【住友ゴム環境タイヤ技術セミナー】不可能を可能にする4D NANO DESIGN

自動車 ビジネス 企業動向
住友ゴム工業 材料開発本部 材料第三部 主査 岸本浩通氏
住友ゴム工業 材料開発本部 材料第三部 主査 岸本浩通氏 全 5 枚 拡大写真

住友ゴム工業は9月20、21日にメディアを対象とした「環境対応タイヤ技術セミナー」を神戸本社にて行った。

【画像全5枚】

セミナーでは、100%石油外天然資源タイヤの量産体制が整ったことや、従来タイヤより50%転がり抵抗低減タイヤの開発経過、同社が行う環境への取り組み最新技術の説明が行われ、昨年の東京モーターショーで発表された新材料開発技術「4D NANO DESIGN」に関しても詳しい紹介が行われた。

材料開発本部 材料第三部 主査 岸本浩通氏によると開発技術の進化と共にタイヤの性能は向上してきたとし、回転しているタイヤの動きをコンピューター上でシミュレーションするデジタル・ローリングシュミレーション(DRS)が1998年よりスタートし、現在DRS3にまでバージョンアップしていることを説明。

タイヤのシミュレーション技術であるDRSに合わせ、回転するタイヤのコンパウンドの動きを解明する材料シミュレーションの「デジコンパウンド」も登場、2011年までの開発技術の流れを説明した。

近年、タイヤ性能の多様化と高度化、開発の高速化が求められ、ナノ領域の可視化とシミュレーション領域の拡大が課題としてあがり、4D NANO DESIGNが登場する。この技術のキーテクノロジーは「世界最高レベル大型放射光施設「SPring8」とスーパーコンピューター施設「地球シミュレーター」を連携させたというところにあります。これらを活用することにより、不可能であったことを可能にすることができました」と語る岸本氏。

従来電子顕微鏡での2次元観察しかできなかったシリカの3次元解析に成功し、ゴムの特性を表現するマルチスケールシミュレーションの構築に大きく貢献したという同技術を初採用した「エナセーブPREMIUM」や「WINTER MAXX」を例に挙げ、具体的な数値と共に同技術の特徴を説明した。

そして、スーパーコンピューター「京」の活用で更なる進化をするという。「これまで開発してきましたマルチスケールシミュレーションは、個々の素材の特徴をシミュレーションし素材設計することができます。しかしながら実際のタイヤゴムは、これらの特徴が繋がりタイヤ性能を生み出しております」

「今後先進的なタイヤゴムの開発をするために、「京」の性能を活用し、タイヤゴムの不均一性や構造の偏り含めた領域全てをシミュレートし、タイヤゴム性能を予測した素材設計を行っていきたいと考えています」と新たな技術を応用し、更なるタイヤ性能の向上を図りたいとした。

「ゴムに関してはまだまだ未知の領域が沢山あります。今回の「京」もそうですが、今後更なる新技術の活用により、タイヤは常に進化していくでしょう。まだここでは言えませんが計画しています」と今後の研究開発の展望を語った岸本氏は「SPring8」を使用した材料解析の発案者だ。

「変人扱いされたこともありましたが、自分のやりたいことを実行させてくれた会社には感謝しています。今は他社さんもSPring8での実験検証を行なっていますが、自分たちが日本の技術力を向上させたり、影響させていけたら、と思うとやりがいを強く感じますね」と語った。

《山本 一雄》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. スズキが新型「軽EV」を世界初公開へ、2026年度内に量産化、軽商用EVも…ジャパンモビリティショー2025
  2. ヤマハ発動機が新型3輪オープンカー、「AIで成長する」2輪車を世界初公開! 大型EVバイクなど16モデルずらり…ジャパンモビリティショー2025
  3. ハイエースの牙城を崩すか、個性的デザインの「EVバン」が日本上陸…キア『PV5』発売は2026年春
  4. 「バンバン」が復活! スズキは二輪展示でも世界初、日本初が目白押し…ジャパンモビリティショー2025
  5. 寂しさ45%、読者の感情:レクサス『LS』生産終了…「時代の流れ」「次への期待」が交錯
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る