新型『クラウン』はデビュー前からその顔つきに賛否両論。
とはいえ、実車を眺めてみれば水平基調のエッジの効いたスタイリングは先代を一気に古びて見せる、レクサスを思わせる質感の持ち主だった。迫力満点の王冠をモチーフとしたフロントフェースも新時代のクラウンの象徴としてボクはすぐに受け入れることができた。どころか、けっこうカッコいいんじゃない? と思える今日この頃である。
クラウンは国内専用の純国産高級車として君臨し続けている。新型となっても車幅は日本市場を意識した1800mmをキープ。このあたりの考え方は、例えば欧州が立ち位置の『アテンザ』とは違う。
パワーユニットは2.5リットルV6を基本に、アスリート専用の3.5リットルV6、そして先代の3.5リットルV6+モーターから、燃費指向の新FR専用2.5リットル直4+モーターへとダウンサイズしたエコ指向HVの3種類を用意(HVは先代の3リットルV6オーナーに適すると説明される)。こうしたところにも時代への適合性が強調されている。
インテリアも新鮮だ。ソフトパッドやステッチの手工芸品的な質感はさらに高まり、フラット液晶の5インチ画面を持つトヨタマルチオペレーションタッチが大いなる先進感を演出。階層が深く、これまでスイッチひとつで操作できた機能が数回のタッチを必要とする場面もあるが、スマホやパソコンユーザーならすぐに慣れるかも知れない。
先進装備と言えば、駐車場でのペダルの踏み間違いなどで衝突被害軽減に寄与する「インテリジェントクリアランスソナー」は、年をめした(!?)ロイヤルカスタマーから歓迎される安心安全機能と思える。
ここでは基準車と言える2.5リットルのガソリン車に試乗した。
走り始めれば、先代比で前席ヒップポイント-20mm、重心約-10mmによる低重心感覚が印象的だ。動力性能は十分すぎるほどで、乗り味は徹底して軽やかかつ滑らかでしなやか。そして先代同様に素晴らしく静かだ。16インチタイヤを履く標準車はロールこそ適度な大きさを許すものの、決して不安な感覚ではなく安心感がある。段差やマンホール越えでのショック、音の小ささは新型クラウン最上。走行感覚は品格に満ちている。
走りのしなやかさや安定感の高さの実現は開断面化されたサスペンションのアームの採用が肝だ。ねじり剛性は落ちるものの、竹のようなたわみが出て、フラットさとザラザラした路面での乗り心地のスムーズさ、タイヤの接地性を高めているという。実際、乗り心地、快適度の進化は先代の50%増しという印象だった。
ただし、注文もある。例えば運転中、左ひじが常に当たるセンターコンソールの存在や、依然、欧州高級車に大きな差を付けられるドアの開閉感などだ。
もっとも、結論としてはクラウンらしさを色濃く継承しながらも、ロイヤルカスタマーなら思わず笑みがこぼれる新しさ、進化がある。そしてクラウンが気になる人に「いつかはクラウン…じゃなく、買うなら今でしょ!!」と言ってみたい新型でもある(来年は消費税が....)。基準車のロイヤル2.5リットルモデルでさえ、まさしく“ReBORNクラウン”だと思える。
ちなみに犬を乗せるのは後席に限られるけれど、これほど静かで乗り心地がいいのだから、犬も快適至極なドライブを味わえるに違いない。犬は夏の暑さに弱いだけに、リヤオートエアコンはぜひとも装着したいところである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
ペットフレンドリー度:★★★
青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車雑誌編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に執筆。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がける。現在、ドッグライフプロデューサーとしての活動も広げている。