【池原照雄の単眼複眼】日本各社、下期増産で前期並み確保も可能に

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トヨタ・プリウスα
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ピッチ上がるサプライチェーンの修復

自動車メーカー各社の今期(2012年3月期)業績予想は、生産動向が不透明なことから全社が開示を見送った。しかし、決算発表時に示された当面の生産見通しや正常生産への復帰時期などから、通期のおおまかな生産レベルを見通すことはできる。

トヨタ自動車は先月下旬段階では7~8月としていた生産上積み時期を6月に前倒しした。業界レベルで部品や資材のサプライチェーン修復のピッチが上がっている証であり、曙光が見えてきた。現時点での開示情報を元に試算すると、各社とも下期に前年実績比で2割前後の増産ができれば、おおむね前期並みの生産は確保できる。

決算発表時に明らかにされた各社の生産見通しは、企業によってクリアさに大きな差が出た。生産規模やネックとなっている部品の多寡などによって、先行きの確定度合いが相当異なっているからだ。

比較的明瞭な見通しを示した三菱自動車工業の場合、下期入りの「10月から国内外ともに生産は正常化が可能」(益子修社長)と想定している。上期については国内が前年同期の実績比で8割弱、海外は第2四半期(7~9月)のみに若干の影響が出るという。

◆日産はいわき工場が前倒しでフル稼働に

三菱の上期のグローバル生産は8割強となる見込みであり、上期と下期の生産量が同一と単純化すると、下期には2割弱の増産で、前期並みの生産レベルは確保できる。同社は実際には下期の生産ウェートが高いので、増産幅がこれより若干小さくても前期並みに達することになる。

下期からの「本格操業」を想定しているマツダや、「10月中のフル生産再開」を見込んでいる日産自動車も三菱のケースとほぼ同じ展開を見込んでよい。日産はカルロス・ゴーン社長が決算発表時に過去最高だった前期を上回る世界販売は可能と強調した。17日には震災被害の大きかった福島県のエンジン拠点、いわき工場が6月の予定を前倒ししてフル稼働体制に入っており、ゴーン社長の強気姿勢を補強している。

全車種・全ラインの正常化が「11月から12月」としていたトヨタは、その時期は変えていないものの、前述のように正常化へ向けたスタートが前倒しされることとなった。豊田章男社長は、現状では約5割にとどまっている稼働率が6月からは国内外とも7割レベルに引き上げられると説明した。

◆トヨタの連結世界販売は800万台維持も

仮に前年比で6~7月が7割、8~9月が8割水準に戻すと、上期の生産は前年同期の75%レベルとなる。通期で前期並みに戻すには、現状では正常化が早くても11月なので相当厳しい。だが、上期・下期の生産ウェートが均一とすると、下期に15%の増産ができれば、通期の生産落ち込みは5%にとどまる。

連結ベースでは、ダイハツ工業が大型連休明けから国内の軽自動車生産をほぼフル稼働に近いレベルまで復帰させている。また、トラックの日野自動車は7月から正常生産に戻せる見通しであり、これら2社の自社ブランドの今期生産量(前期で約100万台)は海外市場の好調もあって前期を上回ると筆者は想定している。

トヨタの連結世界販売(小売ベース)は前期842万台だった。このうち、トヨタ単体分(レクサス含む)が5%減少し、ダイハツ、日野が横ばいとするとおよそ800万台となる。

各社が増産を見込む下期の世界市場や為替の行方など、生産回復には部品調達以外にも不透明な要素があるものの、通期で見れば日本メーカーの立ち直りは悲観材料ばかりではないといえる。

《池原照雄》

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