【マツダ アクセラ 改良新型】猿渡主査「燃費が良いだけのクルマは作りたくなかった」

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マツダ アクセラ改良モデル開発主査・猿渡健一郎氏
マツダ アクセラ改良モデル開発主査・猿渡健一郎氏 全 12 枚 拡大写真

9月にマイナーチェンジを受けたマツダのCセグメント戦略モデル『アクセラ』。変更幅はマイナーチェンジとしては大規模なものだ。

次世代環境技術群「SKYACTIVテクノロジー」を投入したエンジンと変速機の採用によって10・15モード走行時で18.8~20km/リットル、JC08モード走行時で16.2~17.2km/リットルという2リットル級トップクラスの公称燃費を実現させたことがクローズアップされているが、トピックはそれだけではない。

内外装のデザイン変更、ボディの空力処理の見直しによる空力特性の向上(セダンでCd値0.28から0.26、ハッチバックで同0.30から0.28に)、ボディ各部への補強材の追加、サスペンションの再セッティングなどにより、商品力の向上を図っている。

「マイナーチェンジにさいして、上層部からはエンジンと変速機をSKYACTIVに変更すればいいからと指示されました。が、私は単に燃費がいいだけのエコカーを作るつもりはなかった。我々が売るのはエンジンと変速機ではない。クルマを売るんです。せっかく変更する以上、ドライビングを大いに楽しめるワクワクするクルマに仕立てたい。アクセラをより魅力的なモデルにするために、今できることはとことんやってやろうと考えたのです」

開発主査を務めた猿渡健一郎氏はエンジン開発畑出身。バブル崩壊でお蔵入りになった高級車『アマティ1000』の4リットルV12エンジンやフォードグループの主力エンジン「MZR」シリーズをはじめ、マツダの中核エンジンの開発を手がけてきた。入社後はロータリーエンジンを搭載したスポーツカー『RX-7』を初代、2代と乗り継いだ大のクルマ好き、ドライビング好きでもある。

「そもそも私はエコという言葉が嫌いなんです。クルマのエネルギー効率を最高に上げて燃料消費量をできるだけ少なくするのは自動車会社に課された使命ですが、それは結果的に達成できればいいこと。エコという言葉はクルマを操る楽しみを犠牲にする。その言葉を聞いた瞬間、ドライバーは自分の本当の意思に反してスロットルを絞り、トロトロとした走りを志向してしまう。高速道路やワインディングをゆっくり走ればもちろん燃費は向上しますが、目的地までの所要時間は延びてしまいます」

「燃費のために二度とは戻らない人生の時間を余計に費やし、楽しみを得られる機会を失ってしまうのがいいことだとは思えないんですよ。そんなクルマづくりをしていては、クルマはそのうち白物化して、何に乗っても同じというふうになってしまう。アクセラは2リットル級の非ハイブリッドとしてはクラストップの燃費性能を実現していますが、それだけではダメ。オーナーが後に人生を振り返ったとき、思い出の中にアクセラの姿や楽しいドライビングがあってくれたらいいな、と。そんなクルマにしたかったんです」

アクセラのエクステリアデザインは、ボディパネルには手を入れないまま、バンパーの形状やヘッドランプ内のベゼルの意匠を変更するという手法で刷新が図られたが、その効果は意外に大きい。マイナーチェンジ前のモデルは基本的なフォルムこそバランスよく仕立てられているものの、ヘッドランプ、リアコンビネーションランプ、バンパー開口部やビルトインタイプのフォグランプなどの細かい部分が作為的に作られすぎていて、玩具っぽさを感じさせるところがあった。マイナーチェンジモデルは一転、非常にシックに仕上がっており、1クラスかそれ以上上等に見える。

「バンパー形状をはじめ、再デザインする部分については機能美を最重視しました。好きに変えていいとなると、デザイナーが余計な色気を出してしまうんです。アスリートの身体が美しいのは無駄がないからです。そういう作りこみをやろうと」

ターボモデルの『マツダスピードアクセラ』を除き、バンパー形状は、空力改善のために両サイドの張り出しが強められた。それに伴って、開口部も従来の五角形に比べて口角の立ったデザインに変えられている。“歌舞伎顔”を連想させる旧型のフロントデザインについては賛否両論があり、とくにアメリカでは“ふざけた女が笑っている顔”といったネガティブな感想も少なくなかったという。

新型ではその面影はほとんどなくなっており、「精悍で落ち着いたイメージづくり」(猿渡氏)という狙いはおおむね達成されていると思われた。ディーラーで新旧モデルを見比べることができる場合、その違いを観察するのも面白いであろう。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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