【福祉機器展12】移動が不自由な人に安くて使いやすいクルマを…トヨタ中川氏

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トヨタ自動車 製品企画本部 ZU 主査 中川茂氏
トヨタ自動車 製品企画本部 ZU 主査 中川茂氏 全 24 枚 拡大写真

福祉機器展示会「第39回 国際福祉機器展H.C.R.2012」に8台の福祉車両を出展したトヨタ自動車。長年にわたりトヨタのウェルキャブ(福祉車両)開発に携わってきた製品企画本部ZU主査 中川茂氏が、自動車メーカーとしてウェルキャブを開発するにあたってのポイントを語った。

◆福祉車両の開発で留意すべきポイントとは

「どの自動車メーカーも同じと思うが、福祉車両をつくるにあたり、留意すべきポイントが3つある。1つめは、手足が不自由な人が運転するクルマの場合、運転席まわりをどうするか。2つめは車いすと座席の間のスムーズな移乗を行うためにはどうすればよいか。3つめは移乗後の車いすをクルマにどう収納するか」(中川氏)

この3つめのポイントの1つの答えとなるのが、フレンドマチック取付用専用車 ウェルキャリー付きの『アクア』だ。このクルマは、下肢に障がいをもつ人でも自身で運転できる「フレンドマチック」車の一種だが、とくに負担の大きい車いすの積み降ろしを簡単におこなえるというものだ。運転席に乗り移ったあと、車いすをルーフ上に設置されたキャリーに電動で収納できる。

しかし中川氏によれば、「こういう(フレンドマチック取付用専用車 ウェルキャリー付きアクアのような)クルマは特殊な例」だという。なぜなら「自動車メーカーは多くつくって多く売るということを基本としているので、(そうした個々のカスタマイズには)なかなか着手できないところがある」からだ。

身体の状況は千差万別であるため、本来は利用者それぞれに合わせてカスタマイズすべきだが、自動車メーカーではそこまで細かく作り分けすることができない。そのため、個々の細かなカスタマイズをするために車両を改造する業者が数多くあり、自動車メーカーとの棲み分けができているという。自動車メーカーとしては、そうした改造メーカーが手を入れやすいしベース車を提供することと、また改造では手が出しづらい部位(たとえばパワステの重さなど)は予め対策をして提供する“取り付け用専用車”を提供することだという。

◆完成車両の“あと改造”から、ライン上でウェルキャブを生産

トヨタが出展したクルマのなかでは『ラクティス』のウェルキャブ(タイプI 助手席側リヤシート付)も特筆に値する。「従来の福祉車両は完成車からの“あと改造”でつくっていたが、ラクティスの車いす仕様車はラインで製造するようになったモデル」と中川氏は語る。

「初代のラクティスから通常の製造ラインでつくるようにした。これまで手で溶接するような作業がある改造では、20時間もかかる場合もあったが、ラインで製造期間を短縮することができ、販売価格もより安く設定することが可能になった」(中川氏)。当然、ラインで標準車と同じようにウェルキャブを製造できるようにするためには、設計段階で仕様を織り込まねばならない。このようなことができているのは現状ラクティスだけだが、今後は製造ラインで標準車とウェルキャブとの混流生産が可能な車種は増やしていきたいという。

◆福祉車両であっても使い勝手はスポイルしない

また、新型『ポルテ』には先代同様、助手席リフトアップシート車やサイドアクセス車が設定されている。「ポルテは左側の大きなスライドドアが特長でウェルキャブ仕様も人気だったが、従来型では(サイドアクセス車や助手席リフトアップシート車の)助手席シートに乗り込んでしまうと、後部座席へのアクセスがしにくいという指摘があった。新型では右側にヒンジ式のリアドアが追加されたことで使い勝手が大きく高まった」(中川氏)。

前出のラクティスでは、車いすを載せても後部座席に介助者が1名座れるだけのスペースが用意されており、車いすを載せない場合では収納された後部座席を引き出すことで、標準車と同様の居住空間が生まれる。

福祉車両というと、ともすれば「特別なクルマ」「使い勝手が標準車に劣る」「車内が狭くなる」というイメージを持ちがちだ。しかし中川氏はそのイメージを明確に否定する。「もしウェルキャブが必要なくなった時に、またクルマを買い替えるというのは、ユーザーにとって大きな負担になる。たとえウェルキャブであってもクルマとしての使い勝手をスポイルさせてはならない。普通のクルマと同じような使い勝手を実現することは、私たちにとって当たり前のことです」(中川氏)。

《聞き手 北島友和/大野雅人》

《レスポンス編集部》

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