【座談会】どうなる? 2012年のスマートフォン…ジョブズなき後のアップルと復権を期すWindows

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GALAXY S II LTE SC-03Dを紹介するNTTドコモの山田隆持社長
GALAXY S II LTE SC-03Dを紹介するNTTドコモの山田隆持社長 全 22 枚 拡大写真

 ドコモのLTEサービス「Xi(クロッシィ)」対応端末の登場、タブレットの普及、auとソフトバンクのiPhone販売合戦など話題が尽きなかった2011年。ジョブズなき後のアップル、モバイルOSの復権を期すマイクロソフト、そして苦境に立たされる国内メーカー勢はどう巻き返しを図るのか。

 2011年のスマートフォン市場総括と、2012年の予測について、スタッフで座談会を開催。参加したのは、RBB TODAY 小板謙次編集長、同編集部 北島友和、ITライターの日高彰氏、椿山和雄氏。

■LTE、WiMAXなど次世代通信サービスが本格化した2011年

北島:2011年を見ると、WiMAXが100万契約を超え、ドコモの「Xi(クロッシィ)」対応端末が次々に登場するなど、次世代のモバイルブロードバンド本格化への準備が着実に進んだという印象がありました。

日高:今後ドコモ以外の各社もLTEを用意してくるかと思いますが、ただ回線速度が速いとかじゃなく、ユーザーレベルでアプリに合わせた回線切り替えとか、そういった部分までネットワークの作り込みが重要になってくるかと思います。

北島:我々のようにスマートフォンを複数台持ち歩くギークというかヘビーユーザーは、通信品質の部分をどうしても気にしてしまいますが、全体としてキャリアでサービスを選ぶ人びとはどれくらいいるのでしょうか。

小板:かなりいるでしょうね。親がソフトバンクだったら、新規で購入する家族はソフトバンクにするでしょ?

北島:それは家族割りが利くからという料金の理由ですよね。

小板:料金以外になにがあるの? 生活していく上では月々の電話料金が1万5000円とかって普通の人は大変だと思うけど。

日高:通話エリアについていえば、年齢が上にいくほどドコモ信仰がありますよね。ドコモで繋がらないと「しょうがないか……」となるのが、同じところでソフトバンクが繋がらないと「なんでつながらないんだ!(怒)」というのがありますよね。

椿山:そんなに通信の品質って違うもの?

北島:ソフトバンクだけを使っている人には気にならないと思いますが、複数のキャリアで端末を併用していると、差を感じてしまう場面がやはりあります。ソフトバンクは発表会で他の2つのキャリアと同程度の通信品質を実現したと言っていますが…。

■ドコモからiPhone発売はあるのか?

小板:12月に入って、ドコモがiPhoneを発売するって話があったよね。

椿山:とある媒体が「ドコモから夏にiPad、秋にiPhoneが出る」とする記事を出しました。

北島:たとえ交渉が進んでいるとしても、キャリアからしてみれば「確定はしていない」ことなのだから言えないに決まっている。もちろん他の端末メーカーへの配慮もあるでしょうけれど。

日高:その記事の書き方を見ても、アップルがドコモにLTE対応を要求したってあるんですけど、通信方式に対応するのは端末の方なので、書き方的にどうなのかな、という疑念はあります。 ドコモも直ぐに否定の発表をしているので、auの時とはちょっと違うのかなという印象です。ただ次世代iPhoneが仮にLTE対応であった場合、まともにLTEサービスを提供しているのはドコモだけなので、構造的にはあり得る話ではあるのですが。

北島:これまでのアップルをみると、iPhoneに限って言えば通信規格の対応についてはかなり慎重でしたよね。初代iPhoneが登場した時はGSMのみでしたし、3Gに対応したのも後発でした。最大の市場である北米でのLTEインフラ整備がなかなか進んでいない中で、次の世代で採用する可能性は高くないと思えるのですが。

■ソフトバンクはしたたかにiPhoneのLTE対応を準備?

