【シトロエン C4 試乗】「らしさ」は薄れていない…千葉匠

試乗記 輸入車
シトロエンC4
シトロエンC4 全 6 枚 拡大写真

まず気になったのが、先代とはプロポーションが違うこと。フロント・オーバーハングが少し短くなり、逆にリヤが延びた。なるほど、このおかげで「クラス最大級」というトランク容量(380リットル)を実現したわけだ。しかし……。

往年の『DS』や『CX』を思い出していただけばわかるように、ホイールベースが長く、オーバーハングはフロントが長くてリヤは短い、というのがシトロエンの伝統。新型『C4』はそれとは逆方向に舵を切った。

その背景にあるのは、昨年の『DS3』に始まったDSシリーズの存在だ。C4とプラットフォームを共有する『DS4』も間もなく日本に導入予定。スポーティで個性派のDSシリーズに対し、Cシリーズは合理性や実用性を重視するユーザーをターゲットとして、お互いの差異化を図っている。

だから新型C4は全高と全幅を拡大して室内空間をよりルーミーにすると共に、リヤを延ばしてトランクも広げた。機能の進化は歓迎すべきだが、由緒あるDSブランドが復活した結果、C4のプロポーションに伝統の個性が薄れたと考えると気分は複雑だ。

でも、そんな気分を払拭してくれたのが、ボディサイドのキャラクターラインである。前輪の上から後方へ延びるラインとリヤコンビランプから前方に延びるラインが、上下にズレて行き違いながらリヤドアで消える。先代C4までのシトロエンのシンプルな面構成とは違って、いささか複雑で凝りすぎな印象もあるが、大事なのはこの2本のラインが水平に通っていることだ。

往年のシトロエンは「タイヤで地面を蹴る」のではなく「地表を滑空する」イメージのエクステリアで、ハイドロニューマチックの乗り心地を見る人に伝えていた。メカサスの新型C4に滑空イメージがないのは当然だが、前後のタイヤにボディの視覚的な重さを伝える2本のキャラクターラインを水平にすることで、フラットな乗り心地を視覚化している。これは伝統を活かした新しいデザイン表現。試乗で乗り心地を味わいながら、見ても乗ってもシトロエンらしさは薄れていないと確信したのであった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

千葉匠│デザインジャーナリスト
1954年東京生まれ。千葉大学で工業デザインを専攻。商用車メーカーのデザイナー、カーデザイン専門誌の編集部を経て88年からフリーのデザインジャーナリスト。COTY選考委員、Auto Color Award 審査委員長、東海大学非常勤講師、AJAJ理事。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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