「内面を描く作品が多すぎる」…『コクリコ坂から』宮崎吾朗監督インタビュー

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■ 宮崎駿監督は、「脚本は変えるためにあるんだ。」と

―― AA
脚本は絵コンテにする段階で大きく変わると思いますが、脚本を書かれた駿監督はそれについてはどうでしたか?

―― 宮崎
脚本は変えていいと言われました。
「脚本は変えるためにあるんだ。これはあくまでもベースだから、いじってもいい」と言われました。
ただ、それがまた自分にとっては結構、難問でした。
宮崎駿が持っているイメージと自分が思っているイメージにギャップがあるわけです。どっちに合わせるべきかなと。

「ゲド戦記」の時のほうがやりやすかったです。宮崎駿という見えない存在があるんです。
しょっちゅう覗きに来ているので、見えてはいるのですけれどね。(笑)
存在を意識するじゃないですか。なかなか自分のものになっていかないという感じはありますよね。それは、たぶん一緒にやっている人たちも、最初はそうだったんじゃないかと思います。

■ 作品はリアルなのか?フィクションなのか?

―― AA
監督の世代からいえば、60年代は記憶としては引きずっているけれど、リアルには知らないわけです。
例えば横浜・山手の景色がとてもきれいなのですが、本当にあんなにきれいだったのかな?と思いました。あれはリアルなのですか、それともフィクションなのでしょうか?

―― 宮崎
それはリアルではないですよ。
60年代の山手と言えば、日本人より外国人が多いぐらいです。そこにある学校はたいがいインターナショナルスクールです。下宿屋をやっている女の子の通っている高校のありそうな場所ではありません。それをそのまま描くと普通の女の子の話にはならない。

それこそ宮崎駿の最初の話では、コクリコ荘の前には松林があって、麦畑があって、目の前は砂利道です。そんな場所は山手にはありません。
そうすると、そこにあったものをリアルに再現して行くのに重きを置くのか、そうはいっているけれど創作としてやるのか、どっちに行っていいのか分からなくなります。
いまになって思えば、映画は、ありそうな話に見えたとしても、それは作られた話です。だから生真面目に本当はこうだったとすることにはあまり意味がないわけです。

―― AA
ドキュメンタリーではないというわけですね。

―― 宮崎
そういうわけです。最近はそう思っています。

―― AA
前作の「ゲド戦記」は人間の内面を描く話でした。今回はテーマとして根底にシリアスなものが流れているのですが、全体は明るい感じです。これはどういった違いがあるのですか。

―― 宮崎
与えられた題材がそうだったからという言い方も出来ます。
けれど、内面を描く作品が多過ぎるというのもあります。要するに「自分って何って?」問いかけるものが多いわけです。そういう方法論はあるけれど、そうじゃないやりかたがないか、そうじゃないものが観てみたいというのがあったと思います。

「コクリコ坂から」の参考に当時の日活映画なんかみてみました。すると登場する人物は明るく元気に見えても、実は何かを抱えていたりするわけです。でも、それをことさら描くのでなく、外から見た人間を描くことで、それを滲み出させています。
だから、あからさまに内面を掘り下げますというのはやりたくなかったのです。外見のあり様からそれを感じさせる。そういう方法は、何なのかという考えです。

―― AA
そうした方法は今後も引き継ぎますか。

―― 宮崎
少なくとも今回「コクリコ坂から」をやって、こうすればいいと分かったことを次はもう少し掘り下げてやってみたいと思っています。

―― AA
本日はどうもありがとうございました。

『コクリコ坂から』DVD/ブルーレイディスク
6月20日(水)『コクリコ坂から』発売

■ 横浜特別版 ※宮崎吾朗監督による描き下ろしキーアートを使用
DVD 価格:5250円(税込)
ブルーレイ 価格:7350円(税込) 
■ 通常版
DVD 価格:4935円(税込)
ブルーレイ 価格:7140円(税込)

発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

いま語る「コクリコ坂から」 宮崎吾朗監督インタビュー PART2

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