【木暮祐一】「通話しないスマホ」という選択肢

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筆者:木暮祐一氏。武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家/博士(工学)
筆者:木暮祐一氏。武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家/博士(工学) 全 6 枚 拡大写真

■もはや「電話」は要らない?!

 東日本大震災のとき、多くの方が「いざというときにケータイは使えない」ということを実感されたのではなかろうか。筆者もあの時は筑波大学で学会に参加していて、震度6弱(つくば市)という人生史上体験したことの無い揺れに遭遇した。さらにその後10時間近くかけて帰宅できるまで、複数所持していたケータイ類のどれもが通話やメールがほぼ不通状態だった。その一方で、FacebookやTwitterなどのパケット通信経由のメッセージ機能はなんとか送受信でき、改めてインターネット経由のコミュニケーションが緊急時に有効だということを体感した。こうした震災時のコミュニケーションの経験からか、その後わが国でもFacebookなどSNSの利用者が急増、私自身も元々SNSはあまり積極的に活用してこなかったのだが、現在はコミュニケーションの重要な手段となっている。

 気がつくと、身の回りの友人知人もみんなスマホを使うようになっているし、その連絡手段といえばほとんどがメールやSNSのメッセージ機能にシフトしている。「通話」はというと、知人間ではほとんど利用していないのだ。業務上の連絡も、かなりのものがメールやSNSのメッセージ機能の利用が主体になっている。通話するシチュエーションというと、本当に緊急を要する場合の連絡や、その場で何らかの「決定」が必要な要件などだけとなっている。このような状況にあるビジネスマンは意外と多いのではないだろうか?

 筆者の場合、大学教員になってからは通話できるタイミングが、ほぼなくなってしまった。日中は土日も含め講義や講演で壇上に上がっているし、それ以外の時間といえば公共交通機関で移動しているか、会議に入っているか、あるいは電話などする余裕がないほどハードなデスクワークに忙殺されていたりする。電話に「出ない」というより「出られない」というのが本音で、親しい方ほどコミュニケーションの手段として「なるべくメールやメッセージ機能で連絡いただく」ことをお願いしている。

 このような状況のなかでふと思ったことは、「いっそ電話なんていらない」ということ。スマホはもちろん必需品だ。しかし、通話する頻度はきわめて少ないので、スマホの月額料金削減のためにも、通話しないことを前提にしたサービスを選択するのもオツなものかと考えた。

■究極のスマホを突き詰めると…

 前述の通り「電話は不要」と割り切って、データ通信用プランでスマホを利用すれば毎月の通話料金を削減することができよう。データ通信用プランにしてしまっても、Skypeなどの「通話アプリ」をインストールしておけば、いざという時に電話をかけることはできる。

 ではデータ通信専用として割り切った場合、最適な回線サービスは何が良いだろう。実はデータ通信専用プランは各キャリアのほか、各キャリアから通信網を借りて独自ブランドで回線サービスを提供する仮想キャリア(MVNOという)などから様々なものが提供されている。そして各社とも、独自性を打ち出すために使える通信の回線速度やデータ量と利用料金に工夫を凝らしている。たとえば、「通信速度は速いが料金が高い」プラン、一方で「通信速度に制約を設けている分、利用料が安い」プラン、「超高速で、利用したデータ量に段階的に通信料が設定された半従量制」プランなどなど。そうした各社のサービスの中から、端末との組み合わせも考慮しつつ、コストパフォーマンスの良いものを検討してみた結果、筆者が最も注目したのがNECビッグローブの「BIGLOBE 3G」とデータ通信専用端末「MEDIAS NEC-102」を組み合わせたサービス「MEDIAS for BIGLOBE」だ。

