アウディジャパンは『Q7』『Q5』に続く第三のSUVモデルとして『Q3』を投入した。Q5などが成功を収めたのと同様、コンパクトSUVのクラスで存在感を示すモデルになりそうだ。
外観デザインはひと目でアウディのQシリーズと分かるもの。遠くから見るとQ3だかQ5だか分からないような感じもあるが、アウディのSUVであることはすぐに分かる。最近はQ3のようなクーペ風のルーフラインを持つSUVが増えている。
Q3はコンパクトといっても全長が短いだけ。それ以外はけっこう大きなクルマだ。抑えた全高といっても1600mmに達する高さはタワーパーキングには入らないサイズだし、1830mmの全幅はコンパクトとは言い難い。最小回転半径も5.7mと大きめだ。
Q3の運転席に乗り込むと、ほかのアウディのセダンやクーペほどのタイト感は感じられない。でもドライバーオリエンテッドのデザインとともに質感の高さがアウディらしさを表現している。
搭載エンジンは直列4気筒2.0リットルのTFSI(直噴ターボ)。試乗したのは211ps/300Nm仕様のモデルで、この秋には同じエンジンを170ps/280Nm仕様にデチューンしたモデルが追加される予定だ。
この2.0TFSIはすでに様々な車種に搭載され定評を得ているエンジンだ。最大トルクをわずか1800回転で発生するので、走り出せばすぐに最大トルクが得られる。低速域から十分に力強いエンジンである。
試乗したQ3の車両重量は1610kgで、SUVとしては案外軽い。なので、211ps(155kW)を発生する直噴ターボ仕様のエンジンによって、ボディの重さを感じさせることなく、軽快感のある走りを実現する。
7速のSトロニックの変速フィールは滑らかそのもの。マニュアル車並みの効率を2ペダルで味わえる。
フラット感のある乗り心地は乗用車に近い。装着タイヤはピレリのスコーピオンヴェルデで235/50R18サイズ。SUV用タイヤながら、オンロードでの走りにも配慮していて、山道ではロールを抑えた安定感のある走りを実現し、高速走行でも十分な操縦安定性を示した。
SAVを名乗るBMWのX1やX3などはQ3以上に乗用車感覚の走りを実現するが、Q3も相当にスポーティかつ乗用車的なモデルであり、操縦安定性は平均的なSUVとは異なるレベルにある。
本体価格は479万円で、試乗車はこれにレザーパッケージやコンビニエンスパッケージ、BOSEサラウンド・サウンドシステムなどが装備され547万5000円の仕様になっていた。ライバル車であるBMW『X1』と競合する戦略的な価格が設定されているので、どんな売れ行きを示すか興味深い。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。