【プリウスPHV 3か月検証】EV走行比率は32%! 3か月間で約5300円の電気代

エコカー EV
EVモード、HVモードの走行比率(2012年5月27日時点)
EVモード、HVモードの走行比率(2012年5月27日時点) 全 12 枚 拡大写真

トヨタ自動車が2012年発売した次世代エコカー『プリウスPHV』。外部電源からの充電が可能な大型バッテリーを搭載し、短距離(JC08モード走行時24.4~26.4km)ならEVとして走行できる、いわゆるプラグインハイブリッドカーである。

●史上空前の燃費性能は本物か

ハイブリッド走行時のJC08モード燃費自体、リッター30.8~31.6kmと、原型であるノーマルハイブリッドカーの『プリウス』を上回る。さらにEV走行をゼロエミッションとして計算したプラグインハイブリッド燃費はリッター57.2~61.0kmと、エンジンを使用する市販車としては衝撃的な好燃費をうたっている。

そのプリウスPHV、本当にその謳い文句に相応しい燃費は出るのか。また走行にまつわるエネルギーコストはどのくらいのものなのか。2月16日にプリウスPHVが納車となり、5月27日までの3か月10日間でハイブリッドモードで2543km、EVモードで1213km、EV走行比率32%でトータル3756kmを走ったレスポンスの三浦和也編集長をモデルケースに計算してみた。

●総走行距離から算出するとリッター32.1kmだが…数値を紐解く

まずは燃費から。消費したガソリンは累計で117リットル。走行距離をガソリン消費量で割った燃費はリッター32.1kmとなる。が、これはガソリンを基本的に使わないEVモードでの走行が含まれた数値。ハイブリッドモード走行の2543kmに限定すれば、リッター21.73kmとなる。ちなみにEVモード走行時も寒い春先には暖房の熱源を取るためにエンジンを回すことがある。そのような場合はHVモード側の走行距離にカウントされる。

多数のユーザーがデータ報告を行う燃費集計サイト「e燃費」を見ると、ノーマルプリウスの平均燃費は5月28日までの過去60日平均でリッター21.74km。数百人のプリウスユーザーによる実用燃費の平均と、三浦たったひとりのプリウスPHVの平均がほぼおなじになった。期間中のレギュラーガソリンの平均単価をリッター150円とすると、燃料代は合計で1万7750円だ。

●1kWh走行距離は5.51km

一方、EVモードでの走行距離は1213km。三浦が言うには、「3月に東京と愛知の往復700km、5月に東京、信越、北陸を周遊して1000km少々と、2回のロングドライブをこなした。その間は大半がハイブリッドモードでの走行。このぶんを差し引くと、半分以上EVモードで走っていることになる。予想以上にEV走行比率は高いと思う」。

そのEVモード走行時に消費した電力量は187kWh。これはバッテリーに蓄えた電力の差分に相当するもので、走行時に得られた回生エネルギーが含まれていない純粋な消費量だ。ただし、これにはバッテリーへの充電時、交流から直流に整流するのにともなうエネルギーロス分が含まれていない。ロスはトヨタ自動車の開発者である金子氏によると10~15%とのこと。厳しめに見てロスが15%あったと仮定すると、充電に要した電力は累計220kWh、家側から見た電気1kWhあたりの走行距離は5.51kmとなる。

●PHV電気代は月1608円

この数値をもとに、プラグインハイブリッドにまつわる最大関心事のひとつ、電気代を計算してみよう。三浦の場合、自宅にソーラーパネルなどを装備しておらず、東京電力との電力契約も使用量が増えるに従って高くなる従量電灯。屋内で使う電力のぶんだけで最も高い第3段階料金に達しているため、それに上乗せしてEVを充電する場合の電気代は必然的に1kWhあたり24.13円が適用される。この場合、220kWhのトータルコストは5308円となる。月に均すと1608円だ。

見方を少し変えて、ガソリン1リットル150円と同じコストでどれくらい走れるかを計算してみると、EVモードでは知っている限りは34.1kmという数字が出てくる。ハイブリッドモードの21.73kmに比べて、同じ料金で1.5倍走行可能ということになる。

ちなみに三浦の場合、e燃費ユーザー平均リッター10.06kmのメルセデスベンツ C200 コンプレッサー ステーションワゴン(ハイオク仕様)からの乗り換えなので、ハイオクガソリン価格を10円増しの160円と仮定して計算すると、150円あたり9.9kmしか走らなかったことになる。三浦家の奥さまは、当初ベンツからトヨタへの乗換えがやや不満顔だったが、同じコストで3.4倍も走ることができる燃費性能に「経済的なのがいちばん。それにガソリンスタンドにも行かなくて済むし、音も静かで振動もない。もうガソリン車には戻れないわ」と大満足だ。

EVモードに限って言えば、夜間蓄熱式機器を利用していたり、一人暮らしや共働きで、昼間にあまり電気を使わないライフスタイルを送っていたりする場合は、夜間の電力が安くなる契約が魅力的だ。もっぱら夜間に充電すると、おトク度はぐっと高まるり1kWhあたりの価格は9.17円(東電の場合)で、220kWhぶんの電気代は一気に2017円にまで下がる。同じく月に均すと611円となる。またガソリン1リットル150円と同コストで走れる距離は、実に90.42km。もはや燃費を気にしないでいいレベルに達する。

●PHVの性能を最大限享受できる生活スタイルが見えてきた

余談だが三浦の場合、写真にあるように、ハイブリッド・EV合算燃費が月ごとに大きく変動した。圧巻なのは長距離走行が少なく、大半をEVモードで走り切った4月で、月間燃費はリッター63km。使用パターンによってはJC08燃費のリッター61kmを超えることも十分可能であることがわかる。

最後に、トータルの走行コストを買い替え前のベンツCクラスと比較してみよう。e燃費データのリッター10.6kmで計算すると、ガソリン354.3リットルを消費する。ハイオクなのでリッター160円で計算すると、期間中の燃料代は合計で5万6694円。三浦が現実にプリウスPHVを(従量電灯契約で)使った結果はガソリン代と電気代の合計エネルギーコスト2万3058円となり、3万3636円近く浮いた計算になった。

月に均すと1万円以上エネルギーコストの節約が実現した三浦家。「金額以上に心理的な開放感がクルマそのものや運転を楽しいと感じるようになった」というのが本人の談である。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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