2011年5月の「人とくるまのテクノロジー展」に出展し、内燃機マニアを驚かせたミラーサイクルのスクデリ・エンジン。「人とくるま~」ではパネルとムービーの展示に止まっていたが、この東京モーターショーでは実物のカットモデルをもってきてくれた。
ただし輸送中のトラブルで壊れてしまい、残念ながら動かせないそうだ。それでも、iPadのムービーだけでは半信半疑な内燃機マニアも、現物のエンジンを目の前にすれば俄然、興味が湧いてくるのでは。
展示されていたエンジンは並列の2気筒に見えるが、スクデリ・エンジンは吸気・圧縮と燃焼・排気を2つのシリンダーで分担しているので、4サイクルエンジンの単気筒に相当する。
振動対策としてクランクシャフトを挟み込むように、両側に大きなバランサーシャフトも備えている。実験用として作られたエンジンだけに市販車用と比べるとかなり大きい。
筆者が考えるにこのスクデリ・エンジン、アイデアは面白いが最大のネックとなりそうなのは、高回転化が難しいということだろう。圧縮済みの空気をパワーシリンダーに送った瞬間、燃焼を始めることになるため、上死点後点火となるだけでなく、吸気に使える時間が非常に限られるからだ。圧縮済みとはいえパワーシリンダーの吸気バルブは小さく、吸気ポート側に開くバルブでは吸気の抵抗も無視できない。
テキサス州の研究所ではすでにエンジンベンチにかけられたスクデリ・エンジンが運転を開始しており、最高回転数は4000rpmを記録したという。しかし、現時点で最も効率のいい回転数は2000rpmと、かなりの低回転型らしい。
燃料のもつエネルギーを効率良く駆動力に変換することは得意だが、現時点ではディーゼルエンジンほどの高圧縮も望めないので実用トルクを得るには相当な排気量が必要となりそうだ。もっとも直噴化によって圧縮比を高めるなどの研究も進めているようだし、エアエンジンとしての機能があることもスクデリ・エンジンの武器ではある。
やはり熟成が進んだ4サイクルエンジンと比べると、まだまだアイデアが先行している感のあるスクデリ・エンジンだが、エンジンの未来のために今後も進化、熟成を続けて欲しいと思わせてくれるパワーユニットだ。