【池原照雄の単眼複眼】2012年の国内新車市場は500万台前後に

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◆補助金が効いた2010年と同レベル?

2012年は、国内新車市場の動向がいつになく注目される。エコカー補助金の復活やエコカー減税の延長により、「日本経済の回復に向けた内需喚起」(志賀俊之日本自動車工業会会長)が自動車産業の担務ともなっているからだ。自動車各社にとっても、収益が為替変動に左右されない内需の拡大は、超円高のダメージ軽減につながる。

11年の需要推移をベースにしながら、今年の新車市場を想定してみた。結果は11年の421万台を17%上回る492万台という数字になった。秋口までに前回のエコカー補助金やエコカー減税が大いに寄与した10年の496万台と同等のレベルだ。

昨11年の新車市場は、3つのフェーズに分かれた。(1)前回のエコカー補助金終了の反動が尾を引いていた1~2月=前年比の減少率は10%台、(2)東日本大震災による供給減と消費マインドの冷え込みで大幅に落ち込んだ3~8月=同減少率は約30%、(3)供給力が回復し、前回補助金終了の反動減も埋め合わせた9~12月=同伸び率は約20%---といった展開だった。

◆駆け込み需要によっては500万台乗せも

これら3フェーズの11年の販売台数に、それぞれの伸び率を乗じて年間の需要を想定した。1~2月は前年の反動減からの増加に今回の補助金効果を勘案して20%の伸び率、3~8月は大震災による落ち込みからの回復や補助金効果で30%の伸び率とした。

さらに、供給力の回復などで前年が高水準にあった9~12月は横ばいを見込んだ。こうして各フェーズの想定値を合算したのが492万台であり、11年実績を71万台上回る数字になった。

今回の補助金の総予算は3000億円と、前回の5937億円のほぼ半額。反面、支給額(一律)は登録乗用車で10万円、軽乗用車で7万円と、登録乗用車では最大25万円だった前回を下回り、広く薄い支給となる。

予算を消化した時点で打ち切りとなるのは前回と同じであり、政府は13年1月末までを想定しているものの、それ以前に打ち切りとなる公算が強い。仮に今回の補助金による駆け込み需要が、この秋ごろに顕在化すれば市場は盛り上がり、08年(508万台)以来となる500万台突破の可能性も出てこよう。

◆魅力的な新モデルも市場活性化に貢献

一方、今年は震災からの「復興需要」が日本の景気回復を後押しすると期待されているものの、こと自動車についてはトラックを除き、多くは望めない。乗用車は生活に欠かせない移動手段であり、被災地では昨年のうちに中古車を含めて相当な需要が消化されてきたからだ。

むしろ、自動車はタイの大洪水による供給不足からの回復や、魅力的な新車の登場による「受注残需要」が年初から春にかけ、市場の活性化に貢献しよう。新モデルでは『ミライース』、『アルトエコ』といった既存技術で大幅に燃費性能を高めたモデルや、ハイブリッド車(HV)の『アクア』などが、高水準の受注を抱えている。

円高への抵抗力を高めるうえでは、為替変動に左右されない円建ての売り上げを増やすことが有効だ。円ビジネスの国内需要の拡大は、その柱となる。仮に筆者の想定のように11年を70万台規模上回る市場となれば、台当たり180万円の売り上げとして、自動車業界(輸入車含む)全体では1兆2600億円の増収効果となる。

《池原照雄》

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