【マツダ デミオSKYACTIV 発表】CVT制御をエンジンECUが肩代わり

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デミオに搭載されるCVT
デミオに搭載されるCVT 全 6 枚 拡大写真

マツダ『デミオ』改良新型には5速MTとCVT、そして4速ATの3種類のトランスミッションが用意されているが、「13-SKYACTIV」に設定されているのはCVTのみ。

日本の市街地での燃費を追求すれば、その選択は頷けるが、スペックを見る限り、13-SKYACTIVに使われているCVTもその他のグレードのものと同じ仕様だと見受けられる。

これにはSKYACTIVのトランスミッション、「SKYACTIV-Drive」がまだ完成していない、という問題と、エンジン同様、既存のプラットフォームに搭載するという制約もあって、CVTを選択することになったらしい。

減速比の幅広さだけが同じなのか、何が同じで何が違うのかを、トランスミッションのソフトウエア開発を担当したパワートレイン開発本部ドライブトレイン制御開発グループの佐々木和夫氏に訊ねてみた。すると、13-SKYACTIVではアイドリングストップ「i-stop」作動時にCVTの油圧を保持しておくための電動油圧ポンプを装備しているほかは、機械的には通常のデミオ用と同じものを搭載しているそうだ。

せっかくエンジンがこれだけ高効率化を果たしたのだから、トランスミッションもCVTを踏襲するにせよ従来型より高効率な構造を採用できなかったのだろうか。CVTの駆動損失の多さ、トルクコンバーターの容量やロックアップ機構など、改善できそうなポイントはいくつもありそうだ。

当然マツダ社内でも検討されていた。「CVTやトルコンは既存のメカニズムを利用しています。効率化を図るうえでは、改善したいポイントはいくつもあって、社内でも何度もそういう話は出たんですが、専用のCVTを開発するわけにはいかない理由があるんですよ」と佐々木氏。

その最大の理由はアイシン製のCVTを搭載しているからだ。コストの問題から外部調達となっているため、専用設計のトランスミッションを用意することは難しいとのこと。そこでソフトウェアの方で対応しなければならなくなったが、その開発はかなり大変だった。

まずは燃費を目標に近付けるための制御を優先して開発を始めたそうだが、SKYACTIV-G自体の制御が複雑であることからも、マッチングは相当に困難な作業だったようだ。

試行錯誤をしていく中で気が付いたのは、SKYACTIVと従来エンジンの違いを利用することだった。燃費がいいSKYACTIV-Gは、直噴だけに制御も緻密でECUもより高度なものを使っている。そこでCVTとの協調制御を行なう上で、エンジン側のECUにCVTの制御の一部を任せてしまうという方法に出たのである。これによって、CVTのメカニズムやECUのスペックはそのままに、より高度な制御を可能にした。

佐々木氏はこれまでデミオ以外にも様々な変速機の開発に携わってきた。「しかし、これまでこんなに大変だったことはなかったですね」と言うくらいCVTの制御ソフトの開発には苦労したそうだ。

ところで13-SKYACTIVでは、10・15モード燃費の30km/リットルに比べてJC08モードでは25km/リットルと、JC08モード値では2割近く燃費が低下してしまっている。これは従来エンジンのデミオが1割程度の差しかないことを考えると、ちょっと差が大きすぎる。ひょっとして10・15モードで30km/リットルをマークするためだけの、特殊な仕様になっているのでは……。

そんな意地悪な質問もしてみたところ、「それでは製品になりませんよ。確かに開発当初は燃費重視で30km/リットルの達成を目指しましたが、達成の目処がたってからは運転して楽しいクルマになるよう、加速時のフィーリングまで重視して開発しました」。

CVTの加速フィールには、まだメーカーによってはMTやATのような自然なフィールを実現していないものもある。マツダは“Zoom Zoom”に代表されるファントゥドライブを大事にしている自動車メーカーだ。エコカーであっても走りの楽しさは忘れない、そんな姿勢がCVTにも込められていた。

《高根英幸》

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