【インタビュー】“使いやすさ”を追求し尽くした先のエアージェスチャー…カロッツェリア 楽ナビ 開発者

自動車 テクノロジー カーナビ/カーオーディオ新製品
パイオニア カー市販事業部 マルチメディア事業企画部の 中島史晴氏
パイオニア カー市販事業部 マルチメディア事業企画部の 中島史晴氏 全 18 枚 拡大写真

新たにAV一体型ナビとポータブル型ナビの二つの形態をラインナップすることになった新型『楽ナビ』。その新たな成長ぶりは大幅なグレードアップからもうかがい知れる。その魅力と開発に至るまでの過程について、新型『楽ナビ』の開発を手掛けた2名に話を聞いた。

インタビューに答えてくれたのは、パイオニア カー市販事業部マルチメディア事業企画部に所属する中島史晴氏(ハードウェア担当)と堀之内光氏(ソフトウェア担当)のお二方だ。

◆新世代楽ナビの開発コンセプトとターゲット

----:これまで楽ナビはAV一体機を基本に、ストレージはHDDとメモリー(「楽ナビ Lite」)のラインが存在していましたが、新型では新たにポータブル型が加わる一方で、ストレージはメモリーに統一化されました。結果として通信機能を持つポータブル型ナビとして発展してきた『エアーナビ』が楽ナビに組み入れられました。

中島:これまでのエアーナビは、ポータブル型として出していたもののどちらかと言えば通信機能を強調していました。今回のポータブル型のモデルチェンジでは、「使いやすさ」を重視することで楽ナビとして生まれ変わりました。

----:新型の楽ナビには、新たに「エアージェスチャー」と呼ばれる、ナビの前で手をかざすことでメニューが呼び出せたり地図の縮尺を変えられる機能が採用されました。採用に至ったきっかけを教えてください。

中島:楽ナビは「使いやすさ」に徹底的にこだわってきたカーナビです。さらに使いやすくするために、ボタンを大きくしたり、ハードボタンを分かりやすくしたり、もうちょっと何かできないか、いろいろ試行錯誤してきました。運転の負荷をできるだけ軽減しつつ快適な操作を実現することを前提に考え抜いた結果、このエアージェスチャーが誕生しました。

◆運転負荷を最小限にするためのエアージェスチャー

----:「エアージェスチャー」の仕組みについて、教えてください。

中島:ナビ本体下に設置されているセンサーがあります。よく見ると3つ横に並んでいますが、左右から赤外線を照射し、真ん中で受光する仕組みです。なお、ポータブルタイプはドライバーからより遠い位置に設置されることが多いので、赤外線発光部をより出力の大きいものにしています。

----:利用シーンを考慮してセンサー部のハードウェアは別のものを使っているんですね。

中島:そうですね。ポータブルはオンダッシュで使うのが一般的ですから、運転席からはどうしても遠くなります。このエアージェスチャーであれば、運転姿勢のままで楽に操作できるのではないかと考えました。とにかく運転中にドライバーが操作に集中し過ぎないようにしたかったのです。これでドライバーの負荷はかなり軽減できますからね。

堀之内:『楽ナビ』のコンセプトにも絡むことですが、ユーザーが運転しながら能動的にナビに働きかける行為を減らしたかったんです。それが運転の負荷につながっているわけで、機械があたかも何をしたいのか、手を伸ばすだけで理解してくれる。そんなイメージで作り上げました。操作しようとすると、カーナビが「今したいのはこれですね?」と必要なボタンを表示してくれるんです。普段はメニューを隠しておいて地図をより広く見せ、運転に集中できるようにしました。おもてなし感というのが「エアージェスチャー」の基本的なスタンスです。決してデバイスありきで考えられたものではありません。

----:「エアージェスチャー」は右から左、あるいは左から右に手を振るだけでいいので、迷わずに使えるという長所がありますね。ですが、裏返せばできることが一つしかない、ということにもなります。複数の入力コマンドに対応させるという検討はなかったのでしょうか。

中島:複数の機能を持たせるにはジェスチャーごとに登録させないといけなくなります。するとドライバーが憶ねばならないことも増えてしまいます。操作だけでなく設定をいかに簡単にするか。これを重視すると、ジェスチャーで入力できる機能は1つに限定しました。設定画面でいろいろな機能をアサインできますし、手を振る方向は一方向のみに限定することも可能です。

----:手をかざしたときはメニューが出るだけでなく、ナビ画面時にAVソースを、AV画面時はナビ情報を別ウィンドウで表示する「チェックウィンドウ表示」機能も採用されましたね。ウィンドウ自体がスイッチになっていて、必要な情報をすぐに呼び出せるので便利でした。

堀之内:開発中には「チラ見ウィンドウ」とネーミングしていましたが(笑)、その名の通り、チラッと見て情報を得るものとしてプランニングしました。

中島:この機能は見たいときに情報を見るイメージ。運転中にAV画面を表示していて、次はどこで曲がる? そう思ったとき、手をかざせば必要な情報が現れるんです。

----:ナビ機能の方で改めて実践した部分は何がありますか?

