【池原照雄の単眼複眼】素姓の異なるプラグイン2モデル、その成否は?

エコカー ハイブリッド
三菱 アウトランダーPHEVシステム
三菱 アウトランダーPHEVシステム 全 12 枚 拡大写真

EV派生のアウトランダーPHEV

三菱自動車工業が2013年初めに日本で発売するプラグインハイブリッド車『アウトランダーPHEV』の技術概要を発表した。今年1月にトヨタ自動車が市場投入した『プリウスPHV』が、ハイブリッド車(HV)をベースにしたプラグイン方式なのに対し、三菱は量産化で先行した電気自動車(EV)から派生させた。果たして、いわば素姓の異なる両プラグインHVの販売の行方は―。

「EVを基本にしたものであり、トヨタさんのハイブリッド特許にそれほど阻害されることなく製品化できた」。三菱の開発部門を統括する中尾龍吾取締役は、アウトランダーPHEVの開発をこう振り返った。

同車は前後輪用に2つのモーターを配した4輪駆動車で、駆動の主体はあくまでモーター。エンジンのみで駆動するのは「高速走行時の熱効率の高い領域のみ」(久米建夫開発本部副本部長)に絞った。高速走行時の追い越しなど、加速が必要な時にはモーターがエンジンをアシストする。

ミッションのないシンプル機構

エンジンの駆動力をアクスル(車軸)に伝達する際は、何らかのトランスミッション(変速機)が介在するのが一般的だが、アウトランダーPHEVの場合は特定の回転領域でしか駆動に使わないので、ミッションのないシンプルな機構となっている。

ではどのように、必要に応じて駆動力をアクスル(厳密には差動歯車と車軸が一体になった「トランスアクスル」)に伝達するのか? これも機構としてはシンプルであり、エンジンとアクスルをクラッチによってつないだり、切り離したりする。その制御は、エンジンに直結されたジェネレーター(発電機)からエンジン回転数などをモニタリングしながら行うのだという。

HVはエンジンを発電のみに使う「シリーズ式」と、駆動と発電に使う「パラレル式」があり、トヨタのHVは両方の機能を備えた「シリーズ・パラレル式」と呼ばれる。アウトランダーPHEVも同じシリーズ・パラレル式だが、エンジンの役目を見ると、圧倒的にシリーズの機能に重きが置かれている。

燃費は互角、問題は価格

駆動の基本はモーターで、というEVから出発したプラグインなのである。一方、プリウスPHVは電池容量を増やすことで通常のHVを発展させた。両者の素姓の違いが、そこにある。バッテリーは同じリチウムイオン電池だが、蓄える電力量はモーター走行中心のアウトランダーPHEVが12kWhと大容量なのに対し、プリウスPHVは4.4kWhと3分の1弱に抑えている。

その結果として、フル充電時からのEV走行可能距離(JC08モード)はプリウスPHVが26.4kmなのに対し、アウトランダーPHEVは55km以上(目標値)と長くなる。また、プラグイン向けの複合燃費は、三菱側がプリウスPHVの61km/リットルと同程度か若干上回るよう開発を進める方針としている。

燃費性能はほぼ互角だ。サイズや用途に違いがあるため、この2モデルを単純に比較しても意味はないが、市場に受け入れられるかどうかは結局、車両価格が左右することになろう。アウトランダーPHEVはバッテリーの量が多く、コストでハンディを背負う。「とんでもない価格にはしない」(中尾取締役)という価格設定が注目される。

《池原照雄》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  4. 【BYD シーライオン7 新型試乗】全幅1925mmの堂々サイズも「心配無用」、快適性はまさに至れり尽くせり…島崎七生人
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
ランキングをもっと見る