【スズキ ワゴンR 試乗】初心に帰ろう!…金子浩久

試乗記 国産車
FXリミテッド
FXリミテッド 全 4 枚 拡大写真

6代目の『ワゴンR』。初代に感激して東京から浜松までワゴンRを運転していって、開発陣にインタビューしたのはもう約20年前。

装備と装飾過多になってしまった当時の軽自動車のアンチテーゼとして生まれたワゴンRは背を高くすることによって乗り降り性を向上させ、同時に収容力を上げた。軽自動車にしては珍しく、“道具感”を表現した内外デザインは男性ユーザーに歓迎された。

新型は、テレビCMで渡辺謙が宣伝しているように3つの効率化技術によって燃費を向上させようとしている。適確なブレーキ回生と早めのアイドリングストップ、エンジンが停まってもすぐには生暖かくならない冷媒に工夫が施されたエアコン等々だ。

それらの効果はある程度の距離を走行して燃費を測定しなければならないが、回生モードとアイドリングストップの緻密な制御が実行されていることは確認できた。

走りっぷりとしては、自然吸気エンジンを搭載した「FXリミテッド」のハンドルは軽過ぎて、発信加速も過敏。その点は、ターボエンジンを搭載した「スティングレイ」はハンドルに手応えがあり、サスペンションもスタビライザーが装着されているから動きが引き締まっている。ターボエンジンも低回転域からトルクが湧き上がってくるタイプなので走りやすい。

それに対して、足回りがソフトなFXリミテッドはコーナリングのたびに背が高いボディが左右に大きく傾くことを繰り返すから、落ち着かない。軽自動車なのにコンパクトなクルマを運転している実感に欠ける。

後席空間も無駄に広過ぎる。運転席を適切なポジションに合わせて後席に座ると、ヒザの前に広大な空間が現れた。広ければいいというものではないだろう。

初代では運転席の座面を持ち上げて収納ボックスにしていたのもいつの間にか止めてしまったし、ドアも3枚から4枚に増えてしまった。3つの効率化技術も、こうして肥大したボディとメカニズムが帳消しにしてはいないだろうか?

初代のコンセプトを墨守する意義も小さくはないのだろうが、あれから軽自動車の規格も、時代も変わった。ワゴンRとはもう呼べないのかもしれないが、軽く、大き過ぎない、適切なサイズの21世紀にふさわしい革新的な軽自動車の登場を期待したい。初代アルトやワゴンRのようなセンセーションをスズキなら巻き起こせるはずだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア・居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

金子浩久|モータリングライター
1961年、東京生まれ。主な著書に、『10年10万キロストーリー 1~4』 『セナと日本人』『地球自動車旅行』『ニッポン・ミニ・ストーリー』『レクサスのジレンマ』『力説自動車』(共著)など。

《金子浩久》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. そのホイール、何年使ってる? 知られざるアルミホイールの寿命と見極め術~カスタムHOW TO~
  2. 2人乗りの特別なトヨタ『シエンタ』登場に「日本一周したい」「こういうの欲しかったんだよ」など反響
  3. ファン必見!『ミニGSX-R』は1000台注文あれば販売される!?「鈴鹿8耐」最注目の“スズキの隠し球”
  4. フォード『ブロンコ』が60周年、初代をオマージュした記念パッケージが登場
  5. ダンロップのオールシーズンタイヤが安く買えるようになる?…独占禁止法の疑い
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る