新しいホンダ『ASIMO』は、3人に飲み物のオーダーを訊き、3人が同時に話しかけてもキチンと聞き分ける。
そして飲み物をワゴンで運んでくると、立ち位置を変えてから、水筒を掴んで、蓋を緩めて外した。それも蓋を何度も握り直して手首を回転させる行為を繰り返すのだ。
空の紙コップを握って持ち上げ、水筒の中のオレンジジュースをコップに移し替える。注ぎ込むことでコップの重量は重くなり、支える力を大きくする必要があるが、握る力を大きくし過ぎれば紙コップは潰れてしまう。
対象物の位置を正確に認識するのは頭部に組み込まれたカメラによる視覚、そして握る力は手首の力覚センサーで重さを感じとるだけでなく、44チャンネルもある手の平の触覚センサ、各指にも組み込まれた軸力センサからの情報によって調整されるのだと言う。実にキメ細かい制御を行なっていることを伺わせる、象徴的な動作だった。
そんな風に動きぶりに進化を見せたASIMOだったが、一番の進化は自律機械になったことだ。
自身の行動に対して周囲で想定外の動きがあると、それに対応して予定されていた行動を中断し、状況に合わせた行動へと柔軟に対応することができるようになったそうだ。不整地でもバランスを取りながら歩けるのも、そうして臨機応変に進路を調整する能力があるからだ。
これは単に命令を実行するだけでない、知能をもった機械になったことを意味している。
例えば人が歩いてくる進路と自分の進路が交錯すると判断すると、自分でルートを変更して衝突を回避して目的地へと歩く。プレゼンの途中で飲み物が届くと、解説を中断して飲み物を勧めてくれる。質問(ある程度想定されたものであろうが)されたことに答えるなど、人間との共存を強く意識させてくれるヒューマノイド型ロボットになった。