三菱自動車は26日、3ナンバーミニバン『デリカD:5』に、エネルギー効率の高いクリーンディーゼルモデルを追加設定した。
搭載されるエンジン「4N14」型2.2リットルDOHCターボディーゼルは、欧州で発売がされた新型『アウトランダー』に搭載されているものとほぼ同一仕様。日本の厳しい排出ガス規制に適合させるため、DPF(粒子状物質フィルター)、酸化触媒、NOx吸蔵還元触媒の3デバイスで排ガスを浄化するシステムを備えている。
最高出力は148馬力。JC08モード走行時の公称燃費は13.6km/リットル。マツダが今年リリースしたスカイアクティブ2.2ディーゼルに比べると数字的インパクトは薄いが、AWD(四輪駆動)で車重が1.8トンもあることやアイドリングストップ機能が未搭載であることを考慮すると、まあまあ健闘した数字である。
「もともとデリカはディーゼルが主流だった機種。そのデリカの後継機種として、また国内ミニバン初のクリーンディーゼル搭載車として、お客様にポジティブな印象を持っていただけるのではないかと期待してます」
三菱自動車関係者の一人はこう期待を示す。価格は出力値が近い2リットルガソリンエンジンと比べて30万円強高いが、クリーンディーゼル車に出される補助金を勘案すれば、価格差はもっと小さくなる。
現時点では未試乗だが、もともと三菱自動車はディーゼルエンジンのセットアップが上手く、ドライバビリティには期待が持てる。クリーンディーゼルの兄貴分にあたるSUV『パジェロ』ディーゼルは、ATがディーゼルエンジンの強力なアイドリング時のトルクを生かすセッティングとなっていた。
たとえば時速35kmくらいの市街地の流れに乗るさい、エンジン回転数がアイドリング付近まで落ちてもATがシフトダウンせずアイドリングトルクで巡航可能。アクセルをかなり踏み込んでもキックダウンを避け、ターボトルクで加速する。こうした特性を積極利用すれば、混雑した市街地において2.3トンの巨体を燃費11~12km/リットル台で走らせることもできるほどだった。
デリカD:5ディーゼルは6速ATとの組み合わせ。パジェロのパワートレインがトラック用のものであったのに対して、完全に乗用車専用のユニットだが、三菱自動車が培ってきたディーゼルSUVならではのセッティングのノウハウが生かされていれば、ディーゼル乗りにはとても楽しめるクルマに仕上がっている可能性が高い。
ちなみに三菱自動車は欧州市場にはディーゼルにデュアルクラッチ式メカニカルAT「ツインクラッチSST」を組み合わせたモデルも投入している。今後、別モデルでそういった選択も可能になるかもしれない。また、よりダウンサイジング志向の強いユーザーに対しては、同じく欧州で展開している1.8リットルディーゼルも訴求力がありそうだ。デリカD:5はそういった三菱自動車のクリーンディーゼルの将来戦略を占う試金石的モデルとも言える。ディーゼル車に興味のある人は、ディーラー試乗などでその資質を確認してみるといいだろう。