【ホンダ NC700X 発表】日常におけるバイクの楽しさを徹底追及…本田技術研究所 宮崎英敏主任研究員

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ホンダ NC700X
ホンダ NC700X 全 6 枚 拡大写真

良い商品を早く、安く、低炭素で実現する…ホンダの「2020年ビジョン」を基本思想として開発されたニューミッドシリーズ。

その中で最初に全貌を明らかにした『NC700X』に投入された具体的な技術や性能、その根底にある想いを、シリーズの副LPLで完成車テストのまとめ役を務めた宮崎英敏氏に聞いた。(インタビュー前編)

---:エンジンの出来が予想以上に良いようですが、ポイントになるのは270度位相クランクと、1番と2番シリンダーで5度ずらした吸気バルブタイミングですね。

宮崎氏(以下敬称略):従来の直列2気筒エンジンですとクランク位相は180度か360度でしたが、どちらかというと180度は高回転ピリピリ型で低中速トルクが薄い。360度は適度にパルス感はありますが、カップリング振動が出る。そういう観点から270度クランクを採用しています。270度クランクにバランサーを1本付けるだけで、常用回転域はスッキリしている状態にしつつ、5000rpmあたりから徐々に、そしてとてもリニアに増えてくる振動を“乗り味”につなげています。

宮崎:加えて、お求めやすい価格にまとめるための徹底的な機能集約の面でメリットがあります。スロットルボディは1個、エキゾーストも1本で十分としましたが、これらの機能を活かすためは270度クランクが必然でした(180度では成立しない)。このように、総合的な観点から270度クランクを採用したのです。

---:5度ずらした吸気バルブタイミングも必然だった部分があるのですか。

宮崎:当然、1番シリンダーが最初に空気を吸って仕事をし、そこから270度遅れて2番シリンダーが空気を吸いますが、どちらかと言うと、1番シリンダーがいっぱい空気を吸って、2番シリンダーはやや弱くなる傾向にあります。このアンバランスさが生む燃焼感や鼓動感も270度クランクの魅力にもなってきますが、バルブタイミングを5度ずらすことで両気筒のバランスをうまく取ってやり、最適な乗り味に設定しました。

宮崎:どうしても2番シリンダーの吸気が弱くなる傾向にあるので、アイドリングが安定しづらい、燃費の面で不利になりがち、といった機能的な弊害もあり、その部分もうまくバランスさせています。結果的に、乗り味とかフィーリングといった魅力につながる部分と、いま申し上げたような機能的な部分と、2つの要素を上手くバランスさせたつもりです。

---:それは、当初から狙っていた機能なのでしょうか。 また、これまでにも同じような目的でバルブタイミングを変えたことはありますか。

宮崎:私は入社以来、『V twinマグナ』や初代『スティード』、『パンヨーロピアン』、『ゴールドウィング』などのクルーザー系を手掛けて来ましたので、低回転で力を出して鼓動を楽しむというエンジンの味の出し方を、色々な形で勉強させてもらっています。したがって、このような考え方を今回のニューミッドシリーズの中にも“ぜひ織り込みたい”と思っていました。“狙ったのか?”と聞かれればその通りです(笑)。

宮崎:やはり、ゆっくり走って楽しいというのは街中などでは大きな要素であり、機能的にも必要だったという事実もありますので、それらがうまくバランスした結果というわけです。また、単にバルブタイミングをずらすという点では、空冷の『CB1100F』でも採用しています。これは、スムーズに回る直4エンジンに、ドロドロした回転フィーリングを出すためのフィーチャーでした。他にも、あえてバランスを崩すような手法は過去にも行なっています。

---:吸排気系が1つに集約されている点も、今回のバルブタイミングの設定に影響していませんか。

宮崎:エアクリーナーボックスやスロットルボディを別個に用意し.完全に吸気系を独立させれば各気筒はちゃんと仕事をします。また、ひとつのエアクリーナーボックスの中にセパレート板等を入れて、味付けの演出をする場合もあります。しかし、今回はあえて吸排気系を集合させたことによって生まれる魅力、また不等間隔爆発の魅力を最大限に表現したかったのです。したがってF.I.の燃料マップにも、1番シリンダーに仕事させるような燃料の与え方、2番側はそれをフォローするような与え方と、おのおの違うデータを入れています。

---:こういった手法は、これまでもある程度ポピュラーな存在だったのですね。

宮崎:排ガスと燃費を考えた上で目標とする空燃比があり、どの回転域でもその空燃比を実現するための燃料噴射を行なうのが基本ですから、一般的にも(複数シリンダー間の)アンバランスはあります。また、加速時にはスロットル開度やスピードに合わせて多めに燃料を吹く“負荷噴射”を取り入れている場合も多いのですが、その際の燃料の与え方とかタイミング、そういうものをフォローするような手法はこれまでも行なっています。

《関谷守正》

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