【三菱 アウトランダー 試乗】ワインディングも楽しく走れるSUV…松下宏

試乗記 国産車
三菱 アウトランダー
三菱 アウトランダー 全 10 枚 拡大写真

日本はともかく世界的には良く売れているのがSUVで、日本のメーカー各社も次々に新しい型SUVを投入している。そんな中でアウトランダーもフルモデルチェンジを受けた。

新型車はボディの全長がわずかに長くなったものの、1800mmに達していた全幅や全高は同じ数値にとどめられていて、日本での使い勝手に配慮した設計とされている。

基本プラットホームやパッケージングが変わらないのと同様、外観デザインも従来のイメージを継承した正常進化モデルといえる。外観だけでなく内装も含めて質感の向上が進化した点だ。

今回のモデルでは、オートストップ&ゴー(AS&G、アイドリングストップ機構)などによって燃費の向上が図られたほか、e-アシストと呼ぶ安全装備が採用された。それ以前に、大幅な軽量化もポイントとしてあげられる。

搭載エンジンは直列4気筒2.4リットルで排気量は変わらないが、ヘッド部分がDOHCからSOHCに変更された。動力性能は数値的にはほんのわずかながら下がったが、それで走りが鈍くなったかといえば、そうではなくむしろ走りは良くなった。これは車両重量がざっと100kgほど軽量化されたためで、スムーズに走り出し、滑らかに加速が伸びていく。

CVTも従来と変わらないものの、当然ながら制御などの面では進化していて、これもスムーズな走りに貢献するとともに、パドルを操作して積極的な走りを楽しむときのレスポンスなども向上している。

パワートレーンに関しては、余裕十分というほどではないが、必要十分な性能を備えているといえる。

今回のモデルからECOモードを備えるようになり、インパネのボタンを押して選択すると、ラフなアクセル操作をしてもスロットルを抑えて穏やかな走りとするなど、標準とは明確に異なる走りになる。

クルマが停止したときのAS&Gは、再始動時の振動や騒音も良く抑えられていて、まずまずの満足度。ほかの三菱車には既に採用されているが、アウトランダーでは今回のモデルが初の採用だ。

ボディの軽量化などと合わせ、燃費は旧型モデルのリッター12.4kmから14.4kmへと大幅な改良が図られた。ただ、このクラスには燃費と動力性能のバランスに優れたSKYACTIVエンジンを搭載するマツダの『CX-5』があり、さらに後から登場してきた『フォレスター』もアウトランダーの燃費を上回っているから、安閑としていられる状態ではない。

走りで好感が持てたのはS-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)の効き具合だ。三菱が昔から得意とする先進的なシャシー技術を採用したもので、AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)と合わせてワインディングでの走りがとても安定していた。

電動パワーステアリングやブレーキなどを総合的に制御することで、コーナリング時の接地性を良くして安定した姿勢と走りでワインディングを走り抜けていく。やや大柄な上にセダンに比べたら重いSUVボディなのに、箱根の山道を走らせるのが楽しいといった感じだった。

左右輪への駆動力配分はインパネ内のインジケーターに表示されるが、それがインパネ中央に配置されているため、ステアリングを切ったときにその陰に隠れてしまうのはやや難点。操舵時に効果を発揮する機能なのに、操舵中に確認するのが難しいのだ。高速レーンチェンジ程度の操舵量なら、効き具合と駆動力配分による落ち着いた挙動が確認できる。

今回のアウトランダーには、遅ればせながらe-アシストと呼ぶレーダー・クルーズ・コントロール、横滑り防止装置(ASC)、車線逸脱警報、追突軽減ブレーキなどをセットにした先進の安全装備が用意された。

ほかのメーカーではさらに進化した仕様も用意しているので、この仕様で十分というわけではないが、三菱車も追いついてきたのは確かである。

新型アウトランダーの価格はちょっと高めの印象。4WD車はベースグレードの24Gで270万円弱の設定で、安全装備やカーナビなどを装着したナビパッケージ装着車は310万円になる。2.0リットルエンジンを搭載したFF車の価格が240万円を超えていることも含め、割安といった感じではない。

現実的な選択肢は、24Gに前述のe-アシストなどを装着したセーフティパッケージ装着車で、これが280万円弱の設定。オプションはS-AWC&AYCが8万4000円なので、是非とも装着しておきたい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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