【トヨタ安全技術12】次期クラウンに搭載見込みの駐車場内事故防止システム

自動車 テクノロジー 安全
トヨタ自動車 安全技術説明会のようす
トヨタ自動車 安全技術説明会のようす 全 7 枚 拡大写真

トヨタ自動車が11月に発表した、アクセル踏み間違いによる衝突事故の被害を軽減するという安全システム。間もなく発表される高級セダン、次期『クラウン』に搭載されるとみられるこのシステムを実装した試作車に試乗してみた。

最初に試したのは「ドライブ スタート コントロール」と名付けられた機能。バック中にうっかりポールや壁に接触してしまった際、パニックを起こしてブレーキとアクセルを踏み間違えたままATセレクタを「R(後進)」レンジから「D(ドライブ)」レンジに入れるといった、相当にカオスな状況に置かれても、急発進から衝突という事態に陥るのを防ぐという制御アルゴリズムが組み込まれた。

テストコースでまず、後進して柔らかいポールに車をぶつける。次にわざとアクセルを踏みつつセレクタをDレンジに入れる。すると、アクセルを床まで踏み込んでいるにもかかわらずエンジンの回転数は抑制され、車は前の壁に向かってノロノロとしか進まない。実際の事故でもパニックから我に返るだけの猶予は十分にありそうだった。

次に「インテリジェント クリアランス ソナー」を試した。超音波センサーで障害物の存在を監視し、自宅のガレージなどでATセレクタをうっかりRレンジに入れたまま発進し、壁に激突するといった事故を防ぐシステムだ。

試乗車は背面に壁がある駐車場を模した場所に置かれていた。運転席に乗り込んでセレクタをRレンジに入れ、そのままアクセルをぐっと踏み込む。クルマは後進しはじめるが、壁を感知して即座にブレーキがかかり、壁面から10cmくらいのところでピタリと停まった。もう一度やってもほぼ同じところで停まる。バックで駐車する時に、停止をクルマ任せにしたくなりそうなくらいの性能だ。もちろんそんなことをしてはダメだが。

これらの操作ミスは、自動車の運転のなかでも相当低レベルなもの。ここまで過保護にする必要があるのかとも思われたが、実際には駐車場からコンビニエンスストア店内への突入など、単純なミスに起因する事故は後を絶たない。クルマ側の工夫で回避できるアクシデントは可能な限り防ぐという観点から、これらの機能を実装するに至ったのだという。

現時点では、クリアランスソナーやレーダーでは、壁は認識できてもポールやフェンスなどを確実に検知するまでには至っていない。今後、そういったものもセンサーで捉えられるようになれば、立体駐車場からの転落事故なども防げるようになるだろう。次期クラウンの安全装備は、事故を起こさないクルマという大目標に向かう重要な中間道標となりそうだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. トヨタ『ハリアー』6年ぶりのフルモデルチェンジへ…注目ニュースベスト5 2025年上期
  2. トヨタ『ハリアー』6年ぶりのフルモデルチェンジへ...ワイド&ローのフォルムに注目だ!
  3. 「昭和のオート三輪風に…」ソーラーパネル搭載3輪EV『スリールオータ』に注目!「なんか可愛い」とデザインを評価する声も
  4. そのホイール、何年使ってる? 知られざるアルミホイールの寿命と見極め術~カスタムHOW TO~
  5. 「逆輸入車」がアツい!? 報道で米国トヨタ車に脚光、3列SUV『グランドハイランダー』に国内からも熱視線
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る