コンパクトミニバン人気の火付け役となったホンダ『フリード』は、街中をチョイ乗りするのにも運転しやすく、両側スライドドアと広い室内が抜群の便利さを生み出すクルマ。
日常の買い物から週末のレジャーまで、幅広いシーンで活躍する実力派だけに、福祉車両としても魅力的だろうという予想はあった。
◆3列シートの実用性はそのままに助手席がリフトアップ
今回試乗したのは、3列シート7人乗りとなる「助手席リフトアップシート車」だ。足腰が弱くなったり不自由になった時に、低い位置でシートに座ることができ、電動で車内まで持ち上げてくれるのはとてもありがたい機能のはず。私はさっそく、助手席での乗り降りを初体験してみることにした。
ドアをいっぱいに開けて、付き添いの人がまずはリモコンで電源を入れ、下降と書いてあるボタンを押すと、助手席が適切な位置までスライドして動き、ゆっくりとドア側に回転する。
90度回ったところで、そのままボタンを押しているとゆっくりとシートが路面の方へ下がってきた。ボタンを離すとその動作も止まるので、わかりやすいし安心だ。そしていちばん低いところでシートを止め、アームレストとフットプレートを手で引き出して、座ってみる。
思ったよりも足を深く曲げて座る体勢になったけど、窮屈なほどではない。上昇ボタンを押してもらうと、とてもなめらかな動きでゆっくりと上にあがっていく。座面はほぼ水平なままで、アームレストがあるので身体はブレないし、90度の回転もゆるやかな動きなので、まったく不安はない。
◆素性の良さと親しみやすさ
身長163cmの私で、ルーフをくぐる時に頭がぶつからないようにと少し注意が必要だったけど、あとは足も身体もスムーズに引き込まれ、通常のシート位置に収まった。フットプレートを閉じて足をフロアに置くと、いつもの助手席に座る感覚。ここまでの所要時間は30秒ほどで、これなら面倒がらずに乗り降りができると感じた。
さらに車椅子をラゲッジに収納してみると、フリードはフロアが低いので持ち上げるのがラク。この動作は毎度のことになるだけに、ちょっとの差が大変さを和らげてくれそうだ。ただ、車椅子を積むとラゲッジはほぼ一杯になってしまうので、他の荷物は3列目シートに収納することになる。
とはいえ、スライドドアですぐに手が届くし、ウォークスルーで室内の移動もOKなので、使い勝手は良さそうだ。最後に運転をしてみると、少し乗り心地がソフトに感じたほかはいつものフリードと同じ。「誰でも気持ちよく乗れるHondaへ」というキーワードのように、フリードの福祉車両はとても親しみやすいクルマだった。