今回の東京モーターショーの特徴の一つが「SMART MOBILITY CITY 2011」。これはクルマを単体の乗り物として考えるのではなく、生活に密着したギアとして住宅や街と連系させることで、より環境や人間に優しい環境にするために貢献することを目指していくものだ。
会場となるのは西ホールの4Fで結構な広さがある。入り口周辺は特定法人など関連団体のブースがちょっとお堅い雰囲気で、環境や未来への提案は大事だがクルマ好きはちょっと退屈してしまうかも、と思って歩き進んでいたら、意外と興味深いスポットがあることに気付かされた。
まずは東レのカーボンファイバー製スポーツカー『TEEWAVE AR-1』。まだまだコストの面で量産車には難しいだろうが、カーボンの素材感を活かしたデザインといい、飛躍的な性能向上が見込めそうな内容は、一見の価値がある。
続いてGMが出展している『eN-V』。正面から見た時には何かのシミュレータかと思ってしまうほど、そのスタイリングにはインパクトがある。まるでセミトレーラーのトラクターヘッドをさらに短くしたようなスタイルだ。
しかも、このクルマ、4輪ではなく2輪で走行する。バイクと違い縦にタイヤが並んでいるのではなく、普通のクルマならFFの左右前輪だけというレイアウトなのである。つまり『セグウェイ』を大きくして、2名乗車できるキャビンを取り付けたような感じ。実際、基礎研究の段階ではセグウェイと共同で開発を行なったそうだ。
短いボディでも4輪にするとピッチングの制御が問題となるが、セグウェイ方式なら2輪の動きと水平を保つだけに専念できるので、高度な制御があれば可能なのだろう。前方の底部には、駐車中に接地する小型の車輪が2つ、装備されている。さらに重心を移動させるためか、ボディとシャーシは前後にスライドする構造のように見える。
幾台ものeN-Vが連なってコンボイ走行するほか、緊急車両が近付いてきたら車線を譲って進路を開けることも行なう。交差点でも前後左右のクルマとの位置関係を調整しながら走るので、信号を使わなくても衝突することなく、走り抜けられるそうだ。
このデザインで速度を出すには、道路の平滑性も相当なものが求められそうだが、30年後の交通を目指してGMは開発を進めているのである。
さらに奥に進むとVWの前後タンデム2シーターのEVコンセプト、『ニルス』がある。デザインの可愛さと軽快な走りを想像させるフォルムは、スポーツカー好きの心にも響くはず。
とまあこのフロアだけでも、なかなか見ごたえあり。会場に来たらぜひ、ここもチェックすることをお勧めする。