ガサツな所はある。ただし500(チンクエチェント)だから許せてしまう。満員電車で美人に足を踏まれても、強く怒れないような…。
だからといって完成度がいい加減なわけではない。このクルマのキモとなる2気筒インタークーラーターボエンジンは素晴らしい出来だ。3気筒は振動やノイズの問題から2気筒に落ち着いたのだろう。予想していたほどの振動はない。
アイドリングで少し大きく感じるが、アイドリングストップ機構を装備していてこれがよく止まってくれる。再始動は若干遅いけれども、このようなシステムは慣れてしまえばありがたや、なのではないだろうか?
ダッシュボード上のECOボタンを押せば、ステアリングが軽くなりシフトダウンもそれほど頻繁に行わなくなり、高めのギヤをわりとホールドしてくれる。40km/hは4速1400rpmぐらい。ECOモードではノーマルモードより45Nm少ない100Nmを2000rpmで発生する。この40km/hからの加速ではECOモードでもそれほどかったるいとは感じなかった。
もちろんノーマルモードにすればシャッキッとしたレスポンスになり、ダウンシフトがすぐさま起きる。その気になって走らせると中高回転域のレスポンスがよく、独特の音質が500に良く似合っている。
FIATのマルチエアはBMWのバルブトロニックを超えている、とも言われているようだ。5速デュアルロジックのトランスミッションは冒頭にも書いたように500だから許せてしまう。まだ少しシフトラグが大きい。その代わり、ダウンサイジングされたエンジンによりフロント部分の重量が少なく、走りに軽快感がある。デザインだけではなく、本当のコンパクトとしての実力が備わってきた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
松田秀士|レーシングドライバー/モータージャーナリスト/僧侶
スローエイジングという独自の健康法を実践しスーパーGT最年長55歳の現役レーサー。今でも若者レーサーとバトルを演じるレベルを保っている。国内レースだけでなく海外レースにも多くの出場経験を持つ。メカニズムにも強く、レースカーのセットアップや一般車の解析などを得意とする。専門誌等への寄稿文は分かりやすさと臨場感を伝えることを心がけている。