ソーラーパネルと震災

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東日本大震災により、太陽光発電システムを設置した家はどのような被害にあったのか。災害時の停電などで太陽光発電はどう役立ったのか。太陽光発電のユーザーグループであるNPO法人 太陽光発電所ネットワーク(PV-NET)と東京工業大学ソリューション研究機構の黒川康輔 特任教授は、共同で被災実態調査を実施し、このたび中間報告を行った。

■ソーラー・パネルの設置で、家屋の強度はむしろ高まる可能性
かねてより日本では、「屋根を軽くして家屋の重心を低くするほど、地震の揺れに強い」といわれてきた。この点ソーラー・パネルは、全体で300~400kgの重量があり、搭載によって家屋の重心が高くなり、地震の影響をより強く受けてしまうのではという懸念があった。しかし実際に被災地を調査してみると、瓦などの屋根材は破損していても、ソーラー・パネルを設置した部分は健在であるなど、むしろ家屋の構造強化につながっている可能性があるという。断定は避けながらも、「ソーラー・パネルを設置する際の架台(フレーム)などが、結果として家屋の構造強化に役立っているのでは」とPV-Net専務理事 都筑 建(つづく・けん)氏。震災時に震度6の地震に見舞われた千葉県我孫子市と船橋市の設置者へのアンケート調査でも、太陽光発電システムの損傷はほどんど報告がなかったという。

■活用が難しい「自立運転」
停電でも昼間で日射があれば、ソーラー・パネルで自家発電した電気を使うことができる。ただしこれには、太陽光発電システムを「自立運転モード」に切り替えて、専用コンセントに電気製品をつなぐ必要がある。調査では、この自立運転モードで震災時に太陽光発電システムが活用されたかどうかも確かめている。結果は残念ながら、あまり十分には利用されていなかったという。理由は、自立運転モードが周知されていなかった、自立運転モードで使える電気は最大でも1.5kWで少なすぎるなど。また避難所となった一部の学校や公民館には、太陽光発電システムが設置されていたが、予算の都合などから自立運転機能がついておらず、こちらもパネルで発電した電気は有効活用されていなかった。自立運転機能の周知徹底、平時での自立運転機能の予行演習が必要であり、拠点避難所などに太陽光発電システムを設置するときには、自立運転機能の敷設を義務化する必要があると都筑氏は提言している。

■被災しても日光が当たれば発電してしまうソーラー・パネル
また、津波被害のあった場所では、被災した住宅に設置された太陽光発電システムがそのまま放置されているケースが多く、危険な状態となっているという。浸水により、パワーコンディショナなどは機能不全になっていても、ソーラー・パネルに日光が当たれば、電気が作られる。こうして発電された電気を正しく処理しないと、感電事故や火災事故が発生する可能性もあるからだ。

問題は、緊急時の対応方法がきちんと準備されていないことだという。「万一に備えた安全対策マニュアルの整備や、機器側に切断機能を追加する必要がある」(都筑氏)。

PV-Netでは、こうした被災し残置されたソーラー・パネルを回収し、被災現地などでの共同太陽光発電所の建設を検討しているという。

ソーラー・パネルの設置で家屋はむしろ強化される? ~ 東日本大震災による太陽光発電被災実態調査中間報告 ~

《小川@太陽生活ドットコム》

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