椿山:LTEといえば、ソフトバンクは「ソフトバンク 4G」の名称でサービスを開始します。LTE対応iPhoneへの布石ではないかとの憶測がありますが…。

日高:ソフトバンク 4Gっていうは、TD-LTE(Time Division duplex Long Term Evolution)といって、中国でChina Mobileが採用するLTEサービスです。中国の市場規模でしたらアップルも中国向けにTD-LTE仕様のiPhoneを用意してもいいでしょうし、もしそうなればソフトバンクはそのTD-LTE仕様のiPhoneを仕入れてサービスを開始することも可能です。

日高:ソフトバンクもドコモと同じFD-LTE(Frequency Division duplex LTE)をやるとは言っているんですが、具体的にいつ頃からって話になるとその辺はぼかしているので、もしかしたらそういう狙いがあるのかなと? それに比べてTD-LTEの力の入れようをみると、勝算のあるバクチを打ってるのかなと感じます。

椿山:世界的にLTEサービスの普及進捗はどのような状況なのでしょうか。

小板:確か、エリクソンの出した見込みでLTEの本格普及は2015年以降って話だよね。

日高:LTEはどのキャリアにとってはかなり大型の投資になるので、リーマンショック以降、3Gをハイスピード化する方向に投資を切り替えているので、まともなLTEサービスを受けられるのはアメリカと日本や韓国のユーザーぐらいになりますね。現状でLTE対応のiPhoneを出したとしても、電池は持たなくなるしコストもアップするし、どうなのかな?でも、次のiPhoneがLTE対応でないとするならば、ドコモのiPhone発売って話もないってことになるんです。

椿山:う〜ん、LTE対応のiPhoneは、来年ではないのかな?

北島:LTE対応にせよiPhone 5にせよ、おそらく6月のWWDCが試金石になるでしょうね。もしLTE対応するなら日本でもテザリングの制限解除をぜひともお願いしたいですね。

■スマートフォンでサムスンが大躍進

北島:スマートフォンの登場は端末メーカーの勢力図も大きく変えました。特にサムスンが一番売れる端末になるとはフィーチャーフォンの全盛時代は想像もできなかったことです。

小板:そうだね、何故今までサムスンを買わなかったのかね?

日高:これまでの“ガラケー”の時代では、グローバル端末はやっぱり使いにくくて、国内での使用に最適化された端末の方がいいよねって話だったんです。ところが、スマートフォンの時代になると、世界で何百万台も出ている端末の方が品質も性能もいいものができるってことなんだと思います。そんななかで、今年象徴的だったのは、LGのLTE端末「Optimus LTE」です。LGは、家電量販店なんかで0円端末担当だったのが、ここにきていきなりハイエンド端末に飛び込んできた。サムスンですらオサイフ機能を積んでいないのに……。HDもワンセグも全部入りですからね。

小板:サムスンはいいものを早く出したいというか、ほかの市場で儲けているから日本仕様化しなくてもということなのだろうか。 LGはここで市場を取っておかないと後がないって感じ?

日高:LGはここ何年か、0円担当をしながら、日本対応へのノウハウを培ってきたんだと思いますよ。(関連記事:韓国LGレポート)

小板:日本でLGのイメージってどうなの? 認知されている?

北島:PCユーザーの間ではディスプレイなどの周辺機器で安くて高品質、というイメージがありますが、国産メーカーと直接比較されるテレビとかの黒モノ家電だと途端にブランド力が落ちますね。掃除機、洗濯機とか白モノのほうがまだイメージがいい。家電量販店で同じようなスペックの製品をを比べていくと、LGが一番安いみたいな。

小板:プラダと組んだりとか、伸し上がろうというのは感じる。

北島:CESやIFAなどが良い例ですが、ここ数年の海外の展示会にいくと日本メーカーよりLG・サムスン勢が大きなブースを確保していたり華々しいカンファレンスを実施したりと、勢いをやはり感じます。

■ソニーはどうした

北島:国内メーカーに目を向けてみましょう。僕としては、ソニーをプッシュしたいのですが。オーディオやテレビでソニーのプロダクトに対して夢を抱いていた世代って自分のようないわゆる団塊ジュニアの世代が最後なんじゃないでしょうか。

