マセラティ『グラントゥーリズモ』は、ロングノーズのフロントミッドシップにV型8気筒エンジンを搭載する典型的なスポーツクーペで、日本では2007年10月に発売され、2012年11月にスポーツMCシフトを追加した。
ピニンファリーナによる外観デザインを採用するのはセダンの『クワトロポルテ』と同じで、独特の存在感が漂う外観を作っている。インテリアといかにもスポーティな雰囲気にあふれていて、試乗車にふんだんに装着されたオプションのカーボンパーツは一段とスポーティな空間を演出する。
パケットタイプのスポーツシートに座り込むと、ホールド性に優れたしっかりしたシートであることが分かる。シートベルトを締めてセンターコンソールにある“1”と書かれたボタンを押す。エンジンを始動すると空吹かしが入るので、街中では思わず周囲の人が振り返るような感じになる。
試乗したスポーツMCシフトはフェラーリに由来するV型8気筒4.7リッターエンジンを搭載するとともに、シフトレバーのないセミAT(MCシフト)が組み合わされている。
セミATなので通常のATのような滑らかな変速ではないが、よりダイレクト感のあるスポーティな変速フィールが楽しめる。変速はパドルによって操作するが、パドル操作に対してダイレクトに変速する感はとても気持ちが良い。
インパネにはスポーツボタンが設けられていて、これを押すとグランツーリズモの走りが一変する。アクセルワークに対する反応が鋭くなり、高められた排気音がドライバーの気分を高ぶらせる。
338kWの最高出力を発生する回転数が7000回転という高回転型のエンジンであると同時に、回せば回しただけパワーが盛り上がるので回す意味は十分。正に官能的なエンジンである。ただ、スポーツモードを生かして走れるようなシーンは日本にはほとんどない。
20インチの偏平タイヤを履くだけに、乗り心地はかなり硬めに感じられる。でも前25/後35という超偏平タイヤであることを考えると、むしろ良好な乗り心地が確保されたという印象だ。
クーペボディながら後席には大人が乗れるだけの居住空間があり、トランクにも一定の容量があるので、正に"グランツーリズモ"としての使い方ができる。
車両本体価格は1800万円で今回の試乗車には、カーボンインテリアなど300万円相当のオプションが装着されていた。この価格帯のクルマを買える人に向けて内装関係には豊富なオプションが用意されている。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。