堀之内:楽ナビとして地図のビューが増えています。従来、楽ナビLite ではノーマル、スカイビュー、ハイウェイモードの3通りでしたが、上位機にあるツインビューやAVサイドビュー、ドライバーズビューが追加されました(2DINメインユニットタイプのみ)。これは当社のメモリーナビとしては初のことです。地図の見やすさという点でも大きく改善しました。道路の色味も変え、自車マークをサイズアップするとともに、文字を見やすくしています。それとお出かけランチャー機能の搭載によって、大画面でなくても地図はより多く表示できています。普段は隠れていても、必要なときは一瞬で表示できるのがエアージャスチャーのイイところなんです。

◆自車位置は「これでいい」というレベルでは考えない

----:スマートループはどのような対応状況でしょうか。

中島:通信料金が3年分付いた別売の専用通信モジュールを利用することで、手間も費用も気にすることなく、道路状況やガソリンスタンドの最新価格など、リアルタイムコンテンツが利用可能です(※ガソリンスタンドの最新価格情報は2DINメインユニットのみ取得可能)。

----:触って実感できるのはタッチレスポンスやスクロールなど動作がとても軽快で気持ち良いことです。一体機もいいですが、とくにポータブルの方はさらに良いですね。

中島:これはチューニングのおかげでもあるのですが、ポータブルの方はCPUを変更しております。

----:スマホがどんどんCPUパワーを上げて向上している中、スマホの方がいいのではないかという意識がユーザーの中に芽生えてしまいかねません。カーナビのパワーアップはぜひ実現して欲しいですね。

中島:そこは開発陣として取り組んでいるところです。基本機能としてスペック向上は目指したいと真剣に思ってます。これだけ高性能なスマホが普及してくると、人はスマホのパフォーマンスになれてしまい、それが基準になってしまいますからね。

堀之内:ポータブル型は取り付けの問題から輸入車に取り付ける需要が多いんですが、このポータブル型は実力の高い商品としてお客様に満足していただけると思います。新たにクルマの旋回、左右への傾きをも検知する3Dハイブリッドセンサーを搭載することで、測位精度も高くなっています。

----:しかし、ポータブル型は測位精度は車速パルスが取れない分、能力的にも落ちてしまう、という印象もありますが。

中島:AV一体機と厳密に比べれば精度の違いはあります。でも、今回は新たに車速補完型3Dハイブリッドセンサーを採用したので、ポータブル型としての測位精度は大きく向上しています。具体的に言うと、螺旋状の上り下りのような動きに強くなっているんです。クルマの傾きをより正確に検出できるようになり、とくに首都高・大橋JCTのようなところで精度がアップしています。

----:ナビ専用機にとって、測位精度の追求はやはり重要なのでしょうか。

堀之内:専用機ならではの精度は出そうと考え対応しています。案内中に迷ってしまっては元も子もありませんから。それでも車速パルスが取れるAV一体機とポータブル型では精度で差が出てしまっていますから、それぞれに精度アップにつながるようなアルゴリズムも加えて対応しています。

----:それはセンサー類と言うよりもノウハウなんでしょうか?

堀之内:そうですね、ノウハウによるところがだいぶ大きいと思います。同じ部品を使えば他社でも同じような精度が出ると言うことにはなりません。精度を高めることはユーザーにとって安心につながるもの。安心するものがずれてしまうとナビではなくなってしまいます。測位精度は「これでいい」というレベルでは考えたくはありません。今後も測位精度に対する研鑽は続けたいと思っています。

◆ポータブル型でもAV一体型でも、行き着く先は「使いやすさ」

----:楽ナビということで多くのユーザーが使えるものとして仕上がったと思います。それ以外に何か特筆すべきものはなにがありますか?

堀之内:ハードウェアデザインならびにGUIは、AV一体機とポータブルで違った印象にならないよう、一体感を醸しだすと共に全体の品質向上を狙っています。

中島:ボタンを右に用意したのも大きなポイントです。国内専用モデルでもあるので、右側にあった方が使いやすいと考えました。それと吸盤も新しくなって、工具なしでも調整ができるようになっています。吸着も新規で前よりも強くなっているのはぜひ確かめて欲しいですね。

----:今回の楽ナビリニューアルでは、AV一体機もさることながらポータブルへの力の入れようも目を見張りますね。

堀之内:ポータブルとしては初の4アンテナ×4チューナーの地デジチューナーを採用しました。クレードル側に地デジの機能を持たせたため、たとえばワンセグ対応のポータブルでも、後からクレイドルを買い足すことで地デジが見られるようになります。僕たちが欲しいものをやろう、そんな思いで取り組んだナビが新型『楽ナビ』なんです。

中島:ポータブル型とAV一体型では使われるシチュエーションは違いますが、最終的に行き着くところは「使いやすさ」です。

堀之内:新搭載の「エアージェスチャー」という機能も、お客様にはなかなか聞き馴染みのないコトバです。これって何なのか、どうやって使えばいいのか、これらが上手に店頭で伝えられればすんなり浸透できると考えています。こうした使いやすさ・わかりやすさを、当たり前のものとして周知させて業界標準に育てあげていくことこそ、「楽ナビ」の使命だと思っています。

《会田肇》

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