【マップルナビS インプレ前編】地図のプロがつくったiPhoneアプリ、観光地巡りに最適化

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【マップルナビS インプレ前編】地図のプロがつくったiPhoneアプリ、観光地巡りに最適化
【マップルナビS インプレ前編】地図のプロがつくったiPhoneアプリ、観光地巡りに最適化 全 24 枚 拡大写真

キャンバスマップルよりiPhone向けのカーナビアプリ「マップルナビS」がリリースされた。「マップルって、あのマップルのこと?」そう、そのとおり。紙媒体のロードマップとして絶対的な人気を獲得しているあのマップルの名を冠したカーナビアプリなのだ。これは注目しない訳にはいかないだろう。

◆toB向けカーナビソフトウエアベンダーが初めてコンシューマ製品をリリース

ロードマップのマップルはいうまでもなく昭文社の発行だが、マップルナビSをリリースしたのはその子会社であるキャンバスマップルという2006年設立の新しい会社。その事業内容は昭文社が保有するデータ、コンテンツ、つまりマップルのデータだが、これを利用してナビゲーションシステムを構築し、カーナビを製造するハードウエアメーカーに提供している。つまり、カーナビソフト開発のプロだ。

有名なところではユピテルのレーダー一体型ナビ「イエラ」をはじめとするPNDに「マップルナビ」としてソフトウエアを提供しているが、同社Webサイトを見ると主要取引先にはトライウイン、パナソニック、三洋電機コンシューマエレクトロニクス、クラリオン、といった名前も並んでいる。

このようにハードウエアメーカーを相手に事業を展開していた同社が、初めてのコンシューマ向け製品として開発、発売したのがマップルナビSだ。対応モデルはiPhone 4/4S/3GSで、iPod TouchやiPadは対象外となる。価格は1400円だが、7月31日までは半額キャンペーンにより700円で購入できる。購入するとアプリ本体だけでなく地図データもすべてiPhoneにダウンロードされ、通信環境がなくても利用可能だ。

販売方式はカーナビアプリに多い一定期間の利用料ではなく、アプリとデータの買い切り。利用期限などは設けられていない。地図データは年2回の更新が約束されており、しかも2014年春版までは更新料が無料となっている。つまり約2年間は地図更新含めて最初に払う700円のみで使える。これは安い。本格的なカーナビアプリとしては常識破りの安さといっていいだろう。

◆目的地検索はガイドブックアプリと連携、フリーワード検索も強力

新しいアプリなのでとにかく使って見ることにした。起動して「MENU」ボタンをタップ。まず目的地検索を試してみる。検索方法は「フリーワード」、「周辺」、「ジャンル」、「住所」、「電話番号」そして「まっぷるコード」がある。まっぷるコードが使えるのは紙媒体のマップルをすでに使っている人には便利そうだ。

住所は3,600万件、電話番号は710万件、ジャンル検索は220万件が収録されており、最近のナビとしては一般的といっていいだろう。住所の入力方法やジャンル検索のジャンル分けも特にかわったところはなく、至って普通といえる。ただ、フリーワード検索は少し特徴的なので、ここではこれを使ってみる。

フリーワード検索はその名の通りの機能だが、キーワードの他にジャンルを選択できたり、検索後に「推奨」、「名称」、「距離」で並べ替えができる。一見するとシンプルなのだが、ツボを押さえたインターフェースだ。キーワードを追加して絞り込み検索ができるのも便利。

面白いのは、このフリー検索でジャンルの検索ができること。カーナビを使ったことがある人なら、誰でもジャンル検索で目的のお店のジャンルが見つからず、イライラした経験があるだろう。例えばカー用品のお店を探したいとき、ジャンル検索ではなかなか見つからない。こんな時にフリー検索で「カー用品」と入力し、その下のメニューをジャンルにして検索すると、検索結果は「アップガレージ、イエローハット、オートバックス、ジェームス……」となる。いずれかをタップすれば、そのチェーン店の最寄りの店を検索できる。

◆見やすい地図によるガイド、信号が必ず記載された見やすい地図

目的地が決まったらつぎはルート検索。デフォルトでは「おすすめ」という設定になっていて、これは「距離優先」、「高速回避」、「高速優先」に変更することもできる。ルートが決まったらガイド開始だ。

本アプリは縦位置でも横位置でも使えるようにデザインされているが、どちらかというと縦位置で使うことを前提にしているように見える。したがって縦位置で使い心地をチェックした。機能としては、音声案内はもちろん、交差点拡大図、ジャンクションやインターチェンジのイラスト、レーン案内など一般的な機能は全て揃っている。

ガイドは総じて適切で、無難なものだった。こうしたカーナビアプリでは、いや、アプリにかぎらず低価格なPNDにもその傾向があるが、やはりクセのあるガイドをするものが多い。要は慣れの問題だが、クセのあるガイドに人間のほうが合わせなければならないのだ。しかし、このマップルナビSはそういったことがなく、初めてでもすんなりと使える素直さがある。

マップルで培ったノウハウを駆使した見やすい地図、というのも本アプリのセールスポイントの一つになっている。また、iPhoneのディスプレイでも見やすいように「もっとでっか字」という機能が搭載されており、地図に表示される文字を巨大化させることができる。これは他のナビでは例のない機能といっていいだろう。実際、その効果は十分に感じられた。

地図の見やすさについては、さすがに短時間の使用で「びっくりするほど見やすい」という実感はないが、コンビニやガソリンスタンドなどのマークがどの縮尺でもじゃまにならないなど、表示される要素のバランスの良さが感じられる。住所ごとの色の塗り分けなど、注意してみれば確かに凝った作りこみがなされていて、長く使えばじわじわと良さを実感できる地図なのかもしれない。

もう一つ特筆しておきたいのは、このアプリは動作が非常に軽快だということ。とくにルートを外れたときのリルートはずば抜けて速く、間違った道に入ってしまった時には非常にありがたく感じる。また、地図のスクロールも非常に快適だ。通信を行わない完全にスタンドアロンのアプリなので、必要に応じて地図をダウンロードするタイプのアプリより速いのは当然ともいえるが、リルートの速さはルート検索アルゴリズムやルートを外れたかどうかの判定が大きく関係する。このあたりのチューニングがうまくできており、さすがにカーナビを作り慣れていると感じさせる。

◆ガイドブックアプリから目的地を設定、観光地巡りには最適な機能だ

本アプリは外部のガイドブックアプリと連携して目的地を設定することができる。現在のところ「ことりっぷ」と「まっぷるマガジン」に対応しており、それぞれのガイドブックアプリで見つけたスポットを直接マップルナビSの目的地として設定できる。マップルナビSからガイドブックアプリを開くとこともできるし、先にガイドブックアプリを開いていて、マップルナビSを起動させることも可能だ。

本アプリからガイドブックアプリを起動するにはメイン画面の「BOOK」をタップして、アプリを選ぶ。ただし、本アプリから起動しても、iPhoneのホーム画面から起動しても、その後の操作は全く同じ。単にホーム画面に戻る手間をなくすショートカットと考えていいだろう。

ガイドブックアプリが起動したら、行きたいところを見つけて、その場所をロングタップ。するとメニューが表示されるので「転送」→「マップルナビ」とタップしていく。するとマップルナビに画面が切り替わり、その場所の地図が表示される。目的地として設定するか、地点登録、あるいはその場所を中心にして周辺検索が可能だ。

この機能は観光地巡りをするDriveでは非常に便利。幾つものスポットを回りたいとき、以前は前日までにすべてのスポットを電話番号で検索して地点登録するという手間のかかることをしたものだが、この機能があればそんなことをする必要はない。

◆コストパフォーマンスの高さは抜群、今後に期待したい部分も

使用感が非常に良いアプリで好印象なのだが、気になる部分がないわけではない。全体にシンプルにまとめようとしていて、それは総合的には非常にうまくいっているのだが、やはり部分的には足りないと感じる部分があるのだ。

まず指摘したいのは、渋滞情報を表示できないことだ。価格を考えればそこまで要求するのは酷、とほんの1年前なら考えただろうが、現在では無料で使えるiPhone標準アプリのマップですら渋滞情報がサポートされている。ライバルのナビアプリも軒並みサポートしているし、PNDもそうだ。こうなると本アプリがいかに低価格とはいえ、渋滞情報がないのはやはり物足りないと言わざるをえない。

同様に、一度ガイドを始めるとルートの条件を変えて再検索ができないとか、交差点の拡大図が小さすぎて拡大図にならないとか、あるいはパソコンで見つけたポイントをこのアプリに転送する方法がないなど、意地の悪い揚げ足を取ろうと思えば指摘したいポイントはすぐにいくつか出てくる。ただ、シンプルを信条としたアプリであるだけに、機能が少ないことが悪いこととはいえない。渋滞情報だけはちょっと、と思うが、それ以外については、このアプリはこれでいい、と言わせる説得力がある。

渋滞については、全く対策がなされていないわけではなくて、昭文社がタクシードライバーなどのプロドライバーに独自取材した渋滞回避の「ぬけみち」、つまり紙媒体のマップルに記載されているのと同じものだが、これが収録されている。渋滞情報に対応したナビでもその回避ルートの検索となるとお粗末なものが多いので、実用的にはこちらのほうが役に立つかもしれない。

《山田正昭》

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