小板:なんかパソコンを作ってたころのワクワク感がないんだよね。

日高:携帯電話の発表会場で説明している人に“見覚えのある人がいるな”と思っていたらVAIOを作っていた人たちがいたんですね。同じ人が作ってなんでこんな夢のないモノを作ってるんだとガッカリしました。革新的な使い方を打ち出していない、というか打ち出せないんでしょうね。

小板:タブレットの発表の時は、どんなものが出るのかと期待したけど、あんな状態だった。

北島:ワンオブゼムになっちゃった。ウォークマンにしてもVAIOにしても、ソニーならではの統一された世界観というか思想みたいなものがあったと思うんですがそういうモノが見られないのが残念です。PlayStationにはそういうモノが感じられるし、Torneなんかはすごくいいプロダクトだしフィロソフィーがあると思うのですが、そこから先がどうしても広がらない。

小板:テクノロジーの進化が止まるとさ、“電話だけができればいいって”ボロボロの端末をいつまでも使ってる人が結構いると思うんだけど、そういった状況が広がっていくんじゃないかな。

日高:既にパソコンがそうなりつつありますよね。

北島:やっぱりアップルに対抗しうるブランドとして、もう一度ソニーの復権を期待したいです。

■ジョブズがいないアップルはどうなる?

小板:そのアップルだ。今年は「iPhone 5」が今年出てくるって話もあったけど、結局iPhone 4のマイナーチェンジ版だった。それにしてもiPhone4/4Sの画面は4インチクラスのAndroid端末ユーザーからすると、非常に小さく見える。あんなちっちゃい画面でいいの?

椿山:わりと平気ですが…。

日高:いっぺん4型ディスプレイに慣れちゃうと、ある日ふとiPhoneの画面をみると、すごく小さく見えてしまうんですよね。

小板:アップルは持ち具合とか気にするから、簡単には大型化はしないんだろうな。

日高:アップルは、やる時はいっぺんにやり直しますよね。“知るか!”と、これまでのユーザーをばっさり切ってきたんです。

小板:それはあるよね。

椿山:それはよくも悪くも、ジョブズがいたから決断できたことだと思うけど、ジョブズ亡き後、それができるんだろうか?

日高:互換性とか気にして、マイクロソフト化していくのかな〜。

北島:まあ、2011年はMac OSのLionやiOS5を出すなどソフトウェアの開発に注力した年だったので、2012年はハードウェアを刷新するタイミングかな。iPhone 5にiPad 3、それにOne More Thingがあるか…。

■総括……WindowsPhoneに期待

椿山:スマートフォン中心の話になりましたが、スマートフォンユーザーってまだ少数派?

日高:おそらく2011年の出荷台数でみれば半分位になるのかな、年末商戦だけをみると7割を超えてるんじゃないかな? 保有台数という部分でみればまだまだフィーチャーフォンも多いですが。

北島:国内端末メーカーのスマートフォンも続々と登場してきますが、来年はどんな年になるんでしょうか?

日高:国内の各端末メーカーが“もう一度海外に打って出ます”って言ってますので、がんばってほしいという気持ちがありますよね。逆に、海外で成功しないと日本市場も苦しくなってくるんじゃないかな?

北島:スマートフォンのOSって、アップル以外の選択肢はほぼAndroidしかないので、ユーザーにとっても市場的にも今の状況はあまり健全でないですよね?

日高:Androidは、どの端末メーカーが使っても同じ品質のものができるってレベルのOSではないんですよね。現にメーカーによって製品の出来に大きな差が出てしまっている。

北島:PCの世界ではマイクロソフトがOSのパワーでメーカー間の製品レベルを均質化しましたからね。

日高:そう考えるとマイクロソフトの WindowsPhoneに期待したくはなりますよね。Windows 8も来年登場しますし。

小板:2012年はマイクロソフトがモバイルでは第三極になるかもしれないね。

北島:まずはマイクロソフトにとって最後の出展となる年初のCESに注目ですね。本日はありがとうございました。

※この座談会は、2011年12月21日に実施した。

《構成 椿山和雄》

【座談会】どうなる?2012年のスマートフォン……ジョブズなき後のアップルと復権を期すWindows

《編集部@RBB TODAY》

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