【三菱 アウトランダーPHEV 試乗】フィールはEVそのもの、上質なファミリーカーとして通用する…井元康一郎

試乗記 国産車
三菱・アウトランダー PHEV
三菱・アウトランダー PHEV 全 18 枚 拡大写真

三菱自動車が2013年1月26日に発売したプラグインハイブリッドカー『アウトランダーPHEV』。定格出力60kWの駆動用電気モーターを前後アクスルに1基ずつ配置し、総容量12kWh、推定使用領域8kWh強の大型リチウムイオンバッテリーパックに蓄えた電力で走るEVというのが基本システム。

【画像全18枚】

そこに排気量2リットルの発電・駆動用アトキンソンサイクルエンジンと発電機、クラッチを追加し、エンジンで発電してモーターを回すシリーズハイブリッド、また高速域ではエンジンパワーを直接駆動に使い、モーターがアシスト側にまわるパラレルハイブリッドとしても機能するという新開発のプラグインハイブリッドシステムだ。

そのアウトランダーPHEVに短時間ながら試乗する機会を得たので、ショートインプレッションをお送りする。

■パワートレインのフィールはEVそのもの

アウトランダーPHEVのパワートレインのフィールで特筆すべきは、ドライブシーンを問わず終始“EV然”としていることだ。バッテリーの電力だけで走る場合はもちろんエンジンは停止しており、EVそのもの。モーターは「軽自動車EV『アイミーブ』用がベース」(PHEV開発エンジニア)とのことだが、車格が上がり、遮音性が上がった効果もあってか、モーターやインバーターのノイズはきわめて低いレベルに抑えられている。

印象深かったのは、バッテリー出力だけではパワーをまかないきれない急加速時などエンジンが起動するシーンでも、EVらしさがまったく失われなかったことだ。日本の公道の速度域ではエンジンは発電に使われ、パラレルモード時以外は駆動には用いられない。

エンジンがかかっても、コンピュータ制御されたモーターのトルクに変動はなく、ドライブフィールの変化がまったくないのだ。EVと考えて乗れば当たり前のことなのだが、エンジンを搭載するハイブリッドカーという意識で乗れば、トルク変動の少なさは異次元感覚と言っていいレベルだった。

エンジンを発電のみに使うことがポジティブに感じられたもう一つの点は、ボディやステアリングコラムの振動や騒音の少なさ。ドライブシャフトとエンジンが完全に切り離され、エンジンはいわば、インシュレーター効果を持つマウントを介してエンジンベイの中に“浮いている”ような状態。それが遮音、制振にプラスに働いているものと思われた。

ちなみにバッテリーの残電力量が豊富な状態でエンジンがかかるのは、結構な急発進、急加速時くらいのものだった。アウトランダーPHEVのバッテリー出力は非公開だが、1.8トンの車重を勘案して出力60kW相当程度までの加速はエンジン停止のままでこなせそうに感じられた。開発陣に聞いたところ、60kWはニアピン賞とのことだった。

■電動4WDの安定性の高い走り、低い車体ノイズ、ただし…

アウトランダーPHEVの駆動方式は前後モーターを使って4輪を駆動する電動4WD。前後輪が機械的に接続されているわけではないので、理論的には駆動力配分を前100:後0から、前0:後100まで連続変化させることも可能。その柔軟性を生かし、駆動力制御を積極介入させて高速走行時、コーナリング時、雪道やグラベルなど低ミュー路走行時など、さまざまなシーンでの車両安定性を高めているというのが三菱自動車の売り文句だ。

今回の試乗中はその性能を本格的に体感するようなシチュエーションはなかったが、高速安定性の高さはSUVとしては相当高いレベルであった。「高速時にリアに少しだけトルクを配分してやると、前輪駆動に比べて車両安定性は格段に高まります。電動4WDは重いシャフトを回しているわけではなく、エネルギーの無駄遣いにはほとんどならないので、積極的に後輪のトルクをコントロールしています」(PHEV開発エンジニア)

乗り心地も良好だった。高速道路ではフラット感重視のチューニングが際立つ。最近はSUVにスポーツセダン的にシャープなセッティングを与えるケースが多いが、三菱自動車は路面のアンジュレーション(うねり)や凹凸、舗装の荒れなどをゆったりといなすSUVライクなチューニングを守っている。それがハンドリングのナチュラルさ、路面からの衝撃吸収の良好さなど、いろいろな部分でプラスに働いているように感じられた。

同日、アウトランダーのガソリンエンジン車にも乗る機会があったが、両モデルを乗り比べても乗り心地の質感はPHEVのほうがずっと上のように思われた。あるエンジニアによれば、ノーマルモデルは開発途中で円高対応のためにサスペンションのコストダウン要求が出て、エンジン車のみショックアブゾーバーのクオリティを落とさざるを得なかったために差が出たとのこと。

ロードノイズやメカノイズの少なさも、中型SUVとしてはかなり上位のポジションと思われた。そのなかで難点が1か所。高速走行時におけるドアミラーまわりの風切り音の処理だけはいただけなかった。絶対的な音量自体が決して小さくなく、車両全体のノイズが少ないだけに余計耳につく状態だった。この手の風切り音は小さなデフューザーを乱流制御に効く位置に設けるなどの空力処理で劇的に減ることが多いので、早急に対処するのが好ましいと思われた。

■快適で広い室内空間

アウトランダーPHEVの室内空間は、ファミリーカーとして十分以上に使えるゆったりしたものだった。大型バッテリーパックを搭載する関係上、3列目シートを装備することができなかったのは、国内市場ではややネガティブに受け取られる可能性があるが、グローバル商品としてはさしたる問題とはならないだろう。

インテリアデザインはSUVらしい外観とは裏腹に乗用車ライクにまとめられている。窓面積は広く、採光性や視界も良好。日本モデルは廉価モデル以外、濃色ガラスが装備されている。市場ニーズに合わせての対応だが、わざわざ室内を陰気にするのがもったいないようにも思われるくらい開放感のある室内だった。質感も悪くない。

補助金込みで300万円弱からという、プラグインハイブリッドSUVとしてはかなりのバーゲンプライスがつけられたアウトランダーPHEV。短時間の試乗では性能や盛り込まれた機能の1割も試すことができなかったが、第一印象としては一般ユーザーが上質なファミリーカーとして所有するに十分耐える商品力を持っているように思われた。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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