 この「BIGLOBE 3G」は、NTTドコモのMVNOで、FOMAエリアで利用できるデータ通信専用のSIMカードである。月額2,980円(スタンダードプラン)の定額になっている。筆者が注目したのは、利用時間帯に制限がある「デイタイムプラン」で、20時から翌2時までの夜間の利用ができない代わりに、月額1,980円で使えてしまうというもの。筆者もほぼ寝る時間を惜しんで仕事をしているが、やはり夜間のこの時間帯はゆっくり家族と夕食を食べるなどして、くつろぎたい時間帯といえる。その時間帯に通信制限があって、外界と遮断されるのは嬉しいかぎりだ。通信速度は電波の状況により低下するが、最大14Mbpsの通信速度とFOMAの広域エリアでデータ通信の利用が可能。なお、2年の契約が原則で、中途解約すると9,975円の契約解除料がかかる。

 そして「MEDIAS for BIGLOBE」は、「BIGLOBE 3G」と「MEDIAS NEC-102」をセットで購入できるBIGLOBEオリジナルのスマホで、音声通話を省き低料金を実現している。端末価格は特典価格で23,520円。一括で購入せず、アシストパックに申し込めば毎月の通信料に980円加算してお手軽に入手することも可能である。

 実は筆者は、「MEDIAS NEC-102」を見て感激してしまった。この端末にはどこにも通信キャリアロゴが入っておらず、“NEC”とロゴが刻印されているのだ。世界では当たり前のことなのだが、このようにメーカーのブランドのまま、通信キャリアを介さずに販売される端末を「メーカーブランド端末」という。同端末は、ここにBIGLOBEの独自サービスを付加した製品だ。このサービスの提供方法は、端末メーカーが違う形で市場で商品化・販売しやすい環境の復活ととらえることもでき、わが国の端末メーカー各社にとっても明るい展望と言えそうだ。

■2台持ち端末としても

 ここまで、「電話」は使わない、緊急の場合は必要に応じて「通話アプリ」などでしのげば良いユーザに注目してデータ通信専用のスマホである「MEDIAS for BIGLOBE」を利用することを説明してきた。しかし、外勤の多いビジネスマンにおいては「電話」ができないというのは考えられない人もいるだろう。そういう方は、この「MEDIAS for BIGLOBE」と通常の通話用ケータイを組み合わせて2台持ちで利用しても良いだろう。通話用ケータイは、あくまで通話用として割り切ることで、データ通信等を契約せず維持コストを最小限に抑えることができる。通話用、データ通信(メール、SNS等)用に2台に分けることで、電池消費も分散できる。「MEDIAS for BIGLOBE」と通話用のケータイとの組み合わせがやはりコストパフォーマンス的にベストだろう。

 とここまで原稿を仕上げたところで、編集長から「実際、木暮さんが「MEDIAS for BIGLOBE」と通話用のケータイの2台持ちをするとしたら、どんな組み合わせが考えられるのか」という質問がメッセージで飛んできた。

 ということで、筆者のケータイコレクション棚を眺めながら、「MEDIAS for BIGLOBE」と組み合わせるべき理想の端末に悩んでみた。そんな筆者が考えた究極の組み合わせはずばりこれだ!

(1) PHSと組み合わせれば音質も最高

通話用ケータイとしてお勧めなのは、案外PHSだったりする。PHSは一般的なケータイよりも通話音質が優れている。この音質なら、取引先等に通話しても失礼にならないだろう。ケータイコレクション棚から引っ張り出したのは、世界一小さいケータイ(PHS)とされている「ストラップホン」と「MEDIAS for BIGLOBE」。(写真参照)

(2) 地球上、どこでも通話するぞという気合のセット

究極の「通話」用端末といえば衛星電話しかない。大震災の際に、通信インフラが壊滅したエリアで衛星電話が大活躍していたが、やはり究極のビジネスマンを目指すならこんな組み合わせもありだろう。近く、NTTドコモが世界中で利用できる衛星電話「IsatPhone PRO」の販売とサービス提供を開始する予定だ(背景右から2台目)。(写真参照)

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第6回 いっそのこと「通話」しないスマホの選択もありかも

《木暮祐一@RBB TODAY》

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