【トヨタ ヴィッツ 試乗】安普請が目立つ…松下宏

試乗記 国産車
ヴィッツ
ヴィッツ 全 6 枚 拡大写真

トヨタの世界戦略車として開発されたコンパクトカーも3代目ともなるとルーチンワーク的なフルモデルチェンジになってしまうのかと思わされた。

女性だけでなく男性にも売りたいという外観デザインはあまりにも没個性的。なのにジュエルという女性を意識したモデルを設定するなどチグハグな印象も。

インテリアも全体にコストダウンを図ったことが随所に目立ち、センターメーターが廃止されて正面に配置されるようになった点も没個性的になったといえる。

ボディを大きくすることで室内空間、特にラゲッジスペースを広げたが、これももうひと工夫欲しいところ。結果的に後席のシートスライドが廃止されている。

最初に乗った1.3リットルエンジンを搭載したUは好印象だった。充実装備を備えた上級グレードで、コンパクトカーとしては静粛性も高く、乗り心地と操縦安定性のバランスも良く、ちょっとほめすぎにいえば、格上のクルマに乗っているような感じもあった。

ただ、1.0リットルエンジンの搭載車は騒音や振動が大きいし、1.3リットルエンジンでもアイドリングストップ機構を装着したFに乗ると、やはり振動や騒音が大きい上に、内装の仕様がさらに安普請になるのでがっかりさせられる。ジュエルには専用の仕様が用意されるが、共用の部分はどちらかといえばUよりもFに近い。グレード間の装備や仕様の違いが多いのは、購入時の注意点である。

アイドリングストップ機構そのものは、停止しやすくて素早い再始動が可能。従来のヴィッツに搭載されていたアイドリングストップ機構に比べるとずっと良くなっていた。なのに、嫌々用意するかのような1グレードだけの設定でしかないのは残念。

最も文句を言いたいのは、広く社会全体に対して約束したはずの、SRSサイド&カーテンエアバッグの標準装備を一方的に止めてオプション設定にしてしまったこと。かつてに比べたらオプション価格は安くなったが、そういう問題ではない。

また横滑り防止装置のVSCもヒルホルダーの必要に迫られるアイドリングストップ機構装着車に標準で、RSにオプションという設定。積極的に装着しようという姿勢がない。VSCはトヨタが日本で最初に採用した安全装備ではないか。

2012年7月に義務化される後席中央の3点式シートベルトや、ヘッドレストレイントが装備されないことに至っては、唖然とするしかない。もはや1年半しかない時点で売り出すクルマの仕様なのか。

その昔、トヨタが安全装備のGOAを発表したとき、最初に採用したのはエントリーモデルの『スターレット』で、小さいクルマだからこそ安全に、という志があったと記憶している。トヨタには世界のトップメーカーらしく堂々と王道を行くようなクルマ作りに徹して欲しい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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