放射能、被災車両のリサイクルにも影響

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石巻市(5月上旬)
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放射能の問題は、被災車両についても深刻な影響をもたらしている。さまざまな素材と技術が凝縮された資源のかたまりともいえる自動車。被災車両がリサイクルできる資源となるか、放射性廃棄物となるかは、汚染の状態に大きく左右される。

宮城県多賀城市では5月上旬時点で「限りなく0.3マイクロシーベルトに近い」

被災車両がリサイクル可能か否かを分ける要因になるのが放射能濃度だ。

仙台市の北東に位置する多賀城市。被災車両の処理にあたる多賀城市の建設部道路公園課長・鈴木弘章氏は5月上旬時点で、「多賀城市の被災車両に対して放射能計測を行ったところ、0.3マイクロシーベルトに近い数値が計測されている。風向き次第では汚染が進む。被災車両がリサイクルできなければ、本当にただのゴミとなってしまう」と不安を話した。

鉄スクラップリサイクル時、放射能の国内業界基準値は0.5マイクロシーベルト。環境次第で、被災車両のリサイクルが不可能になる場合もある。

鉄スクラップの基準値は厳しく設定

鉄スクラップの放射能基準値0.5マイクロシーベルトはどのような値なのか。

人が直接摂取する野菜類の暫定基準値は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告をもとに、原子力安全委員会が定める1キログラムあたり放射性ヨウ素2000ベクレルとされている。

放射能の強さを表すベクレルを、放射線量を表すシーベルトに換算する際は、放射性物質の種類によっても数値が変わる。例えば野菜1キログラムあたり2000ベクレルの放射性ヨードが計測された場合、この野菜1キログラムを経口摂取すると、約44マイクロシーベルトの放射線量となる。

鉄スクラップリサイクル時の基準値0.5マイクロシーベルトと比較すると、鉄スクラップの基準が厳しいレベルに設定されていることがわかる。

輸送の間に汚染進み基準値越え

鉄スクラップ事業を手がける三井物産メタルズによると、破砕業者がもっている放射能測定ゲートは、絶対値を計るものではないという。上限値に「達している・いない」を測定、医療機器など特殊用途での高濃度汚染物質が混じっていないかを判別することが主な目的となっている。

震災により、放射能濃度の平均値は微量ながら高まっている状態。スクラップ直後は基準に満たない濃度であっても、輸送の間に濃度が高まり、高炉や製鉄所に到着した段階で基準値をオーバー、資源としてリサイクルできなくなるケースもあるという。

放射能濃度は、雨や風といった自然環境に左右されるため、数値に関しては今後も引き続き注意を払うことが求められている。

《土屋篤司》

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