【VW up! 試乗】出来は良い、日本市場の受け止め方は…諸星陽一

試乗記 輸入車
VW・up!
VW・up! 全 12 枚 拡大写真

衝突防止の自動ブレーキはかなり強力な効きだった。ギリギリまでブレーキは作動せず、止まるときにはパニックブレーキ級の急制動を行う。

これを標準で装備し、149万円という価格からのスタート。戦略的価格設定とはいえ、頭が下がる思いだ。もはや衝突防止ブレーキはABSやエアバッグと同様に、必要不可欠な装備と考えていいから、これは本当にすごいことだ。

またバランサーシャフトを廃しているにも関わらず、見事に振動や騒音を消しなめらかに回る3気筒エンジンも素晴らしい出来。トルク感もしっかりあって、よく回るフィーリングにも感心させられる。

ボディ剛性は高く、大きくGのかかるコーナリングでも安定感は抜群。ステアリングに伝わるインフォメーションも正確で、車体の動きを明確につかめる。

しかし、ロボAT(普通のシングルクラッチ式MTを自動的変速化したもの)はシフトアップするたびにトルクが抜け、上半身がおじぎをするように前に動いてしまう。シフトタイミングを読み、アクセルペダルを微妙に調節すれば、これは防ぐことができるが、日本のマーケットではCVTのほうがマッチングがいいだろう。

わずか75馬力のエンジンでありながら、要求される燃料はプレミアム。リヤのサイドウインドウは、4ドアがポップアップ式、3ドアははめ殺しで開閉ができない。

本当に大切な装備はしっかりと標準で装備。省いても問題がない装備は思い切って省いたり、ギリギリの設定とする。すごくわかりやすい。クルマ好きには受け入れられるが、クールにクルマを考える人たちにどこまで受け入れられるかには疑問が残る。

たとえば、ものすごくいい音のするホームオーディオだけど、いい音を出させるにはそれなりの技術がいる。いい音がするけど、リモコンはついてない…という感じだ。

『up!』はいいクルマなのだが、けっこうクセが強い。スポーツモデルでもない、普通のコンパクトカーで、これだけクセがあっていいものか? たとえば日本の自動車メーカーが同じものを作っても高い評価を得られるのか、とも思ってしまう。

5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★

諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍。趣味は料理。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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