ブリヂストンより7月1日から発売される新世代の市販用ランフラットタイヤ『POTENZA S001 RFT』の試走会が栃木県那須にあるテストコースで実施された。
POTENZA S001 RFTは、ブリヂストンにとって、1987年の量産開始、2005年の改良型と数えて、第3世代となるモデルだ。新世代への進化で、ノーマルタイヤと比べて硬い乗り心地といわれるランフラットタイヤの弱点を大きく改善しているという。
そもそもランフラットタイヤは、タイヤ内の空気圧がゼロになったときに車重を支えるためにタイヤサイド部が硬くなっている。断面を見ると分かるが、厚く補強が入っているのだ。そのためタイヤの縦方向が硬くなって乗り心地が悪化する。この補強を薄くすれば乗り心地を改善できるのだが、実際には叶わなかった。短時間の走行のみに特化すれば薄くもできたが、ランフラットタイヤに求められる規格(80km/hで80kmを走行)を行うと、熱を発して最後にはタイヤ構造が壊れてしまうからだ。
そこで、第3世代には「熱をコントロールする技術」を採用する。ゴムにナノポロ・テックTM技術を投入。ゴムのポリマーに配合するカーボンの配置を最適にして、カーボン同士のこすれを防ぐことで発熱を抑えた。また、タイヤサイド部にクーリングフィンを設定。タイヤサイド部に乱気流を発生させてタイヤを冷やす。
そうした工夫の結果、POTENZA S001 RFTは従来のランフラットタイヤと比較して、縦バネ係数を大幅軽減する(ノーマルを100%としたとき、従来型ランフラットが126%、『POTENZA S001 RFT』は106%)。ランフラット性能を維持したまま、ノーマルタイヤに近い乗り心地を獲得できたというのだ。
試走会のメニューのひとつには乗り比べがあった。3台のBMW『525i』が用意され、従来型のランフラットタイヤ『POTENZA RE050 RFT』、新製品のランフラットタイヤPOTENZA S001 RFT、ノーマルタイヤ『POTENZA S001』をそれぞれ装着。同じクルマでタイヤの違いを体験することができた。
まず従来型のランフラットタイヤを試してみる。路面の凹凸に対しての動きが大きく、いかにも硬く重いという印象だ。それに対して、新世代のPOTENZA S001 RFTは、明らかにショックが小さく、クルマの揺れの治まりも早く、フラットな走り。タイヤ1本当たり、従来品よりも300gほど軽くなっているというのがフィーリングにも表れた。まさにしなやかな乗り心地だ。では、さらに1本あたり1kgも軽いというノーマルタイヤを最後に試す。するとタイヤの軽さもあって発進は力強い。しかし、装着車両のサスペンションセッティングとのマッチングがもうひとつなせいか微振動が多い。高級感ある落ち着いた動きという意味でも、POTENZA S001 RFTの魅力を感じることができたのだ。
この第3世代のランフラットタイヤだが、新車の純正タイヤとしても採用されており、順次、市場に登場する予定だ。しかし、それは新車発表のタイミングに合わせるため、現在のところ日本で販売されるクルマで、この第3世代のランフラットタイヤが装着されるものは存在しない。つまり日本では市販品の方が先にマーケットに投入されることとなる。