【VW パサート オールトラック 試乗】ヴァリアントとは明確に差別化された4WDモデル…松下宏

試乗記 輸入車
VW・パサートオールトラック
VW・パサートオールトラック 全 12 枚 拡大写真

『パサート』に「オールトラック」と呼ぶ4WD車が追加された。2011年5月に登場した現行パサートはセダン/ヴァリアントともFF車だけで4WDの設定がなかった。そこでヴァリアントに4WD車が追加されたのだが、単なる4WDではなく、SUV感覚を備えた4WDとしてオールトラックが登場した。

外観デザインはヴァリアントをベースにSUV感覚を備えたもの。アンダーガード付きの前後バンパーや黒い樹脂製のホイールアーチ、高めの最低地上高などが、FFのヴァリアントとは明確に異なるオールトラックであることを強調する。

インテリアはウッドパネルやアルミパネルなどが採用され、基本的な雰囲気はヴァリアントと変わらない。シートがコンフォートシートからナパレザーの本革スポーツシートになるのが相違点だ。

搭載エンジンはヴァリアントに搭載された1.4リッターのTSI(直噴ターボ)仕様ではなく、155kW/280N・mの動力性能を発生する2.0リッターのTSI仕様が6速DSGと組み合わせて搭載される。

このエンジンの吹き上がりの滑らかさとトルク感にあふれた力強さは、これまでにゴルフなどで定評を得ているところ。トランスミッションも6速DSGは湿式なので、乾式の7速よりも好ましい変速フィールを実現する。

最大トルクを発生する回転数は1700回転からで、かなり低めに設定されている。低い速度域からでもアクセルを踏み込めばそのまま力強く加速していく。この加速の気持ち良さは標準のパサートとの明確な相違点だ。

逆に燃費はリッター18.4kmを達成するヴァリアントとは比較にならないが、それでもリッター11.6kmという数値はミッドサイズワゴンの4WD車としてはまずまず良い数値である。

足回りはドイツ車らしいやや硬めでしっかりした印象を与えるものだが、乗り心地の快適性に関しても不満はなく、やや高めの最低地上高によるネガも感じられなかった。

シャシーには4MOTIONの4WDシステムに加えて電子式デフロックのXDSが採用されている。4MOTIONと協調してコーナリング中のハンドリングも制御するので、ワインディングを走らせても楽しいクルマだった。

今回の試乗はドライのオンロードだったので4WDの性能を実感することはできなかったが、ハルデックスカップリング式の4WDシステムは、電子制御によって前後の駆動力配分を変化させ、最大では後輪に100%に近いトルクを伝達する。

またラフロードやオフロードでの走行をアシストするオフロードスイッチが設けられている。これを操作すると、ABSやEDS、DSGなどがラフロード用に調整されるほか、ヒルデセントアシストが機能し、アクセルペダルの特性も変更される。いざとなればオフロードでもそれなりの実力を発揮できるのだ。

とはいえオールトラックは、オフロードを走るユーザー向けのクルマではない。積雪地のユーザーなど日常的な走行に4WDの安定性が欲しいユーザー向けのクルマと考えたら良い。

安全装備はESPやEBD付きABSなどの基本的な装備のほか、低速域での追突回避・軽減ブレーキのフロントアシストやアダプティブ・クルーズコントロール、ドライバー疲労検知システムなどの最新の仕様もいろいろと用意されている。

パサートオールトラックは単一グレードのモデルで価格は494万円の設定。パサートヴァリアントのTSIハイラインに比べるとほぼ100万円高の設定だ。搭載エンジンの違いと4WDであること、装備の違いによる価格差だが、100万円もの差があると、オールトラックに飛びつく感じではない。4WDを本当に必要とするユーザーが選ぶクルマだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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