低燃費ガソリン車、エコカー戦争に参戦

エコカー 燃費
ダイハツ イース
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石油情報センターによると、5月30日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットル当たり148.5円、前週よりも1.0円下がった。

これで5週連続の値下がり。約1か月で4円値下がりした。原油価格が下落しており、需要も低調なことから、石油元売りが卸価格を引き下げている。

ガソリン価格は依然としてリーマンショック前の高値水準

直近では落ち着きを見せているガソリン価格。しかし数年前から比較するとリーマンショック前の高騰以来の高値が持続しており、家計に対する影響は決して小さくない。石油情報センターの統計によると、2009年5月25日のガソリン価格(レギュラー)は119円だったが、2011年5月30日は148円と、およそ20円も高い水準となっている。

ガソリン価格高騰の原因として、直近では3.11の震災ショックが大きい。震災当初はガソリンの需給バランスが大きく崩れ、復興支援の物流はガソリン不足が原因で滞った。被災地域だけでなく首都圏でもガソリンスタンドの前には長蛇の列ができた。

そこで改めて注目を浴びたのは「フルタンクでどれだけ走ることができるか」という点だ。

とくにトヨタ『プリウス』に代表されるハイブリッド車(HV)はバッテリーとモーターによるEV走行やガソリンエンジンの動力をアシストする機能を備えるため燃費に優れ、渋滞や市街地走行が多くても燃費がガソリン車ほど落ち込まない。震災後の中古車市場では新車の供給が止まったこともあり、HVへの引き合いが多く、タマ不足に陥っていた。

海外メーカー、ガソリン車の燃費効率化に注力

日本市場ではHVの販売比率が大きいが、世界市場で見れば欧州/北米市場を中心にガソリンエンジンの効率改善による燃費向上が積極的に図られている。

フォルクスワーゲン/アウディグループは小排気量エンジンとターボそしてツインクラッチトランスミッションを組み合わせた「TSI+DSG」/「TFSI+Sトロニック」の搭載ラインナップを増やしている。

フィアットも人気車種『500(チンクエチェンント)』に約900ccの2気筒エンジンをターボで過給する「ツインエア」搭載モデルを発売した。フォードも先頃、1リットル3気筒エンジン+ターボの「エコブースト」を発表したばかりだ。

世界の市場で戦うには、ガソリンエンジンの技術革新も急務となっている。

マツダ新型『デミオ』、10・15モードでリッター30km

こうした潮流に対して日本勢も黙っては見ていない。

マツダが近日中に発売を予定する新型『デミオ』には、直噴1.3リッターガソリンエンジン「SKYACTIV-G 1.3」を搭載する。電気を使ったサポート無しに燃費向上を追求する新世代技術「スカイアクティブテクノロジー」が初めて実用化される。
 
SKYACTIV-G 1.3は、レギュラーガソリンを燃料とする自動車用量産エンジンとしては史上最高の圧縮比14.0を達成した。とくにエンジンが低回転中の高負荷領域で、効率を追求した。高圧縮エンジンに不可避とされていたノッキングを防ぐため、理想的な燃焼室形状をつくるキャビティつきピストンや、ち密な燃料噴射制御を行うマルチホールインジェクターなどの新技術を採用した。

新型デミオに搭載される予定の同エンジンは、独自のアイドリングストップ技術「i-stop」やCVTと組み合わせ、燃費は10・15モードで30km/リットルを達成する。

ダイハツ『イース』はJC08モードでリッター30km達成、トータルコストでも競争力

ダイハツは、新燃費基準JC08モードで1リットルあたり30kmの燃費性能を確保する軽自動車『イース』を9月に市場投入する予定だ。

JC08モードは、従来の10・15モードに比べ測定条件に実用域での使用方法を加えている。このため測定条件は厳しく、燃費の数値は悪化する。新型イースは、このJC08モードで30km/リットルを達成するという。HVなどの電気的なアシストを持たない量産車として最高レベルの燃費性能となる。

イースは、エントリーモデルで80万円を切り、量販モデルでは100万円を切る価格設定が見込まれ、低価格と高燃費効率を両立する。しかも軽自動車は登録車に比べても税制面でも優遇されており、維持費を含めたトータルコストで考えると、高い競争力を持つことは間違いない。

ダイハツは、トヨタへの軽自動車のOEM供給も行う。これに伴いトヨタは2011年秋をめどに軽自動車市場へ参入する。プリウスレベルの燃費効率を確保したイースを供給する可能性もある。

ガソリン車交えたエコカー戦争が激化

HV、EVが“第一、第二”のエコカーであれば、JC08モードでリッター30kmクラスのガソリン車は“第三”のエコカーといえる。モーターなどの部品搭載スペースが限られる小型車、軽自動車においては、既存の搭載部品の性能向上で燃費を高めることが命題となってきたが、ここへきて技術革新が形になった。

2010年は、プリウスの拡販などによりHVが市民権を獲得、日産のEV『リーフ』が市場投入され、エコカーが注目を浴びた。2011年はここに燃費効率の高い“第三のエコカー”ガソリン車も名乗りを挙げる。エコカー戦争は激化の様相を呈している。

《レスポンス編集部》

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