッド&電気パワートレーン技術開発チーフエンジニアのパメラ・フレッチャー氏の2名に単独インタビューを行った。

----:ボルトという自動車の存在がGMにもたらしたものとは?

ボルトは、GMにとってイノベーション(新たな価値の創造)ができることの証明です。デザイン、技術、製造、全てにおいて優秀な人材が真剣に取り組んだことで世に送り出す事ができました。これはGMにとってもシボレーにとっても大きな意味を持ちます。良い車を作る、というだけでなく、これだけインテリジェンスな車を作る事ができる企業、ブランドであることをアピールできました。

----:GMが持つ数あるブランドの中で、なぜシボレーブランドから登場したのでしょうか。

GMの中でシボレーブランドは全体の70%の販売ボリュームを占めています。ビジネスに対するインパクトもシボレーが最も大きいことから、ボルトはシボレーブランドとして販売されます。投資効果(ROI)の面からもシボレーとして販売することで最も多くのリターンを期待することができます。

また、現在シボレーでは小型車の『クルーズ』が注目されています。米国市場においても燃費への関心が高まってきており、クルーズが実現している「42mpg」という燃費はとても大きな意味があるのです。ボルトの効果によりシボレーに対する好感度も上がっており、環境に配慮したブランドであることをよりアピールできたと考えています。

----:ボルトの販売ターゲットは?

現在のところは最新の技術に敏感な人たち(アーリー・テック・アダプター)、特に社会的な立場でも中心にいるような人たちがターゲットです。徐々に一般市場に移行していくと考えています。

ボルトの特徴は他のEVとは違い、どこでも好きなところをドライブできる安心感にあります。「充電の心配をしなくて良い」ということが、マスマーケットに移行していく際には、とても重要となる。より多くの人たちに安心して乗って頂くために、発電用のエンジンが搭載されているのです。

----:まずはアーリー・テック・アダプターに対し、どのようなアピールをおこなっているのでしょうか。

ソーシャルメディアを通じてコミュニケーションを図っています。4年前に初めて発表した時から多くの根強いファンに支えられてきており、多くの人たちがボルトに夢中になってくれています。また、新しい形の関係づくりとして、毎月25万人の会員に対し情報を配信する「eタッチ」というサービスもおこなっています。広告も積極的に展開し、このボルトという車が何なのかを正確に伝えていきたいと考えています。

----:ボルトはEVではなく、ハイブリッドなのではないかと言う議論がありますが

ボルトは、完全なEVです。160km/hで走行しても動力は全て電気によってまかなわれます。エンジンはバッテリーに電力を供給するためだけに存在し、直接の駆動力は持ちません。人は新しいものに対して何かと型にはめたがりますが、ボルトはそういった型にははまらない全く新しい自動車です。そのため、こういった話題が巻き起こるのではないでしょうか。

ボルトは、どんなハイブリッドでもEVでも実現できなかったことを実現した「実用的なEV」(プラクティカルEV)です。EVの究極の理想は、最高の効率を持った電池、そして不自由のないインフラです。しかし現段階でこれを望むことはできません。したがって、今、最も実用的なEVの形というのがボルトなのです。

----:EVが実用性を持つには発電用のエンジンが必要であると

そうです。ボルトだけでなく、EV全てにとって発電用エンジンの搭載は重要だと考えます。こうした安心感がなければEVへの移行は進んでいかないでしょう。航続距離に対する不安をガソリンエンジンが打ち消してくれる、画期的な発想です。

アメリカに住む人たちは自由な感覚を求めています。自動車は、いつでもどこでも自由に移動できることが最大の喜びだと思います。ボルトの動力ならば、制限なく、どこへでも移動できるのです。

----:三菱、日産などの純粋なバッテリーEVに対してはどうお考えですか?

市場は多岐にわたっています。CO2削減、航続距離にしても解決方法は様々あると思います。しかし純粋なEVは、家庭に1台あれば良い、というわけにはいきません。長距離走行を補うためには別の車がないと実用車としては機能しません。また航続距離だけでなく、荷室や乗員スペースの視点から見ても、ボルトのシステムは、非常に多くのユーザーを満足させることができるものと信じています。

----:今後ボルトのパワートレーンを他車に展開する予定は?

まずは第1号のボルトを世に出したことが重要で、これから市場の人々の声を聞いて、様々な展開を考えて行きたいと思います。一方で、ボルトに対する反響はとてもよく、技術的にはフレキシブルに対応できるものですし、GMとしても積極的に捉えていこうとおもいます。

《宮崎壮